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とある神社で
午後九時過ぎ。
山田と戸内の姿は、市街地から離れた無人としては中規模な神社の境内にあった。しかも、身を隠すために、生い茂る木々の中に身を潜めていた。
無人とはいえ、そこは他から神主が来て神事を行うことは決まっており、今年新しく設けられた狛犬が鎮座し、茅の輪が準備されてもいた。拝殿の塗装は随分剥げてしまっていたり、古い方の狛犬の顔が雨に打たれ続けたせいか歪んでいたりしたが、むしろそのことが古から残っている神社の風格を醸し出していた。そこはご神木や木々が折られたり、傷つけられたりすることも、絵馬の字が消えていると言ったようなこともなかった。それは戸内が事前に調べておいたのだった。
「なるほど。最後の最後で、良いとこ狙ってるってわけか」
「そういうことだ。だから、必ず現れるさ。恐らく亥の刻を過ぎてからだろうがな」
「後小一時間待つのかよ」
「仕方あるまい。とはいえいつ来るか知れんのだから」
「だな」
闇が刻々と深くなっていった。