戦う時も必要です
「落ち着いてくださいよ」
僕は、武器に手をかけかけていた相手を止める。
「どうした、おじけづいたのか?」
相手が僕に話しかけてきた。
「戦いは最後の手段です。まずは話し合いましょうよ」
「話し合いねえ……俺と交渉するってことか?」
相手が乗ってきた。
「そうです。交渉は妥協案を見出すことでしょう?だから――」
「交渉は互いに対等であることが条件でもあるよな」
「ぐっ……」
痛いところを突かれ、押し黙る僕。
「あのなあ、一つ聞くが」
「はい」
「武器構えて襲い掛かろうとしてる相手に話し合いが通じると思ってんのか?」
「……言われてみれば」
僕は納得しかける。
「だよな。戦うときは戦おうぜ」
「それが世の中ってやつですか?」
「そうだ」
それでも僕はためらう。
「ちなみに今のも授業料になるから、金額に上乗せな」
「マジすか」
「大負けに負けてこんなもんでどうだ?」
相手が示した金額は僕の所持金全額だった。
(そういうスキルでもあるんだろうか)
少し僕は考える。
(払うか戦うか)
負けても24時間能力値が半分になるだけなのだけど、痛いのは苦手だ。
どうしようか考えていると、町に向かって歩いている人を見かけた。
長弓に矢筒、曲刀、盾、皮鎧と冒険者っぽいスタイルで町に向かっている。
「おいおい。少しは周囲を警戒しとけ」
目の前にいる僕の相手の人がつぶやく。
冒険者っぽい人が町から出てきた人とすれ違う。
すれ違った人の名前は赤く染まっていた。
次の瞬間、冒険者っぽい人の姿が消えていく。
「ログアウト?」
「ちょっと違うな。ひとまずは、ここにいろよ」
目の前の相手の人は、僕にそういうと駆け出していく。
「ほいっと」
目の前の人が冒険者っぽい人とすれ違った人が消えていく。
「えーと……」
何がどうしてどうなったか理解しようとしていると相手の人が帰ってきた。
「今のがプレイヤーキラーっていう問答無用でプレイヤーを倒す悪い奴だ」