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宿屋の娘の恋事情。  作者: 潤ナナ
第一部.宿屋の娘。三節.王家と娘。
24/24

00。武の夏至。

 ◇◇◇

 我が(あるじ)カレンデュリア様。

 数々の武勲を立て国の英雄と言われるエリエンス様、そして旦那様の一人娘、カレンデュリア様。


 私のカレン様。。。


 皆が、カレン様の黒髪を忌み嫌おうと、市井の者々と親しく接しているのを善しとしない貴族どもが何を言おうが、私は美しく気高い主を守る盾、立ち開かる困難を討つ剣だ。


 カレン様は、私の唯一!




 ◇◇◇

 5月(フルール)。私、ジョゼフィーヌは、13歳になった。


 二ヶ月近い大陸南部の半島のペニンスラ王国での旅路を終え、王都ウィスペルに戻った5月の終わり。家屋の周り、植え込みに金盞花(カレンディア)が咲く白竜の窖亭に帰って来た。

 橙の金盞花に代わり、向日葵(エリオント)が、すくすくと育って来ている。大きな大輪を見せるには、まだ若干早いようだ。

 そう。二つの花は並んで咲くことが、無い。




 翌、6月(プリュイ)。王国主宰の武闘の大会が開かれる。

 成人するまで出場等出来無いものと思っていたが、未成人であっても参加が可能と言うことだ。

 その条件。一つが、騎士団等からの推薦。もう一つが、冒険者階級(クラス)アジュール以上であること。

 私は十分その条件を満たしている。後は、大会の主催者、陛下がお認めになられたなら………。


 認められた。あっさりと。。。これで、全員参加だ!武闘大会に。

 それと、青級(アジュールランカー)はもう一人フラルゴ、が居た。

 前代未聞、過去に例の無い大会になる。と、王都では話題持切。

 なんせ、未成人が五人も出場するのだ。過去に、成人前の参加者が居なかった訳では無い。だが何れも男性で、14とか15歳。ほぼ準成人であろう。

 が、今年の大会に出場するのは、十代半ば前の少女達なのだ。

「へぇー、可愛いじゃん」「まぁ、話題作り的な?」「だなぁー」「あの背高い()、いい線行くんじゃ?」「他の子は?」「まぁ、可愛いよ」「平和だな」「年々参加者減ってンだろ?」「戦争無いしなー」「やっぱ話題は必要なんだろう」「盛り上げ要員的に?」「だろうな。。。」


 世間は勝手なもので、カレン様の実力等、知りようも無いのだろう。




 今年の夏至祭ソレスティス デュテは、22日。

 祭りは三日続く。初日が夏至。二日目三日目を『イン・アンナの贈り物(キャド ド ジュー)』と呼ばれている曜日の無い二日間。この二日間が、武闘大会。


 そして、当日。一日目が予選。勝ち抜き戦であるのだが、参加者が昨年の倍近い250人越えて、例年であれば、予選会場は二箇所であったのだが、四箇所となった。

 16名を16のブロックに分け、各々の会場の勝ち残り二名が、二日目の本戦で競うのだ。

 未成人五名が参加する今回、運営が、ちょっと揉めたらしいのだが、結局我々未成人五名は、抽選せずに各々のブロックに振り分けられた。

 下馬評通り、客寄せなのだな、私達は。。。


 カレン様は、3ブロック。私は、4ブロックである。

 二人共、第一会場の王立競技場だ。この会場で、1と2ブロック。3と4ブロックが最後、対戦することになる。

 つまり、勝ち抜いて行くと最後にカレン様と、戦うことになるのだ。

 楽しみだっ!


 ―――――――二回戦で、負けた。。。

 アトラさん。近衛騎士団に入って、余程の努力だったのだろうな。それより、駆け引きが上手過ぎる。

 昔、何度も観戦したんだアトラさんの闘い。フェイント、間合いの取り方、全て抜きん出る。

 ああ、そうか。これは、対人戦。冒険者の私、魔物や魔獣に駆け引きなんて、あまり必要無いもの。………私達は対、人間戦には、慣れていない!

 これ、カレン様も感じているだろうか?………いや、カレン様は、エリィ様、旦那様の子。人の括りで考えるものじゃ無い。


 結果、二日目の本戦。八名中残った私の知り合いは、つか、白竜の窖亭関係者は、サラディン、ロジールさん、マルセルさん、レア、アトラさん、カレン様。

 後の人は知ら無い。と、思ったら、、、あの人。三丁目(※注)のピエールさんだ。




 翌日、本戦。

 ティグリス四世陛下の開会の宣言から第一試合、準々決勝は始まった。


 カレン様は、始めこそ剣技を駆使して闘っていたが、やはり大人と子どもの体格差と言うのは、如何ともし難いもの。

 カレン様も身長は伸びたのだが、140センチくらい。相対するピエールさんは、私くらいある。~~~私より大きいかな?カレン様とは、頭二つ分は高い。

 小人と大人の対決。三丁目のピエールさん、やり難いのか?いや、違う。多分あれだ。冒険者組合(ギルド)での試験官やった時の―――――そう、トラウマ!

 彼、得意な獲物、剣だと思っていたが、槍。や、棒術だわ!意外技巧派なのね。舞うような………。まあ、カレン様に掠りもしないし、当たらないけど。

 そのカレン様、力押しだわあああぁぁーーー!技術もヘッタクレも無えーーー!!!

 押せ押せのゴリ押し!身体強化、剣何か乱れ討ち。正方形の競技台のもう、端っこ。

 あっ!落ちた。ピエールさん落っこちた。カレン様ぁー、華麗さ皆無ですぅー。。。

 準決勝も難無く快勝、決勝へ。




「――――はあああぁぁぁーーー。。。遂に、この時が来た。来て仕舞った。のかあー。あぁああぁぁー!俺っちの連続優勝もここまでってこったあー。まあ、誠心誠意、雲外蒼天な境地で、行きます!」

「んん~~ん、時々難しいサラお兄様!」

「頑張った向こうに希望があるかもって、そんな意味!さあ、行くよおー!カレンっっっ!!!」

「――――お兄様、勇み足ですわ。まだ、始め!とは言われていません」

「……………。うん。」

 何を、お喋りしていたのかは知りません。ですが、カレン様もサラも落ち着いて対峙しておりました。


「――――――始め!」

 主審の号令から、瞬間。私の目に大きなたくさんの尾を延ばす金色の狐と、輝く真っ白な竜の姿が見えました。

 会場の観客の幾人か、見たのでしょうか?一瞬のどよめきが聞こえました。

 あれは、あれは、多分、マナの光であったのでは?旦那様、エリエンス様。あれは?

「あれは、一体何か?」

「試合後、カレンデュリアを直ぐ回収する。ジョゼフィーヌ。頼まれてくれ!」

 旦那様、何を?

 その後、サラディンは、競技台から落ち、と言うより吹っ飛び、「そこまで!――――」と言う審判の宣言途中で、カレンデュリア様はゆっくりと倒れた。

 客席から、飛び出した、文字通り飛び出した旦那様は、カレン様を競技台から運び出すと、選手控え室に閉じ籠った。


 表彰台では、優勝者不在のままに大会の終了が宣言された。準優勝は、サラディン。特別賞にロジールさんとレアが表彰された。

 二人共、準決勝に残ったから、………と言うより、女性であったことが大きいかな。。。




 カレン様は、どうなった?控え室の扉は固く閉ざされていた。

 私は、扉の前で待つ。


 待つ間、執事見習い、未だ見習いって、何で?なウィルジールが、「旦那様から、何か指示は?」と、尋ねに来た。何も無いことを伝えると、「了解しました。では、通常業務の指示で、動きます」そう旦那様にお伝え下さいと言って、姿を消した。

 外がすっかり暗くなった頃、陛下がいらっしゃった。

「様子はどうか?」

 何の動きも無いことを告げた。陛下も私同様、扉の前に立つ。




 気が付くと、東の空は真っ赤に染まっていた。


「もう、夜明けだ。腹減ったな」

「あたいも何か食べたい。王様ぁ、何かくれっ」

「ん?アラハも居たか。シャルぅ!手で摘まめる物、持って来ておくれ!」

(………愛称で、呼ばないでよ陛下。僕一応、貴方の(オブスキュリテ)ですし、そのぉ、僕は、『コルボー』です!)

「ああー、分かった、分かったから、食べる物!」

(はいはい。)

 何方でしょう?陛下とお話ししたと思ったら、気配が消えた?……諜報の方ですかね。

 もう、朝か…………。。。カレン様、大丈夫かな?試合後、全く見て無い。心配?いいや、旦那様がいっしょにいらっしゃる。なんの問題があろうか!

 だが……。


「「大丈夫!」」

 そう、だな。きっと大丈夫!

「問題無い。俺も経験ある。収まるものさ。妖力の…、いや、違う。魔力の、だ。昂りは、時期収まるもんさジョゼ」

「……ですか、サラ」

「どうしても、こう言うことは起こる。まあ、大人になるんだ。カレンも」

 ん?って、こたあー、あれだフラルゴ、フランもそろそろ暴走、暴発か?気を付けていないといけない時期になったのね。


 今、気付いた。皆、カレン様が心配で、ここに集まっている。レア、ベル。サラもフランも。マルセルさん、ロジールさんにアトラさん、陛下……は、しょっぱなから居たけどね。

(お待たせ!集めて持って来たよぉー!殿下ぁー)

「おおー、でかしたシャル!」

「おいっ!殿下ぁ。僕、コルボーでしょ?ちゃんと呼ばない、と。挟んであげません、よぉ?

 まあ、出来合いの物、無かったんで、適当に材料だけ。。。」


 あ、なーる程。燻製肉、ソーセージ。チーズに牛酪、葉菜各種。で、パン。

「陛下、お待ち下さい。直ぐ出来るんで。レア、肉切って!ベルは野菜担当。私、パンに切り込み、チーズ薄く切るから。ロジールさんとマルセルさん、具材挟んで皆に渡して!適当に牛酪塗ってよおー!フラン、それとシャルさんだっけ?飲み物探して来いっ!」

「「了解!ジョゼ」」

「ねぇ、牛酪かったぁーい!サラ、ちょっと魔力で温めてくんない?」

「おう、任された!」

「ジョゼ!パン早くこっち回して!具ぅ挟むのあたし等早いし、ジョゼおっそぉ」

 もう、手だけは早いわねマルセル。何気にサラ兄、顎で使うロジー姉って、ちゃっかりしてる。

 陛下、はやっ!もう、食ってる?

「飲みもん、取って来たぜえー!」

 ミルクか、ん?それっ、蒸留酒じゃねーのおー?………ああーっ!の、飲んでる!ダメッ、ダメダメだよぉぉぉー!っつか、何時、来た?ルー。や、殿下あぁぁぁ!?

 ――――ドゴオオオォォォーーーーンンンッッッ!!!


 な、なにごとおおぉぉぉー!!!?

「ああ、発散?的な、ヤツだ」

 冷静、ですか?サラ兄さん。。。

 昨日まで武闘大会が開催されていた王立円形競技場。その選手控え室に使用されていた部屋の入り口前から、外は見えない。

 見え無い筈の場所から今は、朝日の登った空が見える。

 今さっきの爆発で、競技場の外壁と今私達の居る廊下の天井も吹き飛んだ。らしい……。

 空に見えたそれは、真っ白な若い(ドラゴン)だった。

 朝の日の光を浴び、朱色に染まる白竜。。。

「きれい……」

 誰が言ったのか―――――。

 美しい竜だ。

「「お嬢……様……。。。」」

「ああ、飛んだ、ねカレン」

 サラは、このことを知っていたのだろう。見上げるサラディンの瞳は、白竜を追う。

「兄さん、あれ、カレンか?」

「ああ、お嬢だ。お嬢、大人になるんだな。頑張れよ、、、だが、来年は負け無えーぞおぉーっ!雪辱戦っ!来年は取り戻おーすう!!!」

 サラ兄、………よっぽど悔しかったんだあー。。。頑張れ!つか、私も、だ。

「ああーあぁー。。。競技場、壊したぁー。弁償だなエリィよ!」

「あっ、え?僕ぅ?マジに!?」

「父であろう?カレンデュリアの保護者であろうが、エリエンス卿。――――後で、財務卿から見積り出して貰うし。なぁーに、儲けておろう、自領の作物や、塩でな?」

 項垂れる旦那様。

「はっ!だ、旦那様!マズいです。我々は知っているので、良いとして、ロジールやマルセルは、カレン様の正体、知りません」!!!」

「―――――あー。ヤバい。かな?やっぱ……」


 その後、私達は白竜の窖亭(我等が居城)へと戻った。

 殿下………、王子ルーメンスは、酔っていた。なので、城に返さず、連れて来たのだが、、、


「カレンデュりゃりゅワアーーー!しゅきしゅぎりゅのじゃあぁー!(カレンデュリア!好き過ぎるのだ!)」

 と、訳の分から無い言葉を終始叫んでいる。11歳の子どもが泥酔している。

 城で殿下の醜態を晒す訳にも行か無いであろうよ?




準備中(フェルム)


 白竜の窖亭の入り口に掛けた札。

 今、私達はあまり使われていない四階の特別室に居る。宿の裏口から入って、従業員用の階段で四階に上がったのだ。

 この時間、丁度泊まり客は朝食の時間だ。正面から入れば、確実にいろいろと知られてしまうことになるだろう。

 カレン様のこと。


 カレン様の正体を知らぬ者は、この中に二人居る。ロジールとマルセル。元々は、通いの従業員であった。今は、近衛騎士団所属ではあるが……。

「そのう、なんだ。僕……、僕等は…………」

「知っていました。」

 え?何、マルセルさん。

「小さな頃から、私知ってた。ここの皆さんの正体……」

 要約すると。

 この王都に住むマルセルは、幼少の頃から白竜の窖亭の事情が解っていた。

 マナの色、形。振る舞いを視認出来る子どもであったのだ。

 旦那様は勿論、その娘カレン、ルナール母子の異常性を見知っていた。と言うが、、、「畏れ無かったのか?」と言う旦那様に彼女は言う。

「何故、私が皆さんを畏れるの?昔っから優しかったでしょ?皆。

 小さい頃は、良く母とお昼を食べに来てたんです。その時、オマケ、と言ってエリィ……旦那様は、小さなクッキーを下さることもあったんです。まあ、尤も同い年のサラには意地悪された覚えしかありませんが」

 サラ兄、少し俯いた。

「でも、両親の亡くなった後、この宿の仕事、紹介してくれたのサラディンよ。12の私が今まで生きて来られたのは、そう言う白竜の窖亭のおかげ!」

 だが、疑問はある。

 何故、普通の平民であるマルセルにマナの見える。と言う能力があるのか?


「マルセル、君の名前は?」

「やっぱ、解るんですね?エリィ様。家には古い屋号……家名ですか?がありまして、『メディウム』と言うのだと、亡くなった父から教えて貰っています。

 只、人に知られぬよう、固く約束されています」

 それを言っちゃった!て言うか………。メディウムって。

「焼き加減?」

「それだとあたしの片割れも焼き加減だぜ!」「ウッセー!ベルぅ」

「あ、そう言う意味もありますが………。メディウムというのは、『仲介』と言う意味もあるのだそうで、現世と来世…あの世の橋渡し的な、と、言いますか」

「マルセルは、憑依体質。の家系の人間なのだね。僕の知る限りの知識の中では、君は古い『巫女』を司っていた家だったんだろうね」

 でも、もう昔話になる程の昔に滅んだ国の巫女だったのだろう。旦那様はそう言って、マルセルの頭を撫でた。


「好きなのです…」

 あ、ええーっ、このタイミング…このタイミングで告白!!!?

「好きなのですね。人が……、人と拘わることが。。。エリィ様も、アラハも。だから、宿屋の主人で居るんですね?……最近、、、最近、私、知ったんです。マナに色…形があるって、ここの皆さんのマナは、とても美しい。暖かいのです」

 ああ、綺麗な子。マルセルは、美しい心、魂の持ち主なんだ!



――――トントン。

「ヴィーです。旦那様、今宜しいですか?」

 ああ、入れ。と、旦那様が言いました。お屋敷の執事(見習い)のヴィルジールが部屋へ入って来ました、

 何故ここに居る?………ああ、お手伝いで来てたんだっけ?そうだったな。

 そのヴィルジールが言った。


「お嬢様が、お目覚めになられました」

 ……と。


(※注)ピエール。初出、第一部一節。冒険者パーティー『西区三番通り団』のリーダー。カレンの組合員登録時、試験官を務めた。仲間にパトリスとノエルがいる。

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