ケモミミ祭~記者会見
俺はケモミミであり、柴犬であり、嗅覚が優れているのにも関わらず、その特性を、これまでのところ、全く生かしきれていない。
まだ、こちらの時代に来たばかりだし、もうしばらくは、街の中を散策してみることにした。
ここからは、2人1組での別行動とすることにした。
別行動の方が、気兼ねなく行動できると思ったからだ。
例の、ケモミミらしき人たちも気にかかるし、俺は他のメンバーといったん別れ、アイラと2人きりでの行動とあいなった。
そんな中、またある人物と出会った。
「あれ?まさか、本物のケモミミ?」
また、謎の人物が話しかけてきた。いったい何者なんだ?
「ああ、申し遅れました。私は、こういう者です。
『ケモミミ祭』主催者の、ヴァンデンハークと申します。」
どうやら、『ケモミミ祭』というイベントの主催者らしい。名前は、ヴァンデンハークというらしい。
ヴァンデンハーク
「いやいや、驚いたことでしょう。ケモミミだらけの世界に来てしまったのではと錯覚したことでしょう。
しかし、まさかここで本物のケモミミと出会えるとは。これも何かの縁ですな。」
さっきのケモミミたちは、どうやら『ケモミミ祭』の参加者たちらしい。
『オールジャンルゲームス』の開発者、主催者とは、また別の人物らしい。そして、『オールジャンルゲームス』というゲームがあるというのは本当のことらしいということまでわかった。
すると、たちまち黒山の人だかりができていた。
それにしても、この人間の数の多さには、目を見張る。こんなにたくさんの人間がいる、これは生まれて初めての経験だ。
俺たちの時代では、人間は、とっくの昔にいなくなっていて、ケモミミの仲間たち、それも限られた仲間たちとだけ、関わっていたから。
男の子「わーっ!本物のケモミミだ!」
小学生くらいの男の子が、俺の耳【柴犬の耳】を、さわっていた。その男の子は柴犬の耳のかぶりものをかぶっていた。よく見ると、これはかぶりものなんだ。
すると、同級生らしい女の子たちも。彼女たちは、ネコミミのかぶりものをかぶっていた。
女の子「わーい!本物のケモミミだ!柴犬もいる、ネコミミもいるよ。」
すると、たちまち、警察官やら、マスコミ関係者やらが、集まってきた。
記者「おい!あれが昨晩、突然現れたというケモミミたちか?」
そして、あれよあれよという間に、有名人になった俺たちは、これまでの経緯を説明するべく、記者会見を開くことになった。
そんな中、今度は女子アナが、俺に話しかけてきた。
女子アナ「あなたたちが噂の、本物のケモミミさんですね。よかったら、記者会見など開きませんか?」
記者会見か、これは大変なことになったぞ。
と、うろたえていてもしょうがない。他のメンバーたちにも急遽、連絡を取り、記者会見に向けての心の準備をすることにした。
というわけで、『オールジャンルゲームス』は、いったん後回しとなった。記者会見の後に、好きなだけプレイしてくれ、ということになった。
そして、記者会見の場となる。
女子アナ「えー、ただいまより、本物のケモミミの皆さんによる、記者会見を始めたいと思います。」
新聞社、テレビ局、それからネットテレビの人たちも集まり、テレビカメラも動いている中で、記者会見というものは行われる。
俺たち8人は、まずは一列に並びご挨拶。
一斉にカメラのフラッシュを浴びる。まぶしい。
なるほど、こうして写真というものを撮影するのか。
「それでは、これより記者会見を始めさせていただきます。」
目の前の機械に口を近づけて、声を発すると、部屋中に響き渡る声が出る。なるほど、これがマイクというものなのか。
そして俺たちは、これまでの一部始終について語る。
記者「すると、あなた方はその第三次世界大戦を事前に阻止するために、この時代までやって来たと?そうおっしゃるのですか?」
「はい。タイムマシンに乗って、今から約8000年後の未来から。」
一同どよめく。その後も記者との質疑応答が続いた。
第三次世界大戦を阻止すること、そのためにはあなた方メディアの力も必要だということなどを語った。
一方で、過去の時代を救うことで、未来の時代にもメリットをもたらすとも、考えていた。
過去の時代について、もっといろんなことを知ることができるとか、未来は今よりも良くなることにつながる、来世に向けた準備、投資であると。
さて、堅苦しい挨拶も終わったことだし、あとは今までの思い出を振り返りながら、気ままにVRMMOのゲームでもやりながら過ごしていくとするかな。
その前に、無事に2024年までたどり着きましたということと、その後に無事に帰還しましたよということを、報告しておかなければ。
ところが、なんとここで大問題が発生したのだった。
「あれっ?おい、どうしたんだ!?いくらやっても、動かないぞ。」
なんと、タイムマシンが故障してしまった。
「うわあああ!なんてことだ!こんなことになるなんて!」
これでは、未来の時代に帰れない。なんということだ。否応なしに、この2024年に留まることになってしまったのだ。
ガンツが言った。
「おいおいおい、だから言わんこっちゃない。こういうことになると思ってたんだよ、俺もそうだが、みんなも、内心は思ってたんだよ。」
そうなると、宿泊先、いや当面の住居となる居住スペースを探さないといけなくなる。
しかし、どこにそんなスペースがあるのか?
と、そこにあの人物が現れたのだった。
「あのー、もし良ければ、私の経営する不動産会社が所有するマンションを使うというのは、いかがでしょうか。」
というわけで、2024年にそのまま留まることになってしまった我々だったが、ユイちゃんとホース君などは、なぜか喜んでいた。
ガンツはしかめっ面。タカヤスは表情を変えず。
アイラ、ミム、マインは、こうなったらしょうがない、過ぎたことは仕方がない、前向きに行こう、といった感じだ。
『ケモミミ祭』主催者は、なんと不動産会社の社長で、マンションを所有していると聞き、そのマンションの部屋を借りて、新たな生活を始めることになったというところまでが、今回の話。
続きはまた次回。




