05。
◇◇◇
的当て、輪投げ。
殿下はとても上手くて、結構良い商品を取っていた。
「ルー君、コントロール良いですね。普段の得物は弓ですか?」
「よく言われます。ですが、命中精度を上げるのは攻撃魔法の命中率の上昇に良い訓練になるんです。ですが、私は剣術です。得物は剣でありたい」
「だったら丁度、午後の部が始まるみたいだよ」
「何がですの?」
「勝ち抜き戦だよ。ほら中央広場の噴水の前、剣でも槍でも素手でも良いらしい。登録料払えば誰でも参加出来るよ。12歳以下の部と16歳未満と大人の部。どうする?」
「「やります!」」
お父様は参加登録をしに行った。
『各部門、先着32名で~す!大人部門はそろそろ締め切りで~す!』
「受付、終了しそうですね」
「大丈夫ですよマルセル。エリィ様が行って下さったんです!」
暫くして戻って来たお父様。浮かないお顔をしてらっしゃる。訊くと、
「僕も登録しようとしたんだ。そうしたら、ショーラ伯爵はダメって言われて、何で?って訊いたら『貴方が参加したら皆が楽しめ無い』って。僕も楽しみたいって言ったら『あんた、勝敗の分かりきった、例えばカジノとか。そう言うの見て面白いか?』って。つまらないって答えたら。『英雄さん分かってんじゃん』って」
――――ああ~~~~~~~~~~~。。。
「ビビ君もダメって」
「ああ、騎士ですものね」
「ビビ君それは違うよおー。もし近衛騎士が負けでもしたら、皆不安になるだろう。って」
「なっ!屈辱うぅぅー」
「後の四人は登録出来たよ!」
おい、お父様。私と殿下はいい。何故にマルセルさんとロジールさん?剣も持ったこと無い二人ですよ?
時々バカだわねお父様。
「あーお父様、ロジールさんとマルセr「「頑張ります!」」」
ええー、マジですの?マルセルさんロジールさん。宿の従業員ですのよ!?只の女の子ですのよ!
午後2時から開始ですかー。。。
「最初はマルセルさんの16歳未満の部ですね。決勝は三つの部門が出揃ってから最後にやるんですのね。そろそろ始まりますわ」
あー、ルールで攻撃魔法使っちゃいけない。って書いてあったなあ。やはり学園の生徒さんより、士官学校の制服の人が目立ちますね。そうするとサラお兄様出ない………、あー、居るし、マルセルさんと談笑しているわ。サラお兄様は兎に角、マルセルさん余裕ですの?
『えー、ルールの説明をしま~~~す。
32名での勝ち抜き戦です。競技場は二ヶ所、青い旗のある噴水池東と赤い旗のある噴水の西。先ず、この箱の木札を登録順に引いて貰います。木札は二種類、青色と赤色の木札があります。そして、各々の木札には1~16の数字が書いてあります。参加選手は木札を引いた時点で係員に申告してください。赤青各々16名ですので、8組の一回戦を行います。例えば、赤い木札1と2の参加選手が赤の第一試合。と言うふうになります。勝敗の判定方法ですが、相手が負けを宣言。戦闘不能若しくは、戦意喪失……、判断は審判が行います。各々の競技場は競技線が直径6メートルの円になっています。線の外に出た時点で負け。他、勝敗については各々の審判の判断に任せます。
次に使用する武器防具についてです。全て、この競技大会の運営からの貸し出しになります。持ち込みは禁止です。武器は長剣、短剣、タガー、レイピア、長槍、短槍。全て木製です。重さを本物に合わせていないので軽いと思います。素手での参加選手用のナックル、グローブ、ガントレットもあります。弓、ボウガン、投擲用のナイフ等は仕様不可です。戦斧、3メートルを越える槍、ランスこれら等もありません。次に防具です。革兜は必ず着装です。籠手も用意してありますが、サイズに限りがあります。合わない場合は装備不要です。胸当て、肘当て、膝当て、脛当て、肩当て。防具用の軍用ブーツですが、籠手同様サイズが合わない場合は自前の物で結構ですが、鉄靴、仕込みブーツ等武器になる物は禁止です。それと盾は、数種類の用意があります。先にも言いましたが、革兜は必ず被って下さい。必須です。一応、救護場を噴水北側に用意してありますが、出来るだけ怪我には気を付けて下さい。
次に審判を紹介します。先ず、青旗の主審です。王都ウィスペル冒険者組合の組合長ジャン=ポール・キニスンさん。赤旗は、エリエンス・スィエル・ド・ショーラ伯爵。お二人共、階級金以上の方々です!』
――――ワアアアアアアアァァァァーーーー!!!!!
「お父様ぁ、審判することになってました??」
「いやあー、手紙来てたっけ、そう言えば……、二通」
「二通?」
『副審は組合の職員が二名づつ着きます。では、主審のお二人こちらの壇上へ、お願いします』
「お父様、行ってらっしゃい」
「お、おおう!」
お父様は集まっている大衆を掻き分けて、噴水前の壇上に向かったのですが、途中、主婦集団に捕まっていらっしゃいます。
揉みくちゃになっていますね。
先に壇上に上がった組合長のジャン=ポールさん、固そうな焦げ茶色の短髪で、黒い瞳が黒曜石のようです。
何故でしょうか。女性陣の中心で身動きの取れないお父様を睨んで居るようです。
「見知っている者も多いと思うが、俺がギルドメートルのジャン=ポールだっ。紹介であった通り、現役時代は金ランカーだった。俺が審判を拝命したからには不正を許さんっ、心して試合を行え!!」
――――ワアアアアアアアァァァァーーーー!!!!!
「―――それと、奥さん方、そろそろ俺の戦友を解放してやってくれ!」
あれ?意外と優しい人かしら?
「キニスン殿、ありがとう。助かったよぉー」
「おうっ!あのな、アラハに言っといてくれ、『明け方に換金しに来んな』ってな」
「えー、僕も?」
「ったりめーだっ、魔物の鑑定は専門家が居ねーと出来ねーだろーがっ!いくら『安く見積もってもいい』って言われた職員だって、困る。大体、クラス白金の冒険者怒らせたくねーだろーがっ!普通」
「でも、僕等そうそう怒らないよ?」
「はあ?おまえ……、午前中さー、商業ギルドホール前で、でっけー火球こさえてなかったか?」
ダラダラと冷や汗を掻いているお父様。遠目でも分かりやすく狼狽えております。
「後で、王都の行政官が来る。何でも通りの敷いてある煉瓦が破損したとか、急速に熱せられて急に冷えたらしく、そう言う割れ方だったと言ってる。事情の確認だそうだ」
「それでは伯爵閣下、一言挨拶を!」
「ええー、えー、白竜の窖亭を営んでおりますエリエンスです。皆にはエリィと呼ばれています。趣味はごはんを作ることです。好きなものは、娘です」
ざわざわ「えっ、終わり?」「何、自己紹介?」ざわざわ「自己紹介だね」ざわっ「うん、自己紹介」「やっぱ自己紹介です」ざわざわ「何で自己紹介?」ざわっ。、ざわざわ。。。
「―――終わりですか?」
「はい。」
「もう少し何か、一言おねがいします」
「皆さん、怪我に気を付けて楽しんでねー」
「ギルドメートル、ジャン=ポール・キニスンさんとエリエンス・スィエル・ド・ショーラ伯爵でした!次に、賞品を発表します。
毎試合ごとに勝ち残った方には市場で使える商品券大銅貨二枚分と王都内の辻馬車一日乗り放題券。決勝に進んだ方は最大、大銅貨10枚と馬車乗り放題券五日分になります。三位決定戦も行いますので、三位入賞者には主審のショーラ伯様の白竜の窖亭でのランチ券三日分を―――――」
はあ?訊いて無いよ?ランチ券って何?お父様……、「手紙来てたっけ、そう言えば……、二通」って、一通は審判の打診。もう一通は、賞品の確認だったのかしら?
はっ!これは売り上げ倍増ですわっ!
「準優勝者、優勝者にはあのフイユ公爵領のベルース湖湖畔の宿ラ・ベルの一泊ペアー宿泊券をお贈りします!優勝者は宿の特別室に宿泊です。それと、本日、優勝者は、国王陛下との晩餐を予定しております!」
――――え?―――どう?―――や、いらん―――マジ?―――いやいや、騎士に取り立てて頂けるかも?―――微妙。。。
「では、16歳未満の部の抽選をしてください」
サラお兄様は東の青旗の方、マルセルさんはお父様の赤旗の方へ行ったわ。
マルセルさんが決勝戦まで勝ち進むとは思えないけれど、サラお兄様と当たらなくて良かった……。
東は……、知らない方達ですわ。西は……、あら?初戦からマルセルさん出場です。得物は槍ですわ。相手の方は士官学校の制服の人、随分大きな方ですのね。身長が2メートルはありそうな方ですわ。
しかもマルセルさんを舐めきっているようです。兜以外防具を着けていません。
『それでは、16歳未満の部第一試合開始です!』
あのマルセルさんの構え……、中段、いえ、脇に構えましたわ。石突を相手に向けて刃先は後ろに………あれって、アラハお母様がよくやる構えですわね。マルセルさんナギナタのつもりなのですわ!切るつもりですのね。槍なのにっ!完全にヤる気です!相手の方は長剣での上段構えですわ。
「始め!」
―――はっ?
ざわざわ「マジ?」ざわっ「…え?」ざわざわ。ざわざわ「うわあぁぁ痛そう……」ざわっ「酷い」ざわざわ。
―――ワアアアアアアアァァァァーーーー!!!
大歓迎です!「勝者マルセルっ!」
勝負は一瞬でした。槍の長いリーチを生かして横からぶった斬るのだとばかり思っていました。
それが、まさかの石突での突き。長剣が振り下ろされるより早く突きが決まりました。防具って大事ですわね。観客の男性の方々が前のめりに苦悶するようなお顔をしていらっしゃいます。
倒れた相手選手の方、泡を吹いてらっしゃいます。余程の痛みなのでしょう。金的への突きでした。
マルセルさん、難無く一勝です。凄いですわあー。
◇◇◇
17の私は砂漠を旅する商隊の護衛をしている。
帝国までの行程は、ほぼ当初の予定通り進んでいる。今日の野営も砂漠なのですが岩の多い所、と言うか、岩場です。
日中は暑くて、録に進め無いので朝は日の出前、夕方は、日没以降も少し進んでいます。あまり暗くなってから歩くと、砂蟲や大蠍とか湧いて来ますので、安全確保の後、野営の準備をするのです。
今日は岩場。砂蟲も出てきませんし、大蠍………、の営巣地が近くにあったみたいです。結構わらわら蠍が湧いて来ます。
体長50センチから大きいと2メートルもある黒い蠍です。普通はそのくらい大きいのですが、ここの巣の蠍は殆どが、50センチ未満と小さいです。
「なあ、カレンちゃん。脇構えってのやって見せてくんない?」
「いいですよ。―――はっ」
構えて、前方の蠍に向かって攻撃……、のつもりでしたが、数匹後ろに回り込まれました。
そのまま、後ろを突き攻撃、突いたナギナタの刃を右向きから左側へ半回転させ突いた蠍そのままに左後方の蠍を斬りつけました。その勢いで、前に居る蠍を斬るつもりで身体ごと時計回りに一回転。
「おおー、一編に三匹仕留めたよぉー。。スッゲー!」
「粗方片付いたみたいですお嬢様。今、営巣地に残っているのをネージュとレアがヤりに行ってます」
ジョゼも怪我無く仕留め切った様子。
「おいおいマチアス、落ち込むなよぉー」
青い線香のマチアスさん。ボウガン使いなのですが、矢が悉く大蠍の固い甲殻に阻まれて、全く戦力にならなかったのです。
そりゃあ落ち込みますわね。
「結構大変でしたね」
「アランさんも無事だったようで。他の方々も大丈夫でしたの?」
「いやあーそれがですねぇー……」商隊のリーダー、若旦那アランさんが言うに、砂漠大蜥蜴の一頭が蠍に刺されたので、二頭立ての荷車を一頭で引かなければならなくなった。
幸いオアシスで塩を若干売って、余裕があったのだが、大蠍を持って行くのに最低限しか詰め込めない。
と言う話しだった。
甲殻は売れる。実は肉も旨いのだ。ロブスターに似た味だ。なので、今食べる分と背負える分の肉。勿論、焼いて塩をたくさん擦り付けてから背負い袋に入れた。
甲殻は荷車に積めるだけ積めた。
後、六日程で、帝国の西端の町『ロンターノ』に到着ですわね。