猿人族
アイン「話をしてきたのか?」
レオニダス「ああ。」
俺には、猿人語がわからないから、何を話しているのかはわからなかった。ただ、何か重要なことをはなしているということはわかった。
レオニダス「1万年前の人間たちが、この世界をこんな世界にしてしまった。」
レオパルト「ええ。地球上に現れた生き物の中で、最も愚かなのは人間だと聞きましたが、その愚かな人間たちの中でも、愚かな人間たち。
第三次世界大戦は、そうした愚かな人間たちがしでかした戦争なのよ。」
ミッフィー「私には、難しいことはよくわからないんだけど。」
俺にも、難しいことはよくわからない。
レオニダス「昔々、高層ビルが建ち並び、高速道路の上を車が行き交い、公共交通機関も何でもあった時代があった。
高度文明の恩恵を受け、いろんな娯楽を楽しみながら過ごしていたんだろうな、あの時代の人間たちは。
おっと、私はついつい、説教じみてしまうところがあるようだな。私の悪い癖だ。」
それから、その高度文明は戦争で滅び、その成れの果てが、今の猿人族だということか。
ならいっそ、新暦ゼロ年からまた歴史を始めようか。
ここまで、何の活躍もしていない。とはいえ、愚かな戦争をするのも人間なら、高層ビル群や高速道路や、公共交通機関のような高度文明の利器を築き上げるのもまた、人間だと思った。
その昔、このあたりにも高度文明があり、人々はその豊かさと便利さの中で暮らしていた。
俺らは、生まれてこのかた、その高度文明というものを見たことが無い。
だから、一度でいいから、それを見てみたい。願わくば、その恩恵を受けるような生活をしてみたい。
そう願った。
すると、いつの間にか、その文明の利器が目の前に現れて、俺は驚いた。
「すごいな、いつの間にこんな。」
それは、スマートフォンと、自動車。馬が引く馬車すら、めったに通らないのに、馬が引かなくても走る、恐ろしく早い乗り物、それが自動車だ。
いずれにしても、それを使う人間の心次第で、利器にもなれば、凶器にもなる。
帰りは、自動車に乗って、町に戻ることにした。
なお、自動車に乗っていると、変な気分になるような人もいるとか。これが、車酔いというやつか。
その変な気分、車酔いを止めるための、酔い止めの薬というものもあるらしい。
それだけ俺らは、外の世界のことを何も知らなかった、知ろうともしてこなかったのかもしれない。
そういう生活では、日にちの感覚すら必要なくなるのだろう。あれが何月何日の出来事だったとか、いちいち気にしていない。
畑と、豚小屋が見えてきた。牛舎、鶏舎もある。
田んぼもある。レンコン畑もある。そして、俺らの住む家へと、出迎えた。