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59 最強神 天蓬元帥

【登場人物】

 中臣鎌足(カマ様)

人間に転生した天魔の神『天狐(あまつきつね)』東国の獣神であり人間体でも魔物を圧倒できる身体能力を持つ。


 額田姫王(ぬかたのひめみこ)・鏡王女

中大兄皇子の元妻であり、神の歌「言霊」を使う少女。

琵琶湖の龍王女の転生体である。


 葛城皇子(中大兄皇子)

女性と見まごう白く美しい外観に凶悪で残酷な内面を持ち合わせる。

額田姫王や倭姫王の夫であり魔族を率いる魔王でもある。


 チビコマチ(小野小町)

額田姫王に歌を学ぶため飛鳥時代に連れて来られた平安時代の少女。

巫女舞風の装束を身にまとい「言霊」を使う。


 厳 (ゴン)

春日の森で「鬼神の塚」を守る片目の野守。

なぜかチビコマチのお供をしている


 鈴鹿御前(倭姫王)

天照大神の依代であり第六天魔王の一人。

なぜか高位天魔を人間に転生させて飛鳥の都に集結させている。

ちゃっかり自分も皇女に転生した。だがまだ子供である。


 小狐丸

黒い戦闘魔獣。

魔物を斬る『神刀』を鍛える刀工でもある。


 お玉(玉藻)

百済王妃に化けた九本尻尾の妖狐の少女。

幻覚を操り、人間を魔物化させる能力を持つ。


 高志才智(こしのさいち)が空中に呪符を展開すると上空から火炎弾が発射される。

 小野篁(おのたかむら)もカード形の呪符を展開して防壁を作り、そのまま火炎の塊にして投げ返す。

 高志才智(こしのさいち)が剣で空中に文字を書くとたちまち呪符に戻りバラバラと舞い落ちた。

 壮絶な魔術戦が始まった。


 猫娘たちは金縛りを使って幻人(げんじん)たちの動きを封じて刀で切り裂く。

 まるで猫に睨まれたネズミ。猫の妙術※である。

(※小説『まんが猫の妙術』または柳生十兵衛『月の抄』を参照!)


 高志才智(こしのさいち)は地獄の井戸を開き異空間から続々と屍鬼(シキ)を召喚するが、小野篁(おのたかむら)は開けた地獄の井戸を次々と閉鎖していく。

 軍服スカート姿の猫娘たちの進軍によりジワジワと高志才智(こしのさいち)の軍勢の戦力が不足し始めた。


「まさか神仙道でこの私が追い込まれるとはな」

高志才智(こしのさいち)はフッと飛び退くと、いつの間にか唐土の黒い道服と冠の姿に変わっていた。

 手には奇妙な金銀の飾りの付いた棒を手にしている。その棒にはスコップの刃が付いており、反対側の石突には三日月状の刺又(さすまた)が付いていた。

 『月牙鏟(げつがさん)

道教や仏教の僧侶が死体を埋葬するさいに使ったと言われるスコップ形の法具である。


 高志才智(こしのさいち)月牙鏟(げつがさん)を天に向けて突き回すと天空が真っ赤な口を開いた。


小野篁(おのたかむら)が目を見開く。

「あれは地獄の口!地獄を開いたのか!」


 高志才智(こしのさいち)月牙鏟(げつがさん)をこちらに向けて振り出せば赤く燃える地獄の口から火炎の竜巻がうなりを上げて吹き降りて来る。


「まずい!隠れろ!」

小野篁(おのたかむら)が空中に防壁を張る。

さらにカマタリと額田姫王(ぬかたのひめみこ)が同時に言霊を詠唱する。

  『衣の関!』

  『標結(しめゆい)!』

まるで津波がぶつかるように炎の突風が吹き抜ける。

三重のバリアで火炎旋風をようやく防いだ感じだ。


「時空を掘り開き地獄の獄炎を召喚する月牙鏟(げつがさん)…まさか天蓬上将(てんほうじょうしょう)!」

小野篁(おのたかむら)がつぶやくように言った。


天蓬上将(てんほうじょうしょう)?誰それ?」


「紫微宮(北極星)を守護し、天の川の水軍を率いると言われる破軍星の神です」


 天蓬元帥(てんほうげんすい)

数十万の天魔軍団を使役し天界の紫微宮(北極星)を守護する星の神、破軍星の軍神である。


「破軍星の神!ちょっ!そんな最強神仙が何でここに居るのよ!」

さすがの額田姫王(ぬかたのひめみこ)天蓬上将(てんほうじょうしょう)の名前を聞いて(あせ)った。


「それは分かりません。遥か古代の周の時代に人間に転生したと聞きましたが、まさかこの国に潜んでいたとは」


「紫微宮(北極星)の将軍から人間に転生…あ〜そういや昔、天界でそんな話を聞いたような」


天蓬元帥(てんほうげんすい)は天界でも最強軍団長と言われる将軍よ」


「そうだっけ?」

(あま)つ狐(※彗星)の神格であるカマタリからすれば、天界の事などあまり興味が無いようだ。


「キミ、そんな調子だから鈴鹿さまにド田舎の神祇官なんかに転生させられちゃったのよ!」


「それ、今言う事か?」


 高志才智(こしのさいち)こと天蓬元帥(てんほうげんすい)は再び月牙鏟(げつがさん)を振り上げる。

 「斉天召喚!」

海面に巨大な地獄の井戸が口を開くと海鳴りと共に地面が揺れ、背後の海から青い大猿が現れた。

大きさは二十メートル近い巨体である。


「な!なんじゃありゃ?!」


斉天大聖(せいてんたいせい)!水の大妖怪です」


「人間の転生体なのに、あんな怪物まで使役できるとは、さすが天蓬元帥(てんほうげんすい)ね。やはり私の推理どおりだわ」


「推理ねえ…」


 天蓬元帥(てんほうげんすい)は青い大猿の肩に飛び乗り、月牙鏟(げつがさん)を天空に向けて三宝の(しゅ)を唱える。

「精・気・神!」

たちまち『天氣』が渦巻き天空は雲に覆われ雷鳴が轟きはじめた。


「ヤバい!」

カマタリは天氣の異常を察してとっさに獣神体に変身すると剣を向けた。

 と同時に天蓬元帥(てんほうげんすい)は天空から稲妻を呼び寄せる。

「天雷!」

(イカヅチ)!」

天蓬元帥(てんほうげんすい)月牙鏟(げつがさん)から強力な稲妻が発射される。同時にカマタリも稲妻で相殺する。

 二つの稲妻が空中でスパークし轟音と共に大爆発した。


 青い大猿は爆炎を片手で防ぎニヤリと笑う。天蓬元帥(てんほうげんすい)も無傷のようだ。


 獣神体に変身したカマタリは黒コゲになっていた。全身がしびれて手にした剣を落とす。剣も煙を上げていた。


 さすがに天界の無敵大将軍の破壊魔法だ。恐るべき威力で全身にダメージが走る。


「獣神体か。それがお前の全力かな?中臣鎌足」

天蓬元帥(てんほうげんすい)は暗い笑みを浮かべると巨大な大猿がカマタリをつかむ。

「ぐあああっ!」

かろうじて圧殺は避けたが、金鬼と互角のパワーを持つカマタリ獣神体の身体がきしむ。強い!この大猿の戦闘力は四鬼神に匹敵する!

 青い大猿はニヤリと笑うとさらに強く握り潰してくる。

「ぐおお!くそっ」

神通力を使い果たしたカマタリは耐えるだけで精一杯だった。


 天蓬元帥(てんほうげんすい)は静かに笑みを浮かべるとカマタリに月牙鏟(げつがさん)を向けた。

「あっけない最期だったね。中臣鎌足」


その時、天蓬元帥(てんほうげんすい)の足にチクリと剣が刺された。

「何っ?」

 いつの間にかチカタが天蓬元帥(てんほうげんすい)の横に立ち、剣で足を刺していたのだ。

 しかもこの剣は蠱毒(こどく)が塗られた幻人(げんじん)の剣である!


「しまった!」

天蓬元帥(てんほうげんすい)月牙鏟(げつがさん)でチカタを切り払うと、チカタはヒョイと空中に飛び退き、落下する。

 そのチカタをカラス天狗が空中でキャッチして地獄の井戸に飛び去った。


「おのれ…」天蓬元帥(てんほうげんすい)は歯噛みした。

まさか子供にしてやられるとは、しかもあのカラス天狗…

 高志才智(こしのさいち)となってカマタリの戦力は完全に調査したはずだった。

 だがまだ未知の戦力が居たのか!


 神仙の転生とはいえ人間体である。たちまち猛毒が全身の力を奪う。

 天蓬元帥(てんほうげんすい)は片膝を着きながら荒い呼吸で青い大猿に命じる

「そいつを…殺せ…斉天大聖(せいてんたいせい)

大猿は両手で一気にカマタリを握り潰す。


 「金翅鳥王(こんじちょうおう)剣!」


 金色の光が砲弾のように青い大猿に打ち込まれる。

 大猿はカマタリを手放すと高台から倒れるように天蓬元帥(てんほうげんすい)と共に海の中に転落した。

 巨大な渦潮が巻き上がり、やがて消えた。


(ひつじ)さん…」

黒コゲのカマタリは起き上がり崖の上から海を見ていた。


「逃したか」地上に降りた小野忠明は刀を納める。


「あの青い大猿、ただの妖怪ではござらぬようですな神子上(みこがみ)どの」※

地獄の井戸の中からチカタを肩車したカラス天狗が出てくる。

 チカタを下ろすとカラス天狗は修験者姿の善鬼坊の姿に変わった。


※ 神子上典善:小野忠明のこと。


「ふむ、いかな大妖怪とて金翅鳥王剣(こんじちょうおうけん)を食らって、現世(うつしよ)に存在できるものでは無いハズなのだが…」


「と、申されると?」


「み仏のご加護がある魔物…かもしれぬな」


「なるほど、天魔将軍どのの有無一剣と同等の威力がある八識夢想剣を食らって存在できる天魔などおりませぬからな」


「あれはワシが教えた剣じゃ!」

小野忠明は年甲斐もなくムキになる。善鬼坊は大笑いした。


「助かったぜ、アンタらは?」


カマタリに声を掛けられ二人は折敷(おりし)いて爪甲礼をする。

※折敷爪甲礼:片膝と片手を着く礼法。野戦のさい甲冑武者などが使う。


 チビコマチが偉そうに二人の前に立つ。

「カマ様、これなる者どもは次郎右衛門と善鬼坊。夢想剣の使い手ですう」


「夢想剣?何それ?」


「天魔を打ち倒す剣にございます」

小野忠明は折敷いたまま答える。


「天魔を倒す?どうやって?」


「八識夢想。つまり『空』の心法を天魔の霊体にぶつければ天魔の霊もまた『空』に帰ります」


「『空』の心法?」


「人の本性は『空』であり、敵もまた同じ宇宙の『空』から別れた相対にございます。我が虚空をもって相手の空を一つの『空』に帰して天魔を成仏させるという仏の教えにございます」


「仏の教え…あ!」

山背大兄王の最期の言葉『神と仏。二つの力を使いこの世界を救え』を思い出した。


「有るは無く……」

ふとカマタリの口から山背大兄王の前で歌われたコマチの歌が出た。


小野忠明が続いて歌う。

 「有るは無く 無きは数添う 世の中に

   あはれいづれの 日まで歎かむ

小野小町様の御歌にございますな」


「これどういう意味なんだ?」


「『歌は枝なり』とは申しますが、我ら兵法道歌の情においてこの御歌は『有も無も同じ一つの『空』である』と読み解きまする。有る事を知って無き事を知る。これすなわち『空』なり」


「その『空』って何だ?」


「空は無ゆえに不変。つまり虚空こそ無敵の金剛体でございます」


「なるほど虚空なら不変か!逆転の発想だな」


 ようやく山背大兄王の予言の言葉、神と仏二つの力の意味が分かった。

だがしかし天魔のパワーの源はあくまで現世(色界)から発生するものである。

 天魔である自分が虚空の力を使えるのか?


「天魔である俺にもできるかい?」


「神も人も天魔も同じ宇宙の一空から生じたものに過ぎませぬ。全てが一体なのでございます」


 その言葉に横で聞いていたゴンがうなずいた。

あの月夜の夜、未来から来た老人から聞いた教えそのままである。

 ゴンがうなずくのを見てカマタリはこの老剣士の言葉が真実であると理解した。


 たとえ神の転生体とはいえ、今は人間である。ならば神には無い人間の智慧を使って勝つしか無い。

 鈴鹿御前がわざわざ転生させた理由はこれかもしれない。


「その『空』の金剛体になれば、アイツらを倒せるという事かい?」


「無心の剣。その剣は龍をも倒すと言われます」


「龍を?」


「先ほどの金翅鳥王(こんじちょうおう)剣は迦楼羅王(ガルーダ)の化身ゆえ、龍をも倒せると」


 額田姫王(ぬかたのひめみこ)がいきなり割り込んで来た。

「ちょっとお!あのていどの技で龍神が倒せるワケ無いでしょ!」


 まさかのツッコミにさすがの小野忠明も狼狽(ろうばい)する。

それを見て善鬼坊は大笑いしてボロボロのカマタリは頭を抱えた。

「めんどくさい事に…」


 〜 59 最強神 天蓬元帥 〜完


  【年表】

◼ 574年高句麗の使者が再来。

(王辰爾(おうしんに)が烏羽の表を解読?)

◼ 637年則天武后、太宗の後宮に入る

640年有馬皇子誕生

◼ ︎643年山背大兄王死去

  中臣真人(なかとみのまひと) (チカタ)誕生

◼ ︎645年蘇我入鹿暗殺

◼ 649年、阿倍内麻呂死亡



 (=φωφ=)あとがき。

最強剣鬼小野忠明先生ひさびさの再登場。

そして善鬼坊さん。

この二人の鬼を呼んだのがチカタ君6才ですね。彼らが古代編最後のカギになります。


 >天蓬元帥(てんほうげんすい)

天界の紫微宮(北極星)を守護する軍神なのですが、猪八戒のモデルでもあるため、本場でも豚キャラにされてたりします。


 > 有るは無く 無きは数添う 世の中に

 >有る事を知って無き事を知る。これすなわち『空』なり

この小野小町の歌の解釈は二天一流の伝書に記載されています。

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