ダンジョン攻略
さあ、私はゲーム実況の徳武英流といいます。
現在、『ファンタジー』の『ダンジョン攻略』に挑戦中の、柴犬アイン君のプレイ実況を行っています。
さて、現在10階層までたどり着いたようですが、実はこのダンジョンは『ダンジョン攻略』の、一番最初のダンジョンで、
『ダンジョン攻略』を初めてプレイする人用の、いわば初心者向け、入門者向けの、一番簡単なダンジョンなんですよ。
ですから、フロアの構造は実に単純な作りになっていて、出てくるモンスターも、それほど強くないようなモンスターなんですよ。
おっと、私は『オールジャンルゲームス』の主催者などではなく、ただの雇われの、実況担当です。
さて、柴犬アイン君は、10階層に到着し、ついにこのダンジョンのステージボスのところに来ました。
ステージボスの名前は、黒竜丸という、馬の姿をしたモンスター。
基本的に『ダンジョン攻略』では、10階層にたどり着くと、ステージボスが現れるんです。
このステージボスを倒さないと、その先のダンジョンには進めません。
黒竜丸「よくも私をここに封印したな!神め!許さん!
手始めに、まずは目の前のお前から倒してやる!」
とまあ、お決まりのセリフを言うわけですが、四の五の言わないで戦闘開始!
柴犬アイン君、まずは剣で攻撃!
しかし、ダメージは少ない。魔法は?魔法の方がいいかもね。火の魔法。
ゴオオオオ!バシッ!
火の魔法は通常通りのダメージを与えられる。
しかし、ステージボスは強い。今までのザコなんかとは、比べ物にならないほど格段に強い。
バシッ!
一番最初のステージボスですよ。これを倒せるようにならないと、先のダンジョンへは進めません。
チート機能というのを裏技で使えば、楽にクリアできるかと思ったんですが。
アイン「うーん・・・。」
とどめをさされなかった、どうにか命拾いしたようですね。
それとも、あまりに弱すぎて、とどめをさすに値しなかったとか?いや、そんなことは無いな。
アイン「最初のステージボスなのに。」
アイラ「このゲームは、戦闘不能になっても、最後に戦闘不能になった階層からスタートできるらしいよ。」
アイン「そうなんだ。」
アイラ「それから、チート機能?この裏技を使えば、楽にクリアできるっていう話を聞いたんだけど。」
そこに、速報でニュースが流された。
速報ニュースが流されるたびに、各局こぞってその話題で横並び。
『ニュース疲れ』なんて言葉もあるくらいだからね。
「速報です。独裁国家のR国で、侵略戦争中止を訴える大規模な反政府デモが発生しました。
このうねりは日々、大きくなり、反政府デモを制止するはずの兵士たちまでもが、市民と一緒になって、その反政府デモに加担しているとの情報も入っています。」
「一方で、R国に侵略された側のU国では、R国の攻撃によって、主要都市の建物やインフラなどが破壊されている状況です。
そうした中、即時停戦への機運が高まり、
U国の大統領は、次の政権へ祖国の復興を託し、自らは前大統領として、祖国の復興を見届けていくとのことです。
国民からも慰留の声が高まる中で、それでも彼の意思は固いようです。」
アイン「自分たちはこんな、ゲームなんてやって過ごしていていいのだろうか。」
心の中では、そう思いながら、実際には
どうすることもできないまま、日々を過ごすだけの時間が続いている。
引き続き、徳武英流からお伝えします。
こんな世の中じゃ、何もかもぶち壊してやりたいと考えるような輩が出てきても不思議はない。
だけど、R国の若者の間でも、U国の若者の間でも、『オールジャンルゲームス』は流行っているそうだ。
ゲームは今や、世界の共通言語になりつつあると、私は思う。
早く、戦争がゲームの中の戦争だけになるような、そんな世の中が来ないかなと、私は願っている。




