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宿屋の娘の恋事情。  作者: 潤ナナ
第一部.宿屋の娘。二節.冒険稼業。
17/24

03。

◇◇◇

 泣き疲れた私は、お父様の腕の中で目を覚ましました。


 微睡む私を抱き締めるお父様。まだ、朝には早いのでしょう。窓の外は未だ星が見えていました。

 そうして外をお父様の腕の中から眺めていると、少しづつお空が白んで行くのでした。

「僕の可愛いお姫様、そろそろその愛らしい君の瞳を見せてくれないかい?」

 私、二度寝したのですわ。

「おはようございます。お父様」

「ああ、おはようお姫様。早速で悪いのだが、給仕のお仕事、頼めるかい?レア、ベルの二人では中々、回せそうも無くてね」

「では、急いで支度致します」


 もう、泊まり客の皆様、殆どが起きていらっしゃいました。寝坊した私がいけないのですが、身支度して即効、忙しい。

 朝食をお客様に運んでいると。

「おお!昨日ギルドにいた()じゃねー?」

「ホントだわ。ここの子かい?」

声を掛けられた。

「そうですが、、、合わせて、お飲み物は如何ですか?」

「そうだなぁー、飲み物よかオマエ食いてえぜ?」

―――バッゴオオオオーーーーンッ。。。

 お客様は床に倒れていました。フライパンが当たったようです。

「僕の麗しいお姫様に、そのような不埒な物言い等、許され無いのだよ。殺すよ?」

「お父様、いけません。お客様ですよ!」


 何故でしょう。不埒なことを言った方以外の二人も床に正座して、「ごめんなさいごめんなさい」と、言っていました。

 三人のお客様が食事を終えたテーブルには、銀貨が五枚置いてありました。

 一応、チップとして、頂いておきましょう。

 今月は、冬期休暇で、来月の2月(フロワ)いっぱい、お休みです。

 ですので、冒険者稼業を頑張るのです!


「え?カレンってば、青なの?」「昨日、登録したばっかじゃん。早くね?」

 因みに、レアとベルは『(ヴァート)』でした。一ヶ月私より早く登録していたのですが……。

「「マジで!?」」

 午前9時の鐘が鳴って暫く、宿のお仕事はほぼ終わりました。と言うか、食堂の仕事です。終わったのは。

 宿としては、空いたお部屋のお掃除、リネン類の交換等、いろいろあるのです。それらは住み込みの従業員のマリーとエマのお二人のお仕事です。

 私とレア、ベルの仕事は終わりましたので、本日は冒険者ギルドに三人で行くことにしていました。

「いってきます!」

「夕方までには帰っておいで」

 お父様とアラハお母様に見送られて、ギルドへと向かいます。近所ですので、物の三分と掛からず、着きました。

 大通りの並びです。冒険者組合の建物は……。




「あー、めぼしい仕事ぉ」「殆ど、朝に取られてんだよなー。こんな遅い時間じゃあ、良さげなのって……」

「――――じゃあこれとか、どお?」

「ダメ」「ヤバいヤツだよー」

 依頼書には、赤い丸印が着いていた。どう言う意味の印なのでしょう?

「ああ、それはね………」

 受付嬢の方が仰るには、赤丸は一ヶ月以上経過している依頼書なのだと言う。幾度か依頼を行った冒険者はいらしたのだそうですが、依頼達成に至らず、違約金を支払って、依頼遂行されなかった物だと言うことでした。

 違約金の一部も加算されて、現在、金貨四枚と銀貨六枚のお仕事となっている。

 違約金は元の報酬金貨三枚の一割。銀貨三枚です。

「これ、無理じゃね?」

「いざとなれば、私飛ぶから」

「それは、不味いですお嬢様」

「心配しないで、ベル。あのう、これ受けます!」

 組合員証(ギルドカード)を提示して依頼書を出すと、受付の女性は言いました。

「三人でやるのでしたら、パーティー名をお知らせ下さい。もし、まだパーティーを組まれて無い場合は、この書式に従ってご記入し、登録して下さい」

 ああ、パーティーですの?


「パーティーの名前。どうする?」

「レアとベルって、赤い髪ですから『赤い』は入れたいです」

「それなら、パーティーリーダーは、お嬢様ですから、『黒』って言うの入れるべき」

「なら、こう言うのは、どお?」

 ベルの言ったパーティー名。『赤い金目鯛』。双子の髪色に私の琥珀色の瞳。そのついでに三人共、金目鯛の煮付けが好きだったりする。と言う理由で、パーティー名を決めた私達。


「―――以上で、受け付けは終了です。あのう、本当にワイバーンの討伐、するのですか?」

「大丈夫です」

「いざって時の秘密兵器があるんだ」「凄いぜ?」

まあ、秘密兵器と、言いますか公に出来無いことはあるのですが………。


 まあ、何はともあれ、パーティー『赤い金目鯛』の初仕事です。王都から北へ馬車で一日行った村『ヴィクス』。週に2~3回来るワイバーンが家畜、牛や羊。時には人間も拐って行くのだと言う話しです。

 数日前にも女の子が拐われ、どうやら食べられてしまったようなのです。

 そう言った村長様、私達を見てあからさまにガッカリしておりました。

 まあ三人共、10歳の少女ですから、無理も無いでしょう。

 私は、一匹の羊を買いました。村長の言い値、銀貨二枚で、購入しました。

「もし、この羊を無傷でお返しいたしましたら、銀貨、お返し下さいませ。2~3日で解決致しますので……」

 村長様もですが、他の村人も信じてはいないようです。勝算はあるのです。


 村から少し離れた小高い丘に購入した羊を連れて来ました。木の杭に縄で括り付け、様子を見ます。

 近くに野営して二日目、ワイバーンが飛来して来ました。

 ベルが弓矢の連続攻撃、私とレアが水球を射出。矢は届いても刺さらないようでしたが、それで舐めたのでしょう。ワイバーンが羊では無く、我々を標的に据えたようです。

 近くまで飛来したワイバーンに向けた水球が当たり始め、ワイバーンの身体、特に羽の部分が濡れて来ました。

「水よ全ての活動を停止。氷結っ!」

 そう、水であれば、マナは数分から10分程度で霧散してしまうのですが、凍って仕舞えば意外と長時間存在出来るのです。

 しかも羽を凍らせたのです。重くなったワイバーンは程無く、丘に落ちました。

 レアが槍で刺し、ベルが短剣で切り付けます。間も無く、ワイバーンは絶命しました。

 私は、魔法使い過ぎで、少々疲れてしまって、止めは双子にお任せでした。

 そう言う訳で、私が、飛ぶ(・・)必要はありませんでした。


 依頼、完遂です。

 村で荷車を借りて、遺体となったワイバーンを運びました。村人達は、驚いたようです。

 まあ、10歳の少女達が亜竜を退治したのですから普通、驚きますよね。

 村長様に依頼の完了の署名をして頂いて、使わなかった羊をお返ししようとすると

「これは、貰ってくれ。お礼だ」

 只で羊を頂きました。


 ワイバーンを荷車で、王都まで運ぶのに二日。王都のギルドで、買い取って頂きました。

 依頼完遂で、金貨四枚と銀貨二枚。ワイバーンの買い取り、金貨三枚でした。

 そして亜竜(ワイバーン)とは言え、竜です。『ドラゴンスレイヤー』の称号が付きました。

 当然、組合等級(ギルドランク)が上がりました。双子は揃って、『(ヴァート)』から『(ギュールズ)』になりました。

 私も等級(クラス)が上がる。と思ったのですが、流石に登録して、数日での『(アージェント)』はあり得無い。そうです。

 こう言った、過去に前例の無い案件。異例の早さでの等級上げ(クラスアップ)等は、当該区の組合長であるジャン=ポール・キニスンさんの承認の他に、統括組合長(グランメートル)の承認が必要だと言う。

 この場合南方の隣国、ペニンスラ王国にいらっしゃる大陸西地区のアルバン・アフリア様にお伺いをしなければならない。

 従って、関係書簡をペニンスラ王国へ送って、それで承認されたとしても最短で、一ヶ月。と言うことですって。


 それでも、10歳と一ヶ月での銀級アージェントランカーは、史上初めて、と言うことです。




「ただいまぁ~~~!帰りは、夕方の予定でしたが、組合からの伝言の通りですの。ごめんなさいお父様」

 五日ぶりの白竜の窖亭です。突然、視界が真っ暗に!

 ああ、お父様が抱き締めたのですね。暖かくて、良い匂いがします。


スンスン。クンカクンカ。

「止めえーい」「この変態娘がっ!」

 いいではありませんか。お父様の匂いを嗅ぐくらい。

「引くわあー。マジ、引く。ホント、この変態っぷり、王子に見せたいよおー」

「いいでしょう?私の趣味くらい。フランだって、アラハお母様の匂い嗅ぐでしょう?」

「ンなことしねーよ!バカかカレン?」


「それより三人共、お風呂に入りなさい。結構汚れているよ?」

 ああーっ!五日間、水浴びすらしていませんでした。私、臭かったのでしょうか?お父様に嫌われて仕舞いますわぁー!

 と、言う訳で、三人でお風呂に入りました。

 意外と疲れていたのでしょう。お風呂から上がって間も無く、寝て仕舞いました。

 レアもベルも寝たようです。

 起きたら、食堂の夕食も終わって仕舞っていて、お手伝いも出来ませんでした。

「たまには、いいさ」

 と、お父様は仰って下さいましたが、お仕事をこんなに何日もしなかったのは、初めてかもしれません。


 二年前、この白竜の窖亭が再建した時、新しく従業員を募集しました。

 住み込みのマリーとエマ、シャルロット。他に、通いの方も数名雇ったのです。

 なので、意外と食堂の給仕も私達がいなくとも、回せていたようでした。


 アトラ、マルセルとロジールの三人が騎士団に入って仕舞ったのに、です。

 そう思うと、ちょっと寂しい気も致しますが……。


 アラハお母様の長男、サラディン。サラお兄様は去年、学園を卒業して、本格的に冒険者をやっています。

 アトラと年上のディディエさんとパーティーを組んでいましたが、アトラが騎士団に入って、解散したようです。今、フリーなら、私達と組めるのでは……。

 今度、伺ってみるのも良いかもしれません。


「ウチの兄貴、どっかのパーティーに入ったぜ?俺も入ろうと思って兄貴に言ったら、断られた。俺、まだ緑だし、中々いい巡り合わせが無ぇんだ。おまえ等と組んでもいいこと無さそうだし……。どおすっかなあー。暫く、ソロでいいかぁ」

 フラン、暫くソロ活動ですのね。





◇◇◇

 で、何で貴方達がこの商隊に着いて来ているのですか?ロンターノの町で別れた筈ですのに!

「いやあ~~~。俺は無報酬だから、反対したんだよ。でもバカロックがぁー」

「そう、ロックのバカがぁー」

「バカバカ、ウッセー!エド、マチアス。。。俺達……、俺が、惚れた、………からだっ!」

 ええーっ!!!

「アランさん、に?」

 ロックさん。男色のご趣味のお方だったのですか!??

「違っ…………。俺が惚れたのは、カレンだっ!」

 マジですの?

 こんな「こんな、弱い男性。趣味ではなくってよ」

 あらあー!?声に出て仕舞いましたわ。

 申し訳ないですわ。


 ですが、本当に好みでも何でも無い、ですの。それに……。

「それに、好きなお方がいるのです。ロックさん、お気持ちは有難いと思います。ですが……」

「マジ、キモいっすねぇ」「何故、存在出来てるんでしょう?」

「早く消えなさい」

 レア、ベル、ジョゼ。辛辣です。

「まあ、荷運びには男手、必要だし……。っと言うか、現地で必要になった時だけ、だけどもな。おまえ等、食費払えよ?」

 アランさん、身も蓋も無い物言いです。止めを刺したようです。ああー、ロックさん沈みましたーーーー。


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