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後悔しても後悔しても

幼馴染編、そろそろ終わります。






私が先輩と暮らして数週間。


毎日が幸せだった。


嫌な事は考えなくて済むし、嫌な思いもしなくて済む。

大好きで、大好きで大好きで大好きな。

愛し愛されの関係を築いてくれる私だけの王子様は、私の心の隙間を全て埋めてくれた。


毎日がキラキラしていた。


偶に私達の騎士の人が車でご飯を持ってきてくれるから、私達は外に出なくても良かった。


テレビも見れないし、スマホも先輩が危ないから駄目って言って何処かに持って行っちゃったけど……駄目な事をしては駄目、という考えが何故か私の中にあって、私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


先輩の言う事を聞いていれば、それだけで私は幸せだから。


こんな毎日が続いて行くんだ、と思っていた。





















 「時雨ぇ!!絶対!絶対に君に会いに行くから!待っていてくれぇ!!!」


「先輩……!いや、置いていかないで!離して!先輩!先輩!独りにしないでぇ……!いやぁ、、、」



私達の仲は青い服を来た人達と、怖い顔をした人たちによって引き裂かれた。


先輩は何処か、ここよりもずっとずっと遠い場所に行かなくちゃいけなくて。

私は家、という()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に連れていかれた。



私はこの家、という場所へと、誰かに監禁されてしまった。


何度も色んな()()()が来た。


怖い女の人、怖い男の人、優しそうな顔をした怖い男の子、冷たい表情の怖い女の子、………そして何故か凄く嫌な顔の、何故か見ていると胸がきゅっと締め付けられる、何故か怖くない、少し怖い男の子。


色んな人が私に話しかけてきた。


でも私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


だから私は誰とも話さなかった。


誰かが私に触ろうとした。


でも私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



悲しそうな顔をした怖い人が、『その内分かってくる』と言ってから、私に触ろうとする人はいなくなった。


私は何ヶ月もの間、『家』と言う私と先輩の家じゃない家の、何故か少しだけ安心する部屋の、何故か少しだけ落ち着く布団の中にいた。


ご飯はあまり食べたくなかった。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


でもお腹が空いた。


だから私はこっそり、少しずつだけどご飯を食べた。


偶に吐いちゃったりしたけど、吐いた物は次の日には無くなっていた。


騎士の人のご飯以外は、食べても、吐いても消えちゃうんだ!


そう思って、私はご飯をたくさん食べた。


食べても消えるから、いくら食べても食べてないんだ!


だからお腹は空かなくなった。







悲しそうな顔をした怖い女の人が、私にスマホを渡してきた。


私のスマホじゃなかったけど、そのスマホは私の暇な時間を潰してくれた。


色んな動画を見た。


色んな写真を見た。


色んなゲームをした。


色んなアニメを見た。


色んな曲を聴いた。


映画も見た。


本もスマホで読んだ。


先輩は駄目、って言っていたけど、何故か。



何故か分からないけど、………何故か、私はスマホを見ていた。



だから気づいた。



















私は嘔吐した。


何度も何度も嘔吐した。


吐いても吐いても吐いても、私の嘔吐は止まらない。


胃の中の物が全部無くなっても、胃液だけになっても吐いた。


吐くものが無くなっても、私の中の嘔吐感は無くならなかった。


気持ちが悪い


頭が回る


視界がおかしい


耳が遠い


体が痺れる


体が寒い


私は布団に籠ったまま、スマホを見ている事しか出来なくなった。


偶に弟が来て『スマホのモバイルバッテリー』を置いていく。


でも私に顔を見せない。

私も顔を見せない。


見せられるわけがない。


それでもお腹は空く。


ご飯を食べる事は止められない。


私はどうしようもなく、生きている。


凄く死にたいのに、何故か体は生きようとしている。


その理由は直ぐに分かった。



















弟にスマホで買ってきて貰うように頼んだ『妊娠検査薬』は陽性。


私は先輩の子供をお腹に宿していた。


先輩と暮らしていた日々から逆算する。


駄目だ。


どうにもならない。



もしも私が、先輩に着いて行かなかったら。


もしも私が、お母さん達に触られても反抗しなかったら。


気づけていたのかもしれない。


全ては終わった事だけど。


だから私の体は生きようとしていた。

私の心と頭は私の体から異物を排除する為に嘔吐をさせたけど、私の体は私の為に栄養を必要としていて。


それで私は生きていた。


私は()()()()()()()()()()()()()


()()()()()()()()()()()()()()()()()()



私のお腹は膨れている。

いくら食べてもここまで大きくならないくらい。

私は数ヶ月ぶりに自分の部屋を出た。


部屋の外は怖かったけど。


久しぶりの我が家は変わっている気がしたけど。


でも


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()











  



病院に行って検査をする。


検査をするまでも無かったけど、堕胎は不可能。

かと言って出産も命の危険があった。



両親は……というよりお父さんは、私の為にアパートを契約した。

少しのお金と、住む場所と最低限の荷物をくれた。

お母さんは何も言わない。



弟はとても怒ってお父さんと殴り合いな喧嘩をしていたけど、私がごめんね、と言うと泣きながら自室へと走っていった。




学校は既に留年扱いで、退学扱いになっていなかったのは、佐藤先生とその他の二人の先生が止めてくれていた。


だけど私のお父さんは私に『高校へもう一度通う資格も、時間も、金も無い』と言って、私の退学届けを提出させた。



お父さんは私の事を見るのも嫌だと言って、私に自分の足で退学届けを出すように、と言った。



この頃にはもう、数週間アパートで生活をしていた。



()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


お母さんも弟も、お父さんから手伝う事を禁止されていて、私は自分の足で、お腹の子が危なくならないようにして学校へと向かった。


そして佐藤先生と担任の先生に挨拶をして、私は退学届けを提出した。


佐藤先生は最後まで受理してくれなかったが、私に通う意思が無いと認めて、残念そうな顔をして退学届けを受理してくれた。


送ってくれると言ってくれたけど、私は歩いて帰りたかった。


その優しさに甘えたら多分、もう動けないから。


そして私はアパートへと戻っていった。










私は今、産婦人科のベッドでお隣さんと母子手帳を見ている。



「どうだい?順序はめちゃくちゃだし、話は聞いていて胸糞悪い話だけど……アンタの息子の、生まれた証だよ、それは。」


「…………これが、母子手帳。」



私の命を分けて産んだ子供。


私を選んでくれた、私を守ってくれた、()()()()()()()()()()()


その証明が私の手の中にあった。



「………親族でも無いアタシが立会人で悪いね、でもアンタの両親や家族は誰も来ちゃいないんだ。」


「………えぇ。知ってます。」


「え?」


「私、両親と血が繋がって無いんです。」


「………。」


「昨日の朝、最後に学校に行く直前に言われました。………母の連れ子で、しかも母の昔の恋人の連れ子だった、と。」


「………だとしても、一度引き取った子なら最後まで面倒を見るのが筋、ってもんだと思うけどね、アタシは。」


「父はずっと、私の事を嫌いだったんです。血が繋がった弟が生まれてからは特に。」


「………。」


「…………何が駄目だったんですかね?お父さんの子供として立派になれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「………。」


「やっぱり、血の繋がりって大事なんですかね?だって私、嫌な思いをして出来た筈の息子の事を、とても大切に思っている。()()()()()()


「血の繋がりだけが全てって訳じゃない。………でも、お腹を痛めて産んだ我が子は可愛い。それは確かさ。」


「………私、育てていけるのかな。」


「………。」


「へへっ………不安なんです。ずっと間違えてきた私が、赤ちゃんを育てられるのか。お父さんが手切金と言ってくれたお金も少ないし、住んでいる場所もあんなでしょう?赤ちゃんは多分耐えられないと思うし……私も、多分。」



間違えた私の結果がこれだ。


愛されなかった私は、愛されようとして、愛する事ができない人間になった。


せっかくの生まれた命を無駄にする馬鹿な女。


生まれてこなければ良かった。


死んでしまえば良かった。


こんなに苦しい痛みは知りたく無かった。


後悔しても後悔しても、私の後悔は終わらない。


()()()()()()()()()()()()













「姉ちゃん!!!」














そう、声がした。


そして













「やってる?………生きてんじゃん、おひさ。」














もう一つの声がした。





次回


弟、主人公


でます。



コメント、評価待ってます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 騎士(笑)。お花畑の事で。 [気になる点] 青い服の人が来て、つれてかれて、この状況で何で、そういう検査しないか謎ですが? 妊娠云々どころか性病検査とかになりますが。 本人、確保当初お花畑…
[一言] ネグレクトからの、ストーカーの洗脳、誘拐監禁じゃ、情状酌量ありますね。父母ともに、血の繋がりがなければ、何かあれば見棄てられますか。あのクズストーカー監禁者は、どうなっているのか?はなから計…
[気になる点] 主人公の何も気にせず生きていられる環境への嫉妬もあったんですかね? それと主人公は彼女の家庭環境は把握してたんでしょうか?
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