01コマチ参上!
【登場人物】
小野タスク
コマチから「魔王」と呼ばれる少年。
平凡な高校生。自宅の裏山が鬼や妖怪の棲む古墳になっている。
コマチ
謎の女子高生。
「カマ様の神器」と呼ぶ大型の鎌をタスクに押し付ける迷惑な存在。
・パンツを履くという概念が無い
猟師コマチ
主人公を「魔王」と呼び、鬼と戦う少女。
蝦夷風の装束を身にまとい、蝦夷の半弓と毒薬を使う。
・タカムラと共闘しているらしい
・パンツを履くという概念が無い
立烏帽子
魔王軍随一の剣士。
地獄の門を開放した。
タカムラ
地獄の高官である紳士。
自由に地獄と現世を行き来できる。
強力な呪術を使う。
あの日の夜からだろうか、彼女が現れたのは。
俺はあの夜、腹が減ったのでコンビニに行こうと考え、裏山の林をショートカットしていたところ鬼に出会った。
いやマジ。
鬼なんて初めて見たよ。
この裏山はナントカ山一号古墳とか言われる県の指定史跡で、俺が生まれた年に、古墳の発掘調査が行われて立派な石室が発見されたとか聞いた事がある。
墓場だと考えると、ちょっと不気味な話だが、怪物が出るとは聞いて無い。
数匹の小鬼たちはガサガサと草むらを這い回りながら大きな金色の目を光らせてこちらに向かって来た。
あれ!ヤバくね?
俺はあまりの出来事に硬直していると横からヒュンと矢が飛んで来て先頭の鬼を倒した。
驚いて振り返ると月明かりに照らされ、子供の猟師が弓を構えていた。
この暗さでもその美しさが分かるほど驚くほどの美少女だった。
とは言ってもまだ小中学生ぐらいに見える。
藍染めのような青いミニスカートの着物。
ショートヘアの黒髪に何か装飾のついたヘアバンドを額に巻いている。
腰に毛皮を巻き、小さな弓を持っている。
少女は凛とした声で叫ぶ
「何をしている!戦うのだ!」
「え?」
少女が腰に差していたブーメランのようなものをこちらに投げ渡す。
手に取るとズシりと重い。刃渡り30センチほどの巨大な鎌だった。
鎌?なんで?
鬼が目の前に迫ってきた。
近づいて来るのを見るとグレーや赤のおぞましい顔をしているのが夜の闇の中ではっきりと見えた。
「うわああ〜!」一気に血の気が引いて、メチャクチャに鎌を振り回したが、自分の左腕を切ってしまった。
(しまった!)
驚いて左の腕を見てみるとシャツは裂けて血まみれになり、ドクドクと血が吹き出てくる。
あ〜見るんじゃなかった。
「ヒイィ!死ぬ死ぬ死ぬ!」と叫んで足をバタつかせながら夜の草むらの中へひっくり返った。
「何をしているんだ、バカ者が!」
俺の目の前に少女が立ちはだかる。
細身の真っ白な脚が目の前にある。
ミニスカートに見えたのは丈の短い着物だった。時代劇で労働者たちが着ている作業着のようなやつだな。
というかクノイチのミニスカ着物か。
なかなかエッチだ。
いや、それどころじゃないけど。
少女が弓を曳く、
続けざまに矢を放つと、小さな矢に射られた鬼は転がり回って逃げ出した。
「スゲぇ、本物の弓ってこんな小さな矢でも、あんなに強力なのか…」
「毒で身体が痺れるからな。逃げ出したのだろう。やはりお前は運が良い」
「毒矢かよ!」
「蝦夷の矢だ」
少女は当然の様に答えた。
蝦夷?この娘はアイヌか何かかな?
言われてみれば彼女の藍染めの服には何か縄文土器のような模様が染め抜かれている。
しかし本物はネットで見たアイヌとは印象がずいぶん違うな。
というかなぜアイヌが鬼退治をしてるんだ?
「見せてみろ」
少女はしゃがんで片膝を着き俺の左腕を持ち上げた。
「う!イテっ!」
暗くてよく見えなかったが、間近で見るとすごい美少女だ。白い肌と黒いショートヘアが月夜に輝いて見える。美し過ぎて驚いた。
「かすり傷だ、たいした事は無い」
少女は腰に差したナタのようなナイフで俺のシャツを勝手に引き裂くと、いきなり傷口を口に含んで血を吸い出した。
「ギャっ!」
痛みで思わず顔を背ける。
ヒイ〜見るんじゃ無かった。
と、顔を伏せた目の前に白く光る少女の生脚があった。
あまりの美しい肌に驚いた。
思わず目線で白く細長い脚をたどって行く。
むむっ?!これはパンチラが!
あれ?…まさか…はいてない?
暗くてよく見えないが、こ、これは!
俺は思わず顔を近づ
「できたぞ。痛くないか?」
うわっ!と驚いて目線をそらす。
危うく通報される所だった。いや…ひょっとしてワザと見せているのかも知れない。痴女かな?
左腕を見ると何か薬草の様なものが布で巻かれていた。
「ああ、ありがとう。しかし何なんだ?あの怪物は」
「鬼だ」
「鬼?マジかよ?」
「地獄の門が開いたから出て来たのだ。現世と地獄が近づいてしまったからな」
「地獄の門?なんで、そんな物騒なもんが開いたんだよ」
「魔王が地獄の門に近づきすぎたためだ」
「魔王って何だ?」
「お前のことだ」
「え?え?俺?」
何を言っているんだ。この狩猟民族は?
なんで俺が魔王になってるんだ?
「地獄の門は塞いでおく、小僧、お前はここには無闇に近づくな」
「お前が塞ぐのか?」
「私ではない、タカムラだ」
あ?高村さんって誰だよ?近所にそんな人居たかな?
それとも役場の生活安全課の職員さんかな?
「分かったらサッサと帰れ小僧」コマチは命令口調で怒鳴りつけてくる。
俺はチビっ子に小僧よばわりされてちょとムッときた。
「だいたいお前は何なんだチビ助」
「妾は『典』の官位ではない。お前たちに合わせてやるからコマチの呼び名で良い」
※ 典:後宮での次官の意味。
上から「尚・典・掌
その下が采女など「めのわらわ」
コマチ?どっかで聴いた名前だな。
源氏物語だっけ?春はアケボノとか。
「小僧、お前の名は?」
チビ助はふんぞり返って俺に命令してくる。
いちいち生意気なクソガキだ。
「俺はタスクだ」
「タスクか。聞いた名だな」
そりゃこっちの言うセリフだ。
「良いか、その『カマ様』の神器は必ず肌身離さず持ち歩いていろよ!」
そう言い残すとコマチは一瞬で闇に消えた。
さすが狩猟民族。
しかし…どうすんだ?これ?
俺はデカい鎌を片手に月夜の中をたたずんでいた。
月が天頂から照らしている。
暗い森の奥では古墳の穴倉の出入り口に無数の鬼どもがうごめいていた。
その手前に平安絵巻から抜け出たかの様な美しい姿をした人物が立っている。
烏帽子に水干姿、銀色の長い髪が風も無いのにたなびいていた。古い絵画に描かれている静御前の様な姿に見える。
月光の中でも判るほど、あでやかな美女だった。
「イタズラが過ぎますな、立烏帽子さま」
月光を背にして銀色の燕尾服を着た長身の男がいつの間にか立っていた。
スラリと背筋を伸ばし、髪はオールバックに流してある。品のある顔立ちであり、左腕には白い子猫を抱いている。
「おや、タカムラかえ?」
立烏帽子と呼ばれた水干姿の美女が男に語り掛けた。
男は微動だにしない。
水干姿の美女は男に向かって口が裂けんばかりの笑みを浮かべる。銀色の長い髪は風も無いのにフワリと舞い上がった。
「これもお役目にございますので」
タカムラと呼ばれる紳士は子猫を離すと、トランプの様なカードを取り出す。
飛び降りた猫は、たちまち白いドレスを着た猫耳娘に変身した。
猫耳娘が金と銀の瞳をギロリと向けると小鬼たちは驚いて古墳の穴倉へと逃げ出した。
立烏帽子と呼ばれた美女は切れ上がった眼で逃げる鬼どもを横目に見ながら微笑んでいた。
タカムラは指で刀印をつくり空中に文字の様なものを描き始める。
「これ魔王尊天の掟により幽界の門を塞ぐ者なり、闔べきその令旨かくの如し」
タカムラは一枚のカードを烏帽子に向けて投げ付ける。
「急急如律令」
タカムラが呪文を唱えた瞬間、ズン!と地鳴りが響き渡り、森の中からは鬼たちの穴倉は消えた。
そしてタカムラも立烏帽子も消えていた。
朝日が昇ってきた。
あれは何の夢だったのか?
タスクはけっきょく昨夜は全く寝てない。
家に帰ると腕の傷を両親に見つかり、救急車が来たり大変だった。
もちろん『カマ様の鎌』は裏の古墳の薮に捨てた。
タスクはアクビをしながら朝の坂道を自転車を押して登った。
傷口は救急外来で縫ってもらったが、動くとまだ痛い。今日の体育は休みだな。
坂道からは朝の町の風景が見える。
今日も良い天気だ…あれ?
坂道の上には見慣れぬ制服を着た女子が町の方を見てたたずんで居た。
その横顔はショートヘアの黒髪に色白の肌、驚くほどの美少女…って、あれ?この顔。
その時、風が吹いて制服のミニスカートがヒラリとめくれてパンチラが…
白い桃の様な尻がチラッと見えた。
え?!履いて無い?
美少女がこちらを振り向いた。
やはりコマチだよな?
いやいや、コマチはもっとチビ助だったハズだが?
少女はジッとこちらを見ている。
「お前?コマチか?」
「そうだ、もう忘れたのかタスク」
いや昨夜会ったコマチは猟師みたいなチビっ子だったのだが、成長早すぎねぇか。
どうなってんだ今時の発育は。
「畏れ多いくもカマ様の神器を山中にほっぽらかすとは何ごとだ!ちゃんと肌身離さず持ち歩くのだ!」
コマチはズイっと巨大な鎌を突き出して来る。
しかし何を考えているのだこの痴女は。
すごく迷惑だ。
〜01コマチ参上!〜 完
ちょいエロの現代剣豪小説を書くつもりが、思いつきでつい書いてしまいました。
あれ?剣豪と関係無くね?(´・ω・`)