03。
◇◇◇
泣き疲れた私は、お父様の腕の中で目を覚ましました。
微睡む私を抱き締めるお父様。まだ、朝には早いのでしょう。窓の外は未だ星が見えていました。
そうして外をお父様の腕の中から眺めていると、少しづつお空が白んで行くのでした。
「僕の可愛いお姫様、そろそろその愛らしい君の瞳を見せてくれないかい?」
私、二度寝したのですわ。
「おはようございます。お父様」
「ああ、おはようお姫様。早速で悪いのだが、給仕のお仕事、頼めるかい?レア、ベルの二人では中々、回せそうも無くてね」
「では、急いで支度致します」
もう、泊まり客の皆様、殆どが起きていらっしゃいました。寝坊した私がいけないのですが、身支度して即効、忙しい。
朝食をお客様に運んでいると。
「おお!昨日ギルドにいた娘じゃねー?」
「ホントだわ。ここの子かい?」
声を掛けられた。
「そうですが、、、合わせて、お飲み物は如何ですか?」
「そうだなぁー、飲み物よかオマエ食いてえぜ?」
―――バッゴオオオオーーーーンッ。。。
お客様は床に倒れていました。フライパンが当たったようです。
「僕の麗しいお姫様に、そのような不埒な物言い等、許され無いのだよ。殺すよ?」
「お父様、いけません。お客様ですよ!」
何故でしょう。不埒なことを言った方以外の二人も床に正座して、「ごめんなさいごめんなさい」と、言っていました。
三人のお客様が食事を終えたテーブルには、銀貨が五枚置いてありました。
一応、チップとして、頂いておきましょう。
今月は、冬期休暇で、来月の2月いっぱい、お休みです。
ですので、冒険者稼業を頑張るのです!
「え?カレンってば、青なの?」「昨日、登録したばっかじゃん。早くね?」
因みに、レアとベルは『緑』でした。一ヶ月私より早く登録していたのですが……。
「「マジで!?」」
午前9時の鐘が鳴って暫く、宿のお仕事はほぼ終わりました。と言うか、食堂の仕事です。終わったのは。
宿としては、空いたお部屋のお掃除、リネン類の交換等、いろいろあるのです。それらは住み込みの従業員のマリーとエマのお二人のお仕事です。
私とレア、ベルの仕事は終わりましたので、本日は冒険者ギルドに三人で行くことにしていました。
「いってきます!」
「夕方までには帰っておいで」
お父様とアラハお母様に見送られて、ギルドへと向かいます。近所ですので、物の三分と掛からず、着きました。
大通りの並びです。冒険者組合の建物は……。
「あー、めぼしい仕事ぉ」「殆ど、朝に取られてんだよなー。こんな遅い時間じゃあ、良さげなのって……」
「――――じゃあこれとか、どお?」
「ダメ」「ヤバいヤツだよー」
依頼書には、赤い丸印が着いていた。どう言う意味の印なのでしょう?
「ああ、それはね………」
受付嬢の方が仰るには、赤丸は一ヶ月以上経過している依頼書なのだと言う。幾度か依頼を行った冒険者はいらしたのだそうですが、依頼達成に至らず、違約金を支払って、依頼遂行されなかった物だと言うことでした。
違約金の一部も加算されて、現在、金貨四枚と銀貨六枚のお仕事となっている。
違約金は元の報酬金貨三枚の一割。銀貨三枚です。
「これ、無理じゃね?」
「いざとなれば、私飛ぶから」
「それは、不味いですお嬢様」
「心配しないで、ベル。あのう、これ受けます!」
組合員証を提示して依頼書を出すと、受付の女性は言いました。
「三人でやるのでしたら、パーティー名をお知らせ下さい。もし、まだパーティーを組まれて無い場合は、この書式に従ってご記入し、登録して下さい」
ああ、パーティーですの?
「パーティーの名前。どうする?」
「レアとベルって、赤い髪ですから『赤い』は入れたいです」
「それなら、パーティーリーダーは、お嬢様ですから、『黒』って言うの入れるべき」
「なら、こう言うのは、どお?」
ベルの言ったパーティー名。『赤い金目鯛』。双子の髪色に私の琥珀色の瞳。そのついでに三人共、金目鯛の煮付けが好きだったりする。と言う理由で、パーティー名を決めた私達。
「―――以上で、受け付けは終了です。あのう、本当にワイバーンの討伐、するのですか?」
「大丈夫です」
「いざって時の秘密兵器があるんだ」「凄いぜ?」
まあ、秘密兵器と、言いますか公に出来無いことはあるのですが………。
まあ、何はともあれ、パーティー『赤い金目鯛』の初仕事です。王都から北へ馬車で一日行った村『ヴィクス』。週に2~3回来るワイバーンが家畜、牛や羊。時には人間も拐って行くのだと言う話しです。
数日前にも女の子が拐われ、どうやら食べられてしまったようなのです。
そう言った村長様、私達を見てあからさまにガッカリしておりました。
まあ三人共、10歳の少女ですから、無理も無いでしょう。
私は、一匹の羊を買いました。村長の言い値、銀貨二枚で、購入しました。
「もし、この羊を無傷でお返しいたしましたら、銀貨、お返し下さいませ。2~3日で解決致しますので……」
村長様もですが、他の村人も信じてはいないようです。勝算はあるのです。
村から少し離れた小高い丘に購入した羊を連れて来ました。木の杭に縄で括り付け、様子を見ます。
近くに野営して二日目、ワイバーンが飛来して来ました。
ベルが弓矢の連続攻撃、私とレアが水球を射出。矢は届いても刺さらないようでしたが、それで舐めたのでしょう。ワイバーンが羊では無く、我々を標的に据えたようです。
近くまで飛来したワイバーンに向けた水球が当たり始め、ワイバーンの身体、特に羽の部分が濡れて来ました。
「水よ全ての活動を停止。氷結っ!」
そう、水であれば、マナは数分から10分程度で霧散してしまうのですが、凍って仕舞えば意外と長時間存在出来るのです。
しかも羽を凍らせたのです。重くなったワイバーンは程無く、丘に落ちました。
レアが槍で刺し、ベルが短剣で切り付けます。間も無く、ワイバーンは絶命しました。
私は、魔法使い過ぎで、少々疲れてしまって、止めは双子にお任せでした。
そう言う訳で、私が、飛ぶ必要はありませんでした。
依頼、完遂です。
村で荷車を借りて、遺体となったワイバーンを運びました。村人達は、驚いたようです。
まあ、10歳の少女達が亜竜を退治したのですから普通、驚きますよね。
村長様に依頼の完了の署名をして頂いて、使わなかった羊をお返ししようとすると
「これは、貰ってくれ。お礼だ」
只で羊を頂きました。
ワイバーンを荷車で、王都まで運ぶのに二日。王都のギルドで、買い取って頂きました。
依頼完遂で、金貨四枚と銀貨二枚。ワイバーンの買い取り、金貨三枚でした。
そして亜竜とは言え、竜です。『ドラゴンスレイヤー』の称号が付きました。
当然、組合等級が上がりました。双子は揃って、『緑』から『赤』になりました。
私も等級が上がる。と思ったのですが、流石に登録して、数日での『銀』はあり得無い。そうです。
こう言った、過去に前例の無い案件。異例の早さでの等級上げ等は、当該区の組合長であるジャン=ポール・キニスンさんの承認の他に、統括組合長の承認が必要だと言う。
この場合南方の隣国、ペニンスラ王国にいらっしゃる大陸西地区のアルバン・アフリア様にお伺いをしなければならない。
従って、関係書簡をペニンスラ王国へ送って、それで承認されたとしても最短で、一ヶ月。と言うことですって。
それでも、10歳と一ヶ月での銀級は、史上初めて、と言うことです。
「ただいまぁ~~~!帰りは、夕方の予定でしたが、組合からの伝言の通りですの。ごめんなさいお父様」
五日ぶりの白竜の窖亭です。突然、視界が真っ暗に!
ああ、お父様が抱き締めたのですね。暖かくて、良い匂いがします。
スンスン。クンカクンカ。
「止めえーい」「この変態娘がっ!」
いいではありませんか。お父様の匂いを嗅ぐくらい。
「引くわあー。マジ、引く。ホント、この変態っぷり、王子に見せたいよおー」
「いいでしょう?私の趣味くらい。フランだって、アラハお母様の匂い嗅ぐでしょう?」
「ンなことしねーよ!バカかカレン?」
「それより三人共、お風呂に入りなさい。結構汚れているよ?」
ああーっ!五日間、水浴びすらしていませんでした。私、臭かったのでしょうか?お父様に嫌われて仕舞いますわぁー!
と、言う訳で、三人でお風呂に入りました。
意外と疲れていたのでしょう。お風呂から上がって間も無く、寝て仕舞いました。
レアもベルも寝たようです。
起きたら、食堂の夕食も終わって仕舞っていて、お手伝いも出来ませんでした。
「たまには、いいさ」
と、お父様は仰って下さいましたが、お仕事をこんなに何日もしなかったのは、初めてかもしれません。
二年前、この白竜の窖亭が再建した時、新しく従業員を募集しました。
住み込みのマリーとエマ、シャルロット。他に、通いの方も数名雇ったのです。
なので、意外と食堂の給仕も私達がいなくとも、回せていたようでした。
アトラ、マルセルとロジールの三人が騎士団に入って仕舞ったのに、です。
そう思うと、ちょっと寂しい気も致しますが……。
アラハお母様の長男、サラディン。サラお兄様は去年、学園を卒業して、本格的に冒険者をやっています。
アトラと年上のディディエさんとパーティーを組んでいましたが、アトラが騎士団に入って、解散したようです。今、フリーなら、私達と組めるのでは……。
今度、伺ってみるのも良いかもしれません。
「ウチの兄貴、どっかのパーティーに入ったぜ?俺も入ろうと思って兄貴に言ったら、断られた。俺、まだ緑だし、中々いい巡り合わせが無ぇんだ。おまえ等と組んでもいいこと無さそうだし……。どおすっかなあー。暫く、ソロでいいかぁ」
フラン、暫くソロ活動ですのね。
◇◇◇
で、何で貴方達がこの商隊に着いて来ているのですか?ロンターノの町で別れた筈ですのに!
「いやあ~~~。俺は無報酬だから、反対したんだよ。でもバカロックがぁー」
「そう、ロックのバカがぁー」
「バカバカ、ウッセー!エド、マチアス。。。俺達……、俺が、惚れた、………からだっ!」
ええーっ!!!
「アランさん、に?」
ロックさん。男色のご趣味のお方だったのですか!??
「違っ…………。俺が惚れたのは、カレンだっ!」
マジですの?
こんな「こんな、弱い男性。趣味ではなくってよ」
あらあー!?声に出て仕舞いましたわ。
申し訳ないですわ。
ですが、本当に好みでも何でも無い、ですの。それに……。
「それに、好きなお方がいるのです。ロックさん、お気持ちは有難いと思います。ですが……」
「マジ、キモいっすねぇ」「何故、存在出来てるんでしょう?」
「早く消えなさい」
レア、ベル、ジョゼ。辛辣です。
「まあ、荷運びには男手、必要だし……。っと言うか、現地で必要になった時だけ、だけどもな。おまえ等、食費払えよ?」
アランさん、身も蓋も無い物言いです。止めを刺したようです。ああー、ロックさん沈みましたーーーー。




