クールな女教師としたらハマっちゃった件〜陰キャの俺と何をしたかなんてもう分かるよな
決してそういう事をした訳ではないです。
誤字があるかもしれませんが、見ていただけたら嬉しいです。
「なあ、今日カラオケ行かね?」
「いいね、他誰誘う?」
四時間目が終わって昼休みに、そんな声が聞こえてくる。
友達と仲良くくだらない話をして笑い合ったり、カップルは「今日デートしない?」と堂々と話している。
「……はぁ」
誰にも聞かれることがないであろうため息をつき、松本優馬というどこにでもいそうな名前の俺は、教室で机に突っ伏してイヤホンで音楽を聞く。
俺は簡単に言えば陰キャを極めてしまったのだ。中学の時まではまだマシだったのだが、髪の毛の手入れも面倒くさくなって今ではボサボサ。
目まで隠れてしまって見た目がもう完全に陰キャ。この二年一組で俺が陰キャな事はみんなの共通認識である。ただ、コミュ障ではなくて、普通に話せるけど面倒くさくて誰とも話していないだけ。それだけは間違えんなよ?
「……眠い」
俺は一人暮らしをしていて、今はアパートに住んでいる。友達がいないせいで遊びに行く事が殆どなく、部屋でゲーム三昧だ。今日だって夜遅くまでゲームをしていたので、少しだけ眠くなってきている。
眠気覚ましに音ゲーをしたい気分だが、ここでそんな事をして誰かに見られれば、「うわーまたオタクがオタクのゲームしてるよ」とか「へえ〜あんたこういうのが好きなんだ。キモっ」とか言われちゃうんだよね。
「席について」
昼休みが終わって先生が入ってくる。他の席で喋っていた人もこの人が来ればすぐに指示に従う。
現代文の担当である彼女の名前は山沢香織といい、セミロングの黒髪で、おとなしいクール系美女。少し身長は低いが、スタイルも出るとこは出てる女子の理想と言ってもいい。
しかし、クール過ぎて表情が殆ど変わらず、質問をされても答えはしてくれるものの淡々と質問の答えを返すだけ。
授業以外では生徒とほとんど話さず、今年に就任してきて二週間も経たずに、学校内では氷の女帝なんてあだ名がつけられた。それは二ヶ月経った今でも変わらず、誰も反抗しようとはしない。
「教科書三十六ページを開いて」
しかし、個人的に俺は山沢先生が気に入っていた。別にドMというわけではなく、単純に授業が分かりやすくていい先生だと思っているだけだ。
(スポーツしない俺はせめて成績は良くないとな)
一応俺はテストの点数は学年で十位以内には入っている。
まあ俺がこっそり順位表見に行ったら、「松本優馬って誰だよ」と言われる程に影は薄いがな。
さて……、今日も存在感を消して授業を受けますかな。
◆
全ての授業が終わり、すぐに俺は家に帰る準備をする。どうせ遊びに誘ってくる友達もいないのだから、真っ直ぐ家に帰るしかない。……と、思っていたのは甘かった。
「松本君、後で職員室に来て」
「え……あ、はい」
担任でもある山沢先生に呼ばれてしまった。注目されるのはあまり好きではない為、ここで名前を呼ばれるだけでも嫌な気分になる。
HRが終わると、俺は職員室に向かう。職員室も先生に注目されるから嫌なんだけどな……。
「失礼します」
扉をノックして中に入ると、先に来ていた山沢先生はすでに自分の席に座って待ち構えていた。
「あの……要件は何でしょうか」
「松本君、あなたまだ私の授業の宿題出してないけど、いつ出すの?」
「え……あー……」
なんの事か一瞬分からず、記憶を探ってみるとあっさり思い出す。今日までに提出だった宿題のプリントがあったが、今週はゲームばっかりしていた俺はすっかり忘れていた。
「……すみません、忘れていました」
言い訳したところで意味はないので、俺ははっきりと白状した。
「……何で忘れていたの?」
「へ?」
凄みのある表情で山沢先生は問いかけてきた。無表情に見えても結構怒ってそうなのが分かる。
これはやばいよ。完全に起こってるパターンだよ。俺はもうすぐ氷の女帝に永久凍結されちゃうよ。
「……」
「……」
「……怒るから、早く言って」
「そこは怒らないんじゃないんですか?」
思わずツッコんでしまった。ここは怒らないからと言うのが定番の筈なんだが……やはりこの先生に常識は通用しないのか。
「それは怒るに決まっている。私が出した宿題を忘れるなんて許せないもの」
「ごもっともでございます」
「で、どうして忘れたの?」
ここははっきりと言うべきなのか……いや新作のゲームに夢中で忘れてましたなんて言ったら本当に殺されかねない。
ここは適当に嘘をついておくことにした。
「……実は」
「キョロキョロしすぎ。嘘ね。早く本当の事を言って」
「……新作のゲームに夢中になって忘れてました」
この人にはお見通しだった。それにギロッと睨まれて逆らえるわけがない。ちょっと興奮しかけたのは俺だけの秘密だ。
「……次はないからね。プリントも今渡すから、休みだけど明日学校に持ってきて」
「えー……それは……分かりましたすみません」
それはちょっと嫌と言おうとしたか、寒気がする程に睨まれてしまった為、謝罪してすぐに職員室を後にする。
「……はあ……休みに学校行くとかどんな拷問だよ。まあ本当は今回のプリントやたら難しくて分からない問題があったから、やる気なくしてゲームしてたんだけど」
そう、だからこれは俺が分からない問題を出した山沢先生が悪いのだ。
うん、俺悪くない。
「さーて、取り敢えず帰ってゲームして夜にプリントやろ」
楽観視している俺は早く新作の続きがしたいがために早歩きでアパートの部屋に帰った。
「はあ……疲れた。よし、すぐにやろう」
ゲーム機にソフトは既に入っている為、電源を押して起動させる。
今からやるゲームはギャルゲーである『女教師を惚れさせろ ラブっとギャルゲー』という恥ずかしいタイトルのゲームだ。
決して山沢先生を見てこのゲームを買ったのではなく、たまたま押してるゲーム開発会社の新作がこれなのでプレーしているだけだ。FPSゲームだってゴリオカートだってやってるし、俺はゲーム全般好きだ。
アダルトゲームだけは何か怖くてやってない。なんとなく怖いんだよ。誰か分かんないかな。
なんだかんだで既にゲームをしている時間は二時間を超えている。
「むむむ……この選択肢は……」
こんな感じでかなり没頭してしまう為、いつの間にかこんな時間に、って事がよくある。
そして区切りがついたところで切り上げ、お腹が空いたので何か作ろうかと冷蔵庫の中を見る。
「……何もない! なんてこった……」
スーパーで買い物をするのを忘れていた。仕方なく俺は財布を持って近くのコンビニに向かう。
幸い米はまだ残っているので、卵だけ買って帰ってオムライスでも作る事にする。
「はぁ……コンビニ面倒くさいな。知り合いいたら嫌だな」
なんて思いながらコンビニに向かい、結局誰とも会うことなく卵を買って帰宅する。
「オムライス〜……ん?」
アパートの前まで来たのだが、隣の部屋の扉の前に誰かが座っている。
「……えっ」
よく見てみると、そこにいたのはスーツ姿の山沢先生だった。
かなり顔が赤くなっていて、恐らくお酒でも飲んでいたのだろう。それは分かったのだが、なぜ俺の部屋が隣なのだろうか。今までこのアパートで一度も姿を見た事がないのだが?
取り敢えず気になった俺は声をかけてみる事にした。
「あの……山沢先生ですよね」
「ん……松本君、こんばんは」
酒でふわふわしている山沢先生は、いつもの冷たい雰囲気が消えてかなり話しやすい感じだ。
これだと俺的に酒を飲みながら授業してほしい……駄目ですね、はい。
「どうしたんですか? 部屋に入らないんですか?」
「……鍵を無くしたの。ちょっとムカついた事があって仕事終わりにお酒を飲んで紛らわせようとしたけど……ここに帰ってきたら無くなってた」
山沢先生ならこうなった時点で大家さんには電話している筈。それでもここにいるという事は、何かしらの原因で電話が繋がらないのだろう。
こんなところに女性を放っておくのはまずいので、
「山沢先生、俺の部屋来ますか? というか取り敢えず水飲んでください。かなり飲んだ後ですよね」
「でも……」
「いいですから、ほら早く」
「あっ……ごめんなさい、お邪魔させてもらうわね」
山沢先生の腕を掴んで立ち上がらせて、俺の部屋に入れる。
「そこに座ってください」
俺は山沢先生をソファーに座らせ、コップに水を入れて先生の前に置いた。
山沢先生も水を飲みたかったのか、すぐにコップに手を出してゴクゴクと飲み干した。
「んっ……ふぅ。ありがとう、少し落ち着いた」
「良かったです。あの、俺先生が隣に住んでるの知らなかったんですけど」
「私は朝早く部屋を出るし、私が帰ってくる時間は七時ぐらいだけど、君に一度も会ってない」
「……そりゃ知らない訳ですよね。俺その時間絶対外でないんで」
今の時刻も既に九時を回っていて、今日は偶々冷蔵庫に何もなかった。
いつもなら忘れずにスーパーに寄るのだが、新作のゲームが頭から離れなくて忘れていたのだ。
「私は知っていたけど……名簿に住所も載っているから」
「……そうですか。まあ取り敢えずゆっくりしててください。俺はまだ晩御飯食べてないので作って食べますから」
そう言うと何故か山沢先生の顔がピクッと反応した。
それでも俺は気にせずに料理をする。オムライスなんて結構簡単だ。ご飯炒めてケチャップと塩胡椒を少しだけ入れる。
ご飯を皿に盛り付けて、卵を焼く。固まる前にかき混ぜていい感じになるとフライパンの接着を剥がして丸める。
オムレツをご飯の上に乗せてぱかっと割れば簡単オムライスの完成だ。
「ふぅ……」
ソファーの前にあるテーブルの前に座り、
「いただきます」
一口食べるとトロトロの卵とケチャップライスが絶妙に絡まり合って最高に美味い。
やっぱり自分で作る料理の味は何か違う。料理好きでよかった。
「……」
「……ん? どうしたんですか?」
山沢先生は俺を、というか俺の前にあるオムライスを見て物欲しそうな目をしている。
目の前で食べられると食べたくなるのは少し分かる。
「食べますか?」
「……いいの?」
「食べられるのであればどうぞ」
「お酒は一杯しか飲んでないし、料理もあんまり頼んでなかったから少しお腹空いてたの。……ごめんなさい、少しだけもらうわ」
何飲んだのか知らないけど、一杯であんだけ顔赤くなってふらつくとかとかどんだけ酒弱いんだよ。
なんて事を思っているうちに、オムライスは半分まで減っていた。
「……なんでやねん」
思わず関西弁でツッコんでしまった……。
「……美味しかったから」
恥ずかしそうに言う今の先生は滅茶苦茶可愛かった! もっと食べても……駄目駄目、俺の分無くなる。
「松本君は料理が出来るのね……」
「え? あー……もしかして……」
「……私は料理出来ない。いつもスーパーの惣菜かコンビニ弁当よ。悪い?」
やはり酒でまだ酔っているのか、ムッとした表情がいつもとは違ってかなり新鮮で可愛く見える。
「いえ、そんな事はないですけど」
「……何か悔しいわ」
「あはは……」
その後は特に会話もなく食事を終え、俺は先に脱衣所に向かう。
今は七月でかなり暑いため、風呂には浸からずシャワーだけを浴びて、Tシャツ短パンで脱衣所を出る。
髪は面倒くさいので乾かさない。髪が顔にかかると暑い為、風呂から出た後は髪をオールバックにしている。
「え……?」
「え、何ですか、見てはいけないもの見たような顔してますけど」
もしかして俺の顔がキモすぎたのか? えー……そこまでキモくはない筈なんだけどなぁ。
「……おーい、大丈夫ですか?」
「え、あ、いや、その、ごめんなさい」
山沢先生は顔を赤くして俺の顔から目を逸らす。
……この反応はキモいとかじゃないな。どちらかというと思ったよりキモくなくて驚いた的な感じだろ。
それよりもだ。このまま女性が風呂に入らない訳にもいかない。シャワーだけでも浴びさせたほうがいいだろう。
時間もあれから結構経っている為、倒れるなんて事はない筈だ。
「あー……その、山沢先生、シャワー浴びますか?」
「いや……流石にそこまでしてもらうつもりは無いわ」
「けど夏ですし汗かいてるでしょ? 近くに銭湯なんてありませんし……。いや、別に覗くつもりとか無いですからね? 女性が汗かいた日にシャワーも浴びないのは嫌だろうってだけで……」
山沢先生はそれでもまだ申し訳無さそうにしている。
しかも、ここで更に山沢先生が気付いたことがある。
「……それに、服が無いわ」
「Oh……」
バスタオル一枚の山沢先生……想像しただけでエロい!
「……ジャージはありますけど。エアコンもつけてますし、先生は長袖でも熱くないですか?」
「そんなに暑がりではないけれど……襲われそうで怖いわ」
「しませんよ。俺捕まるじゃないですか」
一応冗談のつもりだろう。俺から見ても山沢先生は確かに襲いたくなるような女性ではあるが、ここで手を出す奴なんていない。
「──あっ、下着はどうしましょうか」
「……仕方ないわ。近くにコンビニがあるから買いに行きましょう」
……あれ、何か言い方がおかしくないか? まるで俺も一緒に行くみたいな言い方だぞ?
「まだ私ちょっとふらつくから、付き添うだけお願いしてもいい?」
「あ、はい……分かりました」
山沢先生は立ち上がって玄関に向かおうとするが、まだ完全に酔いが覚めていない為、ふらふらと足元がおぼつかない。
マジで泣き上戸とか暴れる人じゃなくてよかった。というかそれは流石に想像できないがな。
「ほら、捕まってください」
「ん……ごめんなさい、私が鍵を落とさなければこんな事にならなかったのにね」
「そんな事はいいですから。早く行きましょう」
俺と山沢先生はゆっくりとコンビニに歩いて行き、流石に下着を買うところを見ておくのは気まずい為、俺は外で待っていた。
山沢先生が下着を買い終えると、また俺は体を支えながらアパートに帰る。
ちなみに行きも帰りも山沢先生から少しの酒の臭さと体の匂いがして取り敢えずやばかったとだけ言っておこう。
部屋に戻ると、山沢先生はシャワーを浴びに向かった。
この時間の間にプリントでもやろうかと思ったが、シャワーの音がやたら鮮明に聞こえてくる気がして全く集中出来ない。
「……覗いてみようかな」
少しだけ興味と下心が湧いてしまった俺だが、すぐに切り替えてプリントの問題に取り組む。
二十分程して、山沢先生は脱衣所俺のジャージを着て出てきた。
自分のジャージを担任でしかも女教師が着ていると思うと、何だか変な気分になってくる。
(いや落ち着け馬鹿野郎)
自分に言い聞かせて興奮を鎮める。山沢先生は火照った体でこちらに近付いてきて、俺の隣りに座った。
「……まだやってなかったの」
「……すみません、分からない問題があるので」
「……どの問題? ……ああ、それはね……」
俺が分からない問題を指すと、山沢先生はとても丁寧に教えてくれた。結構酔いも覚めてきたのか、ふんわりとした感じがなくなってきている。
「──終わったぁ。ありがとうございました。丁寧に教えてもらっちゃって」
「聞きに来ればいつでも教えるわ。それに、部屋にいさせてもらってるから。プリントはもらっておく」
再び申し訳無さそうにする山沢先生。別にいいと何度も言っているのに……この人は責任感も強い人なのだろう。
「ありがとうございます。……さて、ゲームの時間だ」
これだけは山沢先生がいてもいなくても変わらない。なんだかんだで時刻は十二時を過ぎて次の日になっているが、俺の場合はここからが本番でもある。深夜にするゲームの方が集中出来るのだ。
「ゲーム……やったことないわ」
山沢先生がポツリと呟いたのを聞いて、俺は驚かずにはいられなかった。この時代でゲームをした事がない人がいるとは思わなかったからだ。
「え、ゲームした事ないんですか?」
「ええ、そんな事をするより勉強してる方がいいもの」
「……じゃあやってみますか? 簡単なゲームもありますし」
すると、案外乗り気の山沢先生は「何をするの?」と首を傾げて聞いてくる。
「そうですね……レースゲームか、パズルゲーム……。あとはFPSゲームですかね。……あ、FPSゲームは簡単に言えば銃拾って人を殺す、最後まで生き残ったら勝ちってゲームです」
「FPSゲーム」
俺が話し終わってすぐに山沢先生はFPSゲームを選択した。
「な、何でFPSゲームなんですか? 正直言ってあんまり女性がやるゲームじゃないですよ?」
「……同期の教師に嫌味を言われたの。愛想が悪いお前はどうせこのまま結婚出来ないって」
「……」
いや就任してきて三ヶ月でそんな事言うとか性格悪すぎだろ。それ言ったのバレたらそいつがモテなくなる言葉じゃん。
「ストレス溜まってるから敵を全部に見立ててやっちゃおうかなって」
無表情で滅茶苦茶怖い事言うなこの人!? なんか本気で殺したいとか思っちゃってそうなんだけど……。
とまあ、こうして山沢先生がFPSゲームをしたいと言うのでやらせてみたら、単純にセンスがあるのか殺したい欲故の執念なのか結構上手かった。
俺とタッグマッチして普通に一位になれたからな。
「これ、面白いわね」
「山沢先生普通に上手ですよ。驚きました」
「あいつだと思ってやってみたら楽しいわ」
あ、執念からですね分かります。
しかしこうして見てると、普段クールで何でもできそうな山沢先生が、お酒に弱くていざ飲んでみると雰囲気が少し変わる。
料理が出来ない事も分かり、いつもの山沢先生とのギャップが凄い。
「ねえ……もう一回しよ」
隣りに座っている山沢先生は、こちらに寄ってきながら上目遣いで俺の顔を見てきた。
「わ、分かりました。あ、次は俺と対戦しましょうか」
「分かった。……負けないから」
今まで遠くから見ていた山沢先生の色んな一面が今日だけで沢山見れてしまった。
こんな先生の事を俺だけが知っている。凄く特別な気分になった。
◆
あれから半年が経ち、正月は実家に帰って冬休みが終わる一日前にアパートに向かっていた。
「……あ」
夕方になってアパートが見えてくると、俺の部屋の電気がついていた。
「今日帰るとは言ったけど何で部屋にいるんだ?」
合鍵は渡しているものの、何故俺よりも先に部屋にいるのか。
それは俺が玄関の扉を開けた先に答えがあった。
「ねえ……これは何」
ソファーに座っていた香織先生の前にある箱。俺はその存在を一瞬にして思い出す。
「……何だと」
俺が隠しておいたギャルゲーコレクションの場所がバレているだと!?
何故だ! どうして見つかったんだ!?
「部屋を掃除してあげようと思ったら……こんなゲーム隠してたの?」
「それはありがとうだけど……いや、ゲームはね、捨てようとはしたんですよ。でも捨てきれなくて……」
俺のコレクションを簡単に捨てられる訳ないじゃないか! 彼女欲しいと密かに思っていた俺の心の癒やしだったんだ!
「……」
香織先生は無表情のまま立ち上がってこちらに向かってくる。
恐らく俺はビンタを両頬にくらってリスみたいに顔がぷくっと腫れてしまうのだろう。
「……私じゃ満足出来ない?」
香織先生はいきなり俺に抱き着いてきて、耳元で囁いた。
「そんな訳ないじゃないですか」
「……私もこれをやる。一緒にやってどっちがあなたを満足させられるか分からせてあげる」
悪巧みをしているような顔で俺の腕を引っ張ってソファーに座らされる。
「は、はは……」
ああ……先生はゲームと俺にハマり、俺は先生にすっかりハマって抜け出せなくなってしまったようだ。