序章
転生したら、ケモミミだった。
西暦20XX年、世界は核の炎に包まれた。
どこかの国の、馬鹿な指導者が、核のボタンを押したんだ。
そのせいで、全ての文明は失われ、さらにその後、約8000年もの間、空白の時が続いた。
文明は、秩序は崩壊し、世は暴力が支配することになった。
この核戦争が、第三次世界大戦だと、大方の人々は思うだろう。しかし、第三次世界大戦は、国家による戦争ではなく、個人による殺し合いの段階に入った。
生き残った人々は、些細な理由で殺し合う。
そして、その殺し合いで生き残った、最後の一人が向かった先は、世界破滅時計の場所。
「やったぞ、俺が最後の一人として生き残ったんだ、世界破滅時計を0分に合わせたんだ、
ぐふっ!」
世界破滅時計の針を、0分に合わせた。その瞬間に、息絶えた。
それから、かれこれ1万年くらい経った。人間は、第三次世界大戦で滅び、代わって人間に飼われていたペットや家畜が、人間型の種族に進化し、地球を支配していた。
それが、ケモミミ族となる。ケモミミ族とは、見た目は人間と変わらないが、耳だけがケモノの耳という者たちだ。
文化水準は、核戦争の直後にはまだ高層ビルの残骸などが残っていたが、やがてそれらは過去の遺跡と化し、現代文明の発展とともに進歩した技術は忘れ去られ、西洋中世風の世界となっていった。
俺が今回の主人公、ケモミミ族のアイン。ケモミミ族の中でも、柴犬族と呼ばれる種族だ。
ケモミミ族といっても、いろんな種類がいて、その中の一つの柴犬族なんだ。
ケモミミ族の種類
柴犬族
ネコミミ族 なぜかネコミミ族はメスだけなんだ。
ウサミミ族
ラブラドールレトリバー族
【略して、レトリバー族】
チワワ族
オオカミ族
キツネ耳族
他にも、いろんな種類がいるが、主なものは上記の通りだ。
それにしても、1万年前には死の灰が降り注いだなんて思えないほど、美しい光景だ。
皮肉なもので、旧人類の文明がこのまま続いていたら、汚染はもっと深刻になる一方だったそうだと、学校の先生から聞いたことがある。
歴史の授業は、特に熱心に教えられる。1万年前の世界大戦のことも。
それから、当時の人間の世界では、多頭飼育崩壊が問題視されていたことや、
それから、それから、ボサボサの毛むくじゃらのまま放置されていたような犬たちに、トリミングを行って、何頭もの犬たちを救ってくれていた、アイダ・マサノリという人物がいたことや、
心ない飼い主やブリーダーなどがいた一方で、保護犬、保護猫活動、預かりボランティアや、譲渡会などの活動に取り組んでいたような人たちがいたことなども、学校の歴史の授業で習ったことがある。
そんな中で、核のボタンを押した指導者たちもいたということ。
さて、今僕らはどんな生活環境なのかというと、いわゆる西洋中世風の生活をしている。
これから、一緒に生活している仲間たちを紹介するよ。
友達紹介
ガンツ 熊耳族 気は優しくて力持ち
アイラ ネコミミ族 俺の恋人 ヒロイン
タカヤス オオカミ族 顔もオオカミだが、人間と同じように2足歩行で、あとは人間と同じ
ミム キツネ耳族 キツネダンスが得意な女の子
ユイ 鹿角族 シカのツノが頭に生えている女の子
馬耳族のホースと恋仲。名付けて『馬鹿ップル』
ホース 馬耳族 人の意見や批評を全く気にかけないで、自分で決めてしまう傾向がある。
鹿角族のユイと恋仲。名付けて『馬鹿ップル』
マイン 鶴族 鶴が人間型の種族に進化した。
スレンダーで、胸だけデカい、セクシーな美女
そして、僕らの学校の先生だ。
オブリガード先生 羊人族
ヒツジの顔をした、この世界のことを何でも知っている、物知りな先生。
次に、ケモミミ族の生活環境について。
食事は、もともと肉食、雑食の者は肉などを食べ、草食の者は草や野菜を食べる。
ちなみに犬は雑食で、だから柴犬族の俺も雑食で、肉料理も食べるが、米やパン、野菜なども食べる。
一方で、ネコ科の動物は完全に肉食で、だから
ネコミミ族の彼女もまた完全に肉食で、肉しか食べないと思っていたが、よかった、俺と同じ雑食で、肉料理も食べるが、米やパン、野菜なども食べる。
ただし、恋愛に関してはネコミミ族は肉食のようであるとのこと。
先の戦争で貨幣制度も崩壊してしまったので、基本的には自給自足、物々交換の世界。
ただし、肉食獣のケモミミは、狩猟、採取を行う。
その一方で、家畜となる食用の牛、豚、鶏などは、人間と同様に飼育を行っている。
先の戦争から10万年ほど経過しないと、草木も生えないというほど荒廃してしまったものを、1万年やそこらで、農業や畜産が行えるほどまでになったという。
もっとも、202X年から数えて約1万年ほど経過している時代ではあるが、地名なども変わってしまっているため、前の時代と同じ地名は残っていないという。
交通網も破壊され、そもそも自分たちの住んでいる町からさえ、外に出たことはないという。
そんな世界で、気ままに過ごしていたアインたちだったが、あることへの好奇心をきっかけにして、やがて世界を巻き込む、壮大な物語の渦へと飲み込まれていくことになる。