04。
ジョゼフーヌ。
彼女はこの夏、以前宣言した通り、従者養成学校を首席で卒業した。
当然、前例に漏れず、各名家や王宮からのお誘い………。『優先的に侍女採用』の報せが届く。にも拘わらず、彼女は全てを蹴った。
「私はお嬢様の為のお嬢様の所有物でお嬢様至上主義者です!」
目眩がした。。。
等と思っていたらその夏の間に、『騎士団採用通知』が届いた。
何故に?
「私はお嬢様の為のお嬢様の……、お嬢様至上主義者。この騎士団で、更なる力を得、お嬢様の剣で盾で、夜の玩具となる女!」
すいません。。。意味が、分かるので恐いです!
ジョゼは未成人。騎士選考試験に合格しても、成人の16になるまで騎士ジョゼフーヌでは無く、12歳の彼女の身分は、『騎士見習い』である。
そして、数ヶ月経った。。。
◇◇◇
冬期休暇は二ヶ月以上もあります。
称号『ドラゴンスレイヤー』を貰って、ここ十日。毎日、採取系、討伐系の冒険者稼業に勤しんでいました。
今日は、お休みです。
で、稼いだお金で、私達三人は鍛冶屋に来ています。新しい武器と防具を購入するつもりなのです。
どんな物が良いのか分から無いので、二歳年上で二年も前から冒険者をしていたジョゼに助言を頼んだら、「私もいっしょに行く」と、着いて来ました。
ジョゼがよく来ている鍛冶屋だと言うお店です。
お店に入る前から、「カンカン」と鎚を振るう音が聞こえていました。店内にお客様はおりません。店員さんも居ないようです。
お店の奥で、鎚を持っている方がいらっしゃいました。
「あのお~」
聞こえていないのでしょうか。もう一度声を掛けました。
「あのお、スイマセーン!!」
「なンでぇ、ここわぁ餓鬼の遊び場じゃ無えーぜー!帰ンなあー嬢ちゃん!」
いきなり、何ですのっ。しかもテンプレな台詞とか。。。私達、お客ですよ!
「―――ああ、そっちの嬢ちゃん。今日はなンだい!?」
依怙贔屓でしょうか?ジョゼには声を掛けるのですね。。。と言うか、ジョゼフィーヌ、身長が165センチ越えて、大きいですもの。まだ、12歳って言っても信じる方、居るかしら?
「今日は私では無く、カレン様達の物を見繕って頂きたい」
「はあ?こン餓鬼どもの武器、かあー?バカにすンじゃあ無えー!」
埒が明かないので、組合員証を見せた。
「赤毛二人、赤……。黒髪が青、青だあー!?何の冗談だあー!マジか??しかも、三人共、ドラゴンスレイヤーっと来たもンだあー。こいつぁー驚れえーたあー!」
鍛冶屋の旦那様は途端に機嫌が良くなって、「予算は?」「武器は剣か?」「なら、防具類はオマケであげる!」とまで、言い出した。
防具、私達三人は申し訳程度の装備だったので、革の胸当て、肘当て膝当て、それと私は左手の籠手だけは肘近くまである物を見繕って頂いた。
武器は、三人共に剣。お店の剣を持たせて貰い、旦那様が、「よし!打ってやる。来週取りに来い!」と、言いました。
「それと、ナギナタを」
「ン?ナギナタ、、、薙刀か?珍しい得物使うンだなあー!おまえさん等の丈だったら?ンーとお、そうだな、三本、打っといてヤる!来週には出来上がる。取りに来いよおー。飛びっきり良いのをこさえておくぜ?楽しみになっ!」
そう言った店主様。もう鎚を振るってお仕事を始めて仕舞いました。
それから四日。『取りに来い!』と書いたメモが昼間、白竜の窖亭に届いていたのです。
翌日、朝食の終えた食堂の片付けをして、あの鍛冶屋に行きました。
予算は、三人で金貨五枚と言っていたのですが、金貨二枚でいい。と、かなり安く店主様は仰いました。
剣三本とナギナタ三本。ナギナタの長い柄の部分だって、かなり良い塗りですのに。防具類も殆ど只同然だったのに。。。
「まだ、成長すンだろお!?そのたンび、作り直したり、新調すンだあー。それじゃあ、金が足り無くなっちめえだろー?だから、いいってこった!」
久し振りに良い仕事だった。と言う、店主様でした。本当にありがとう!
白竜の窖亭に戻って、新しい武器でお手合わせしましょう。
宿が大きくなって、お庭は少し狭くなったのですが、それでも充分に試合が出来る広さです。
私は、出来たばかりの剣を右手に、左手にはこの前、買ったタガーを。ベルは、ナギナタです。
軽く、お手合わせ……。
なる程ナギナタ、柄の部分に剣が当たっても塗料、落ちないし、結構、硬い木です。何の木材でしょう?剣も意外と軽いです。
それから、得物を変え、相手を変え、四人で手合わせを何度も繰り返しました。
「おおーい。そろそろ食堂、混んで来たよぉー!手伝っておくれ?僕の可愛い子ども達ぃ」
お父様の呼ぶ声で、お手合わせはお開きです。
と、言うか、もうお昼過ぎていました。
「先にシャワー浴びといでー」と言うお父様の仰る言葉で、結構汗だくだったのが分かって少し、恥ずかしく思いました。
相変わらず、ケーキやクッキー等の甘味がお昼なのに注文されます。まあ、女性客が多いのが、お昼の白竜の窖亭ですからね。。。
午後2時には、お昼のお客様が引けるのですが、最近、2時過ぎにお茶をされるお客が増えました。
夕方の仕込みがギリギリになる程の盛況ぶりにお父様、嬉しい悲鳴です。
なので、2時から5時まで、食堂は休業と言うことに数ヶ月前に決まりました。
宿の方は、午後2時から受け付けています。予約は、基本、受けていないので、これで良いらしいです。
「ほおー。これはぁー。良い薙刀だなぁー。作りも塗りも、中々良い。これは、北方の島国の人間がこさえたのかや?」
そう、アラハお母様が私達に尋ねました。
「北方って言うの、分から無いけど言葉も髪の毛もこの国か、この辺の方ではないでしょうか?」
「「この辺の人だった」」
「なら、一度、その鍛冶屋にあたいを連れて行ってくれまいか?」
そう言う経過で、アラハお母様と双子、私の四人は、件の鍛冶屋、『アドリアンの鎚亭』に来ました。
カンカンカン。ガンガン。カツン、カツン、カンカン、カンカン。。。
「ごめんください」
「「お邪魔しまぁーす」」
相変わらず、店内に店員、おりません。
店の入り口の扉に昨日来た時同様、『準備中』の札が掛けてある。
が、扉に鍵等掛かっちゃいない。
勝手に入店。勝手に剣や槍、ナイフを見て回った。
「ほおー、意外と良い腕の鍛冶師なのだな」
一本の短剣を持ち、鞘から抜いた剣の剣身を上から下から斜めから眺めるアラハお母様は呟いた。
「良い店だな。良い巡り合わせだ。カレン達は運がいいぞ」
奥で、鎚を振るう店主だけ、店内の住人は。その店主を見たアラハお母様。
「んん――――!?アド坊じゃ無えかぁ?おまえー!」
「誰だあ―――――?ぁぁぁああ、あ゛ーーー!!!キツネばばあ!」
端から見ると、店主様の方が、お年を召していらっしゃいます。が、まあ、アラハお母様、見た目通りの年では無いので、『ばばあ』と言うのは、納得です。
「カレン。あんた、失礼なこと、思ったりしてンじゃ無いよ?」
「ばばあ!何十年ぶりだって言うのに、相変わらず、若けえなー!このっばけもん」
「アド坊、久し振りってのにご挨拶だねえ?茶でも出せってンだよ?アラハねーさんが来たんだよ。少しゃあ、歓迎しろってンだ」
昔馴染みの方のようです。。。
お弟子さんでしょうか。私達より1~2歳年上っぽい少年が、お茶とお茶請けのお菓子を運んで来ました。
って言うか、お茶、二人分?何で……。
「おい、こっちの娘さん方も客だ。バカか、カップ!」
「?……。師匠ぉ、こいつ等、餓鬼ッスよ?」
「テメェーも餓鬼だろがぁー!こちらのお嬢様方は、青級赤級の冒険者様だ!俺のれっきとしたお客様だー!」
拳骨一発。その後、お茶は3つ増えました。
「で、何の用だ。ばばあ」
「…………。。。」
無言で、店主をボコボコにして仕舞いました。アラハお母様。
「―――スイマセン、アラハねーさん。。。本日はどのようなご用向きで、、、」
「特に用は無い。ケド、ここの店主がアド坊ってンなら話しは別さ。おまえ、少しはじいさんくらいには打てるようになったのか?」
「まあー、一応は………」
「だったら、一振頼もうかねえ。金は……。得物の出来次第で、払うわ」
「よ、喜んで。ねーさん」
ちょっぴり、嬉しそうに口角を少し、ほんの少し上げた店主アドリアン様でした。
「馴染みの方だったのでしょう?」
「馴染み、っつっても。あいつのじいさんに世話になったってだけだよ。当時のアド坊、まだ相打ちさえさせて貰えン餓鬼だったしな。だが、じいさんの打つ刀は、結構良かった」
少し遠い眼差しのアラハお母様は言う。
鍛冶師アドリアンの祖父は、「アラハバキの技に掘れた」と、アラハお母様に刀を只で打ってくれたのだそうだ。
その刀のおかげで、幾度も命を救われたと言う。
その孫が、打つ物だって業物……、かもしれない。と。。。
数日後。
「母さん、めっちゃ喜んで、俺に『狩りに行くぜー!』ってウッセーんだけど。カレン、何があったか知ってる?」
多分、あれだ。刀、出来たのでしょうね。
「たまには、付き合うのも母親孝行じゃないかしら?行ってくるといいわフラン」
長い得物は、アラハお母様の右肩から左腰に抜け、背負われていた。
「んじゃ、行ってくんよ」
私の幼な友達フラルゴと、その母、伝説の神獣であり、白銀級冒険者アラハバキは狩りに行く。
荷物持ちに、ジョゼフーヌを従えて。。。
「アラハ様、無理矢理とかヒドイ!私、騎士団の演習、今日からなんですよ?」
「ン?騎士団辞めさせたよ?」
「………。はあっ?何、言っているのですか?アラハ様」
「でも、だって。適当に力持ちのヤツって、おまえしか思い浮かばなかったンだモン」
「私、私の就職先が!私の理想の仕事ぉー!」
「おまえ。あんなお遊戯が好きなのかい?」
―――ちょっ、お、お遊戯とか言うな!クソばばあぁー!!!
大きな荷車を引くジョゼの大きな背中がこんなにも寂しそうなのは初めて見た気がした。
◇◇◇
「おまえ、力ありそうだもんな」
相変わらず失礼な方です。青いナントカのリーダー、ロックは。。。
プロンピエ商会の買い付けで、アランさん率いる商隊の旅を続ける私達は、大陸南方のペニンスラ王国を目指している。
「で、その横暴なばばあに騎士団辞めさせられて、泣き寝入りしたのかよ大女?」
「私を大女と呼ぶな!ヘタレ。それにおまえの言うその『ばばあ』だが、随分口説いていただろう。ヘタレ野郎?」
「はぁ?俺、口説いてたの、カレン……」
「ロック、飯食う度、宿入る度、挨拶のように毎度毎度口説いてたろうがっ!マジバカだよ、ウチのリーダー」
「何か、こいつに任せた俺等がバカだった。最近……や、前々からそう思ってたよぉ。なぁマチアス」
解散だ俺等のパーティー。等と言うエドの愚痴が聞こえた。
「なぁ、俺に口説かれてんの、カレンちゃんだよな?」
「一度か二度、私、貴方に言い寄られたかもしれませんが、ほぼ日常的にそう言う意味で声を掛けられていらしたのは、アラハお母様でしたよ?」
「無視されてた」「虫を見る眼差しだった。アラハ」
「ばばあ、ってあの、金髪赤目のおねーさんのこと?まさか、だよな?」
「金髪赤目の見た目二十歳前後の白竜の窖亭の従業員と言えば」「アラハだけだよ。サラとフランの母さんな」
そう、双子の言う通り。アラハお母様ですね。
「何で、あんたみたいな強面………、剣士が、可憐な女性に良いように使われたんだ?」
「可憐……。アラハ様は、お強いです。旦那様と比べても遜色無い、と言いますか、どちらがお強いのか分かりませんよエド」
因みに、ロックは夜営地の端で、放心していた。
「ふう~ん。あのねーさん、そんな強いの?」
「よく夜中、お腹空くと狩りに行ってた」「鶏蜥蜴とか、牛頭王とか…」
「そうそう。夜中の狩りのおかげで、宿の食材、結構豊富だったのっ!一番美味しいのって、やっぱ大魔猪よね?レア、ベル」
「それなっ」「意外、癖無いし」
「そう言う意味じゃあ、騎士団辞めて良かった。こうして冒険者として、狩りたい物を狩って、大好きなカレン様とご一緒出来るこの日常!尊いです」
よだれ、よだれが垂れていますジョゼ。
ジョゼフーヌ。そのよだれ、食欲によるものですわよね。決して、色欲的なそれでは無いですよね!?
何か魔物肉食いたくなったからと、レアとベルナデットは夜の森に入って行きました。
翌朝、出発した商隊の荷車には、解体済みの大将蛇が広げられ載せてありました。丁寧にお塩も刷り込まれて……。
「運搬要員で、ロック達連れてったんだけどさぁ」「使え無えー。あいつ等ぁー」
「全く、レアとベルの言った通り、荷車に乗るように、蛇バラしたんだ。大部分は乗せられた。んで、乗ら無い分、ロック達三人に持たせたのだが……」
途中で力尽きてしまった。と言う。
「………ですがその三人、何処です?」
尋ねた若旦那、アランさんにジョゼ達は顎をシャクった。
その先に大将蛇の頭を担ぐロック。胴体の一部を持つエドとマチアスが倒れていた。
進行方向の道に森から出た所で、お休みしていた様子だ。
商隊の誰かが呟いた。「使え無え」。と。。。
「若旦那、どうします?」
「荷運び要員にすらなりませんぜー」
「寧ろ、俺等だけの方がいいかもっす」
そう、口々に言う、御者の皆様。丁稚のバジル君12歳までもが、「只の只飯食らいじゃん」等と申されます。
「―――だなあー」
商隊率いるアラン次期商会会頭の決定です。
放逐されました。




