世界大図書館【回想】
世界大図書館へ向かう途中。どこまでも地平線が広がる。
俺は、世界大図書館を築いたその人物について、
いろいろと調べることになった。
その人物は、不思議なことに過去の時代から未来へとやってきたのだという。
もともと本好きで、暇さえあれば本を読みあさっていたという。そしていつかは、世界中のあらゆる本を集めて、大図書館を作り、収蔵したいと考えていたという。
だが、第三次世界大戦でそれはかなわなかった。
第三次世界大戦は、夢見る人々のささやかな夢すらも奪い去った。
殺人AI兵器の機銃掃射を受け、殺された後、核ミサイルが直撃して、体を吹き飛ばされてしまった。その後に、この1万年後の地球に転生してきたという。
前世では叶えられなかった、大図書館建設の夢を、ここで叶えたのだという。
俺は今から、その人物に会いに行く。車に乗って。
念のため、酔い止めの薬も飲んでいくことにした。
俺と、友達7人、計8人で行くことに。レオニダスが人数分の台数の自動車を用意してくれた。しかも運転手つきで。格別の計らいとは、このことだ。
自動車は、オフロードでも走れるジープだ。
さっそくみんなで、乗り込むことにした。
この先は、何もない平原が延々と続く。
かつてはこのあたりには、大都市の高層ビル群があったというが、先の戦争のせいで、何もない平原と化してしまったとか。
遠くに見えるのが、どうやらあの巨大な建物が、
世界大図書館という建物らしい。
しかし、その大きさには目を見張った。こんなに大きな建物が、こんなところにあるなんて。
アイラ「あっ、ここね、世界大図書館って。」
「そうだ。ここがレオニダスたちが言っていた世界大図書館だよ。
しかし、やけに明るいな。眩しい。こんなに眩しい光は、見たことが無い。」
それは、それこそが、先の戦争で失われていた文明の利器の一つ、電気の明かりだ。俺たちの家には、そんな電気などは無く、ろうそくに火をつけて明かりを灯し、暗い夜を過ごす。
電気の明かりがあれば、暗い夜でも明るい中で過ごせる。まさにその、電気の光だ。
到着した時には、すっかり夜になっていた。どうやら今夜は、この世界大図書館で泊まることになりそうだ。
ガンツ「俺は、勉強ってのは苦手だな。体力の方が自信があるぞ。」
世界大図書館の中には、客人を出迎える宿泊のための部屋も用意されている。
それにしても、ここにある本の数と種類には、これまた目を見張るものがある。
「すごいな。オブリガード先生の授業で本を読ませてもらうことがあるが、断然、本の数も種類も、数えきれないほどだ。」
レオニダス「そうだろう。まさに今の世界で一番大きな図書館だからな。」
知恵の統治者と名乗るその人物は、めったに人前に出てくることは無いという。生まれも、育ちも、正体も、全てが謎の人物。それは徐々に明らかになっていくことだろうと信じたい。
今もなお、世界中のあらゆる時代の、あらゆるジャンルの本を集めているという。
小説、それから漫画なども、単行本は全巻揃っているという。
古文書の現代語訳とか、魔道書なども、時代ごと、ジャンルごとにまとめられ、区分けされ、収蔵されているという。
歴史書、図鑑、百科事典、専門書、詩集、エッセイなど、本のジャンルは、枚挙にいとまがない。
先の第三次世界大戦前後の時代の本から、第二次世界大戦、第一次世界大戦、さらにその前の時代の本も、大事に保存されてきた。
第三次世界大戦の大破壊によって、これらの本の多くも失われ、知識も失われたかに思われたが、どういうわけか、ある特殊なシェルターに保管されて、現在まで、まるで新品同然の状態で残ってきたのだという。
それにしても、第三次世界大戦が本当に起こるとは、小説とかではなく本当に起こるとは。
どこかの不幸な犬たち、不幸な子供たちが、あるいは願ったのか。それで、自分たちを虐待していた、悪い大人たちは全員、一人残らず、あの戦争で死んでいった、ということなのか。
虐待の加害者、やつらには地獄すらなまぬるい。
底辺のゴミ共が!そのまま死んでいろ!
お前たちは、それだけのことをしてきたのだから、それで罪を償うんだ。
俺らは、のうのうと、好きなことをしながら生きてやると、どこかの不幸な犬たち、不幸な子供たちが、そう願ったのか?
そして、知恵の統治者が残そうとしていた本たちは、そのまま、このような形で残り、そして俺らは、それを手に取って、読むことができる、そしてそこから情報を得ることができるというわけだ。
料理の本や、経済関連、著名人の書いた、かつては話題になったような本、
それから、音楽や、美術の本もある。
子供向けの絵本や、格闘技、スポーツの本もある。
知恵の統治者が築いたのは、この世界大図書館だけではなく、
世界絵画・彫刻美術館
ケモミミ音楽ホール
鉄道模型・ミニカー博物館
世界名所ミニチュアスクエア
などといったものを建設したという。なんとすごい人物なのだろう。ますます顔を見てみたいと思った。
そしてこの場所が、在りし日の人間たちの遺産を現在に伝える唯一の場所になっているのだ。
そうだ、ケモミミ族も、その遺産を引き継ぎ、もっと豊かで便利な生活をしよう。
人間たちが、豊かさ、便利さを謳歌した時代は、あの時代で終わり。次はケモミミ族の番だと確信した。
さあ、何から始めようか、と思った時にまず最初に手に取ったのは、鉄道の本だった。
鉄道は、近代に入ってから世界中に新たな交通手段として広まったが、戦争の時には攻撃対象にもなった。
道路さえ、まともに無い。幌馬車すら、たまに通る程度。だから、そこに鉄道が出来れば、劇的に発展すること間違いなしだ。
ここに来てよかった。これをきっかけにして、知識を身につければ、地位も名声も築けるというものだ。




