21 クラスメイトは鬼人
【登場人物】
小野タスク
平凡な高校生。
悪霊を斬る霊剣『韴霊剣』を目覚めさせる能力がある。
自宅の裏山が、なぜか地獄に繋がっている。
コマチ(小野小町)
平安時代の鬼退治師であり和歌の言霊を操り自由に時空間を変化させ、炎や水を操る能力を持つ少女。
・パンツを履くという概念が無い
猟師コマチ(チビ助)
鬼と戦う少女。蝦夷風の装束を身にまとい半弓と毒薬を使う。
・パンツを履くという概念が無い
柳生十兵衛 平 三厳 (ミツヨシさん)
山奥で修行中になぜか現代に召喚されてしまい、なぜかタスクの家でお手伝いさんをしている剣豪。
立烏帽子の霊刀『小通連』に片目を食われた。
餓鬼阿弥とテルテ
男女の熾燃餓鬼。鬼の身体能力を持ち、炎の属性魔術を使う魔界の武士
立烏帽子(鈴鹿御前)
第六天魔王の一人。リアル魔王
魔王軍随一の女性剣士である。
川崎カヲル
年齢不詳の女性民族学者。
裏山の古墳を発掘するため移住して来てそのまま学校の司書になった変人。
・南軍流剣術の宗家である。
犬山
三年生。剣道部の主将であるがカヲルとコマチが苦手。
「ごめえ〜ん!昨日は急に学校の会議に呼び出されちゃって行けなくなっちゃったんだあ」
朝の司書室でカヲルさんは俺に平謝している。
「緊急会議って何かあったんすか?」
「それがさぁ、数学の沢田先生が急に学校来なくなっちゃってさ、代わりに経済の岸岡先生が数学に回って、国語の谷部先生が経済に行って、古文の笹野先生が国語に回って、それで古文の教員免許持ってるアタシが代用教員で教えてくれって校長に頼まれちまったのよお」
「え?カヲルさんって古文教えられるんですか?」
「大丈夫よお、どおせ古文なんてだれも興味ないじゃん」
大丈夫かいな。
格闘技教本を読んでたコマチが顔を上げる
「カヲルどの、古文とは何ぞや?」
「古文とはね…コマチさんからすれば未来の言語かしらね」
「なんじゃ、未来人はめちゃくちゃじゃのう」
メチャクチャなのはお前じゃ!
「しかし歌は枝なりともうすからな。未来の言葉というのを妾も学んでみたいぞ」
「いやお前が授業に出るとマズイやろ!」
「面白い。お前もいっしょに授業を受けておれ」
「んな無茶なって…誰?」
振り返れば横には机に座ってコーヒーを飲んでいる赤いドレス姿の御前が居た!
「うわあああっ?!」っと思わず叫んでしまった。
全然気づかなかった。
コマチがバッ!と床にひざまずく。
「そのままで良い。楽にしろ」
御前はコーヒーを飲みながら言う。
「ははっ」
コマチは御前さまに深く一礼すると、またテーブルに戻り格闘技教本を広げてグテっとイスに座る。
くつろぎ過ぎだろ!
「どちら様?」カヲルさんが不思議そうな顔をして俺に聞く。そりゃそうだ。
「え〜と、御前さまっす。最高神だそうで」
「鈴鹿でかまわぬ」
御前はコーヒーが熱いらしくアチっ!てしたあとフーフーしている。
ホントに神様なのか?
「鈴鹿さまは何の神様なのですう?」
「六欲天魔じゃ」
御前はコーヒーをフーフーしながら答えた。
「え…第六天魔王?……まさか鈴鹿御前!!」
カヲルさんは驚いた顔でズザっと退いた。
「え?そんな有名な神様だったの?」
「あなたの裏山の神社が『第六天神社』でしょお!」
「そうだっけ?」
「欲界における天魔の最高位が第六天魔王の魔王『波旬』ね。鈴鹿御前はその一族と言われてるわ」
マジで最高神。というかリアルで魔王だったんか!
「…それで鈴鹿御前さまが何のご用ですかあ?」
御前は俺の方を見た。
「お前に僕を付けてやる。好きに使え」
「僕?」
「戦が近い。剣の修行をおこたるなよ」
言うなり御前の姿はコーヒーごと消えた。
カップごと持って帰ったようだ。しかもちゃっかり砂糖も無くなっている。
しょうがねぇ魔王だな。
「しかし…戦って何だ?」
なんか御前も婆さんも小野忠明も、肝心な事を言わないよな。
カヲルさんはコマチにたずねる。
「あの人が例の御前さまという事は、コマチさんが祀っていたのは鈴鹿御前なのかな?」
「いや、妾は地獄そのものを祀っていたのじゃ」
「何それ?」さすがのカヲルさんも初めて聴く風習の様だ。
「我が一族が天魔に仕えていたによって、妾が地獄の井戸の力と…あの像……それを引き継いだだけの話じゃ」
コマチは何か言いかけてチラッとこちらを見た。
何だ?
「地獄の天魔?……あ!第三天魔王かあ!」
カヲルさんが何かに気づいた様に話し出す。
「第三って?」
「地獄の閻魔大王はヤマ天と言って第三位の天魔王よ。
帝釈天は第一天魔。
鈴鹿御前は第六天魔王で、欲界最上位の天魔王ね」
六位なのに一番上なのか。
魔王にもランキングがあるとは、魔王もたいへんなんだな。
「んで第六天魔王って何なんですか?」
「日本では第六天魔は天狗の事よ」
「え?天狗ってあの妖怪の?天狗って帝釈天や閻魔大王より魔王ランキング上だったんすか?」
「まさかあ、天狗も上は天上界の宇宙神から下は妖怪変化や動物霊の木葉天狗までピンキリだけど、天魔は最も人間に近く人間を惑わし欲を喰らう神でもあるわね」
宇宙神レベルの天狗って何やねん。
天狗のイメージからは想像すらつかない。
「しかし神さまが、人間の欲を食うんすか?神さまなのに?」
「仏道ではね無の境地、つまり『空』が悟りの最高位なんだけど、天魔はまだ完全な『空』ではなく、人間の心、人の姿があるとも言われるわねえ」
「人間の心?」
「それだけ人間の心に近いってことかしらねえ。
例えば菩薩さまも完全な『空』ではなく、欲界にとどまる仏だからこそ私たちの悩みを理解し、直接導くことができるとも言えるね」
「完全な『空』ではない…」
そういえばミツヨシさんも完全な空虚では戦えないと言ってたな。
心を捨てて捨てぬなりか。
「天狗はね、人間の欲を喰らうから人間とよく似た神であり、人間の身近な存在でもあるのさ。
人間界に近い存在だから、時には神通力で人間を助けたり、時には神界の教えや異変を人間界に伝えたりする事もあるから偉大な神として信仰とされているわけなんよ」
天狗か。
妖怪が神だったなんて考えた事も無かった。
天魔王…魔王か、しかしなぜチビ助は俺を魔王と呼ぶんだろう。
始業のチャイムが鳴る。
さて一時間目からカヲルさんの古文の授業だ。
しかし「あの」カヲルさんが俺たちの先生になるとはね。
教室ではみんな席に着いている…あれ?席の数が多いな?
しかもなぜか自分の周囲が空席になっている。なんじゃこりゃ?
古文の笹野先生といっしょにカヲルさんが入って来た。
…いやちょっと待て!
その後ろからコマチと餓鬼の男女の三人がゾロゾロと入って来て、俺の前後に着席した。
コマチは当然のように隣の席に座る。
なっ?!何だ何だ?
「は〜いみなさあん、今日から古文をいっしょに勉強する川崎薫でえす!」
カヲルさんは元気良くあいさつして…
いや、ふつうに授業が始まってしまっているし!
誰もこの他校の制服を着た鬼の男女や、古代から来た凶悪暴力少女を気にしてないのか?
ふと先ほどの鈴鹿御前を思い出した。
そういえば先日の火災でも鬼たちの存在は誰の記憶にも無かった。
天魔は人間の欲を食う?
(まさか学校中の生徒や先生の記憶を全て改編したのか?)
これは御前のしわざとしか思えない。
ひどい最高神だ。
鬼たちは姿勢も崩さずビシッと正面を向いたまま動かない。
なんかサムライみたいだな。
コマチはといえば、いつもの様に机に伏して教科書をパラパラめくっている。
「なんじゃ、漢字が多いのう。つまらん」
またぶつぶつとブーたれている。
古文の教科書にのっている偉人の言葉とは思えないダメ発言だな。
しかしこう餓鬼の剣士に前後をはさまれては落ちつかない。
しかも目の前に居る男鬼のデカい背中で黒板が見えない。
この男鬼は、たしか餓鬼阿弥と呼ばれていたな。後ろのキツめの美人がテルテ。
チラッと後ろを見るとテルテがキッ!とニラむ。
怖いわ!
チャイムが鳴って授業が終わる。
ダメだ、授業内容が全然頭に入らなかった。
恐る恐る、鬼たちに声をかけてみる
「あ…あの〜」
「何だ?」
うわっ!ふつうに返事した。
男鬼は巨体からジッと見下ろして来る。怖いがな!
「な、なぜいっしょに授業を受けているんです?」
「御前さまよりの御下知※だ」
※ 御下知:ご命令
やはり御前の指示か。
いや待てよ。たしか御前は「お前に僕を付けてやる」とか言ってたけど…まさか
「その命令の内容って何ですか?」
「貴様が我らの主人となり、我らは貴様の家来となり、次の戦闘に備える事だ」
「え?戦争があるんですか?!」
男鬼の目が一瞬ギョロリと金色に変わった。
ギクっ!ひょっとして何かマズイ事聞いた???
チャイムが鳴って2時限目が始まったが、周囲が気になって全然頭に入らないよな!
ようやく昼休み。
コマチと司書室に弁当を食いに行く…って、何で餓鬼たちが付いて来るんだ!怖いがな!!
司書室に行くとカヲルさんは気にせず迎え入れる。
「きゃあ!いい男!新顔さんねえ」
いやどう見ても鬼でしょ!
たしかにこの餓鬼阿弥はワイルドなイケメンだし、テルテはモデルみたいな美人だしな。貧相なオイラとはエライ違いだ。
しかしこの狭い司書室に大男を含め五人はキツいな…座る場所さえ無い。
コマチはさっさと俺の弁当を開けて食いはじめる。
「今日は冷凍焼き鳥の衣揚げか!十兵衛のヤツめ腕を上げたな!」
ただの冷凍ナゲットをレンジでチン!だろ。しょうがねぇ貴族だな。
そして俺はただの食パンをかじる。
「ねぇねぇ十兵衛ってだあれ?」
カヲルさんがランランと興味ありげな顔をする。
「裏山の神社に住んでいる柳生十兵衛みたいな片目のお侍さんっす。一昨日からウチのお手伝いさんをやってくれてます」
「え?侍のお手伝いさん?」
カヲルさんが首をかしげる。
そりゃ理解できないよな。
二人の男女鬼は司書室のすみにピクリとも動かず立っている。
食事中にジッとこっちを見るのはやめてほしい…
「ねえねえ、あなた達もコーヒー飲むう?」
テルテが首を振る。
「かまうな、我らは餓鬼だ、飲み食いはできない」
「あ〜んそうか、餓鬼道に堕ると飲み食いしたものが体内で炎に変わって身体を焼くって言うものねえ」
炎に?
そうか、熾燃餓鬼の吐く炎とは餓鬼の持つ体内の炎なのか。
しかし餓鬼は飲み食いができないとは少し気の毒だな。
「ところでお二人が俺に付いてくるのはなぜなんです?」
「剣の修行のためだ、主人」
「え?剣の修行?」
「立烏帽子さまから聞かなかったのか?」
剣の修行…
あ〜そういえば「戦いは近い。剣の修行をおこたるなよ」と御前さまは言ってたな。
「メシを食い終わったなら稽古をするぞ」いきなり鬼たちは日本刀を差し出す。
どこから取り出した?!
この情け容赦ない感じ、修羅界の小野忠明先生に似てる。
「待てぃ!」
コマチがジロリと鬼たちをにらむ。
今度は何だ?
「良いか!食後はコーヒータイムしながらガールズトークするのが宮中のしきたりじゃ!放課後までそこで待ちゃれ!」
んなメチャクチャな知識どこで仕入れたんだ。
「わかった」
そう言うと二人の鬼は放課後まで司書室でずっと立って待っていたらしい。
まじめ過ぎて怖いんですけど。
ちなみにコマチのヤツも放課後まで司書室で授業をサボっていたようだ。
しょうがねえ貴族だな。
さて放課後の剣道場。
助かった。カヲルさんとの稽古だ。
…と思ったら餓鬼阿弥とテルテが剣道場にまで付いて来てしまう。
さすがにこの熾燃餓鬼を二人相手に稽古したら、俺、死んでしまうんじゃないかな!
なんとかして稽古を食い止めねば。
「あの、そこで待ってて下さい」
「わかった。主人」
ホントに家来みたいだ。
二人の鬼は道場の入り口で黙って立っているのだが、なんかすごい殺気が道場に充満している様な気がする。
剣道部員たちも鬼たちの威圧的な視線に冷や汗をかいていた。
「はあ〜い!タスクくんも構えてぇ」
白い胴着に着替えたカヲルさんが木刀を構える。
まだ二日しか経ってないけど、この稽古もずいぶん久しぶりな気がする。
とりあえず基本のツキの構えだ。
俺は手内を決めると足を踏み出し、切っ先をスッと正眼に突き出した。
「えっ?!」
カヲルさんが驚いて動きが止まった。
ん?何だ?
カヲルさんは急に真剣な顔になってジッと見ていたが
「誰かに術を教わってる?」
うっ!バレてしまったか。
「え…えと…小野忠明先生とか、お手伝いのミツヨシさん」
さすがに修羅界の小野忠明先生の名前を出すのはマズイかなと思ったけど、カヲルさんにはウソはつけない。
「そう、小野忠明か…さすがだわ」カヲルさんは真剣な顔で納得した。
あれ?信じちゃうの?
「犬山あ!面つけろ!」
「は、ハイッ!」
カヲルさんはいきなり剣道部主将の犬山さんに面を着けさせる。
「誰か!タスクにも面つけてあげて!」
いきなり剣道場で犬山さんと試合する事になった。
初めて面をつけたが、ホコリ臭いし面紐を締めると耳が痛い。目線が見えない。
よくみんなこんな状態で刀に集中できるなあ。
道場開始線で蹲踞してお互いに切っ先を合わせる。
相撲みたいだな。
「はじめ!」
カヲルさんの立ち会いで試合開始で立ち上がる。
「イアアイイ!ギエイ!」と犬山さんの気合が響いた。あまりの迫力でビビってしまった。
その瞬間、犬山さんは俺の竹刀を打ち払って突いてきた。
衝撃が突き抜けヨロめいた所をパカーン!と面を打たれた。
たちまち一本取られた。
早い!強い!何もできなかった。
そうか…相手のディフェンスを崩すには、竹刀を打ち払えばいいのか。
こんな基本的な事すら知らずに今までよくもまあ、あんな怪物たちと戦ってこれたものだ。
それにしても、まず犬山さんの気合の迫力でこちらの心法が先に崩れてしまった。
気合を使って心法を先に崩す。
剣道にはこんなテクニックもあるのか。いろいろと勉強になる。
だがしかし
落ち着いて心を動かさなければ犬山さんの動きが見えていたはずではないか?
もう一度竹刀を握り直してしっかり構える。
再び開始線に戻る。
「二本目、はじめ!」
今度はいきなり小手を打たれた。
ダメだ…早くて見えない。
「どう?タスク。続ける?」
カヲルさんが問いかけてくる。
チラッと壁ぎわに目を移すと、コマチと目があった。
コマチは何も言わずうなずく。
腕組みをして見ていた餓鬼阿弥もうなずいた。
正面に向き直る、犬山さんも面金の奥でうなずいた。
そうか、俺は何かを見失っていたのかもしれない。
心を刀にあずける。
構えた剣先に身を任せる。
有るは無く…
無きは数添う 世の中に
あわれいづれの日まで嘆かん
心を捨てて捨てぬなり。
「手内…」
竹刀を静かに握り、俺はまたツキの構えをとる。
カヲルさんがピクリと反応した。
「お願いします」
「三本目!はじめ!」
また犬山さんの竹刀が踊り、気合が響く。
早い、強い、さすが犬山さんだ。防具を着けると全く打ち込むスキが無い。
とても俺なんかの敵う相手ではない。
「だけど…」
俺はゆっくりと正眼の構えの切っ先を頭上高く振りかぶる。
「上段!?」
周囲で見ていた剣道部員たちがザワめいた。
剣道では上段の構えは上級者が使う構えらしい。
だが俺には関係ない。
「南軍流一打三手」
俺にはこれしか無い。
面越しに犬山さんの表情が変わったのを感じた。
犬山さんはスッと切っ先をわずかに寝せながら斜めに上げて『平正眼』に構え直した。
なるほど、これが剣道の対上段用の構えか。
相手の陣形に合わせて構えも自在に変化する。
ほんの少し切っ先の位置を変化させるだけで、相手の攻撃線を防ぎ自分からは攻めやすくするのか。
すごく勉強になる。
もちろん平正眼の攻略法なんて俺は知らない。
対策があるとしたらミツヨシさんに教えてもらった心法だけだ。
一剣天によって寒じ…
「自分を打たせて拳を打つ」
俺は目を閉じる…
時間が止まった。
犬山さんの切っ先動く音が聞こえる。
「風をとらえて水音を聞く」
見るは見るにあらず。
目で見ずして敵を見る
新陰流『無見』である
剣道場の隅にいた餓鬼阿弥が目を細める。
周囲の剣道部員たちも目に見えない変化を感じて静かになった。
犬山さんはジリっと前に詰めて、ふと動きが止まる。
どのくらい時間が経ったのだろう。
犬山さんはフッと竹刀を下ろすと、立ったまま面を脱いだ。
何が起きたのか?と、周囲の剣道部員たちがザワつく。
犬山さんは真剣な表情でジッとこちらを見ている。
俺もゆっくり竹刀を下ろした。
カヲルさんが一喝する
「犬山あ!なぜ試合中に面を脱いだ!打てっ!」
犬山さんは俺から真っ直ぐ目線をそらさず答える。
「打ち込もうと思えば打ち込めたし、俺は勝てたかもしれないっす…だけど…」
「けど?」
「…………」
犬山さんは沈黙した。
「けど何だ!犬山!言葉にしてみろ!」
カヲルさんは厳しす叱咤するが、犬山さんは何も言わない。
…俺にはなんとなく分かる。
まだ続いているんだ。
剣道場の奥で腕組みをして見ていた餓鬼阿弥が口を開いた。
「真剣なら主人の勝ちだ」
カヲルさんはハッとして振り返る。
剣道部員たちがざわめいた。
真剣なら?
同じ剣道なのに真剣と竹刀では違うのか?
餓鬼阿弥は話を続けた。
「剣に生命力が強く宿るものが勝つ。生きた剣、信じる力がある者が勝つ。戦場で使えるものはそれだけだ」
信じる力?
コマチを見るとコマチはコクリとうなずいた。
そうか、これは俺一人の力じゃないんだ。
犬山さんは俺の肩を叩いた。
「そうだ小野!お前の勝ちだ。よくがんばったな!」
「ありがとうございます!」
思わず大きな声が出た。
誰よりも犬山さんに認めてもらえた事がうれしかった。
振り返ると餓鬼阿弥が少し笑った顔をしていた。
〜21 「クラスメイトは鬼人」〜 完
(=φωφ=)あとがき。
>鬼がクラスメイト
じつは最初に書こうと思ったのがこの設定なのですが、むりやり剣術の話に持って行ったらこうなってしまいますた。
ダメですねぇ。




