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宿屋の娘の恋事情。  作者: 潤ナナ
第一部.宿屋の娘。二節.冒険稼業。
16/24

02。

◇◇◇

「――――あ、れ?ええー、と。俺倒れてる?瞬殺?」

「マジ、瞬殺……。だわ」


 一戦目、勝った!行けますわ!

「――――おい。おいおい、マジ、かー、ピエールよう。負けてんじゃ無ーよぅ。。。おい、ノエル!ボウガンじゃ無く、弓使え!用意するのはボウガンじゃ無く弓だ」

「パトリス、威力より手数ってことか?」

「ああ、速さ重視だっ!俺、初っぱなから火炎系魔法、射ち巻くっからよう」

 ええ、っとおー。聞こえてますけど。………ああっ、そうですわ!

「見学者の皆様。危ないので、障壁。。。障壁系の魔法、使える方、いらっしゃるのなら、全力で張って下さいませ!私、加減出来無いかもしれませんので……」


 二戦目は、二人。パトリス様が、杖を構えているので、魔術師ですね。ノエル様は、弓と帯同している短剣、それに杖も右腰にあるので、近接戦も得意そうです。遊撃担当なのでしょうか。ならば、先制攻撃です。

「用意はいいな。―――――始め!」

「火球!」

 右手の平から小さな青白い火を放つ。ノエル様は弓矢を一本放った時点で二本目を放つ。

 ―――遅いです。同時に、大きな水球を作り上げたパトリス様。パトリス様、「火球」って言いませんでした?まあ、なんにせよ、それは悪手ですよ?

 ――――ドっっっ!

 私の火球が、パトリス様の水球に呑まれた瞬間、大爆発を起こしました。しました。―――こう言うのって、『水蒸気爆発』とか言うのでしたかしら?私の火球、超高温ですのよ!

 勿論、私は自分の四方に障壁を張りましたが、、、ああー、ノエル様もパトリス様も防御、怠った様子ですね。

 観戦している方々、大丈夫でしたかしら?私に唯一賭けて下さった女性………、アトラさんでしたのね。彼女が、障壁を張って下さったようです。

 って言うか、やり過ぎました!

「あ、あのー大丈夫ですか?怪我……」

 ああーノエル様の右腕、あらぬ方向を向いてます。頭髪に至っては、ありません。燃えましたようです。パトリス様は……、気を失っておられるだけのようです。


「ご、ごめんなさい!少しは加減したのですが……、何方か、回復系の……、聖魔法お持ちの方、いらっしゃいませんか?ノエル様、ノエル様が骨折して仕舞われました。骨折させました!私、私の所為で、大怪我を………。私、私の……不注意ですわ!私の所為です」

「嬢ちゃん、全力で、と言ったのは、俺だ。気に病むことぁ無ぇ。それに、回復系統の魔術師、王国国内にはおらん。残念だが、ノエルは、暫く仕事出来無えだろう……。いや、今後、冒険者としては……」

「そんな、、、」

(僕、回復させられるかもよ?)

 本当?ネージュ。出来るの?本当、治せるの?

「お願い!ネージュ」

『任されたっ!――――でも、初めてヤるから、怪我のトコ、固定してくれる?』

 私の影から表れたネージュ。二年で大きくなったのよね、ネージュ。丈が2メートル越えてそう。でも、可愛いわ。真っ白で、お父様の髪の毛みたいだし。。。

「おお!」「なんだ!?」「でけー!」「狼?」「いいや、」「フェンリル?マジ、フェンリルじゃね!?」「おいおい、俺等、食われんの?」「こえーわ!」「神獣!?」


 ネージュってば、大き過ぎるのね。

「小さくなれる?」

『なれるけど僕、回復魔法使うの初めてだから、身体小さくすると法力も小さくなるかも。多分、無理。失敗するかもだから。身体、そのままがいい。と、思う』

「ええっとぉ皆様、この子、この子ネージュ。ネージュは私のお友だちで、大きいけど優しい子ですの。だから、怖く無いのですのよ?」

 顕現したネージュ。倒れているノエル様を囲う光り。青く淡い光り。優しい光り。ネージュの輝きは、柔らかくて 優しい。そして暖かい。

 ノエル様の腕を癒す光り。徐々に光度を上げて行く。

「いっ、痛てぇー痛てぇー、放せぇ、放せよぉー!」

 ノエル様、暴れて仕舞い、全く固定出来ません。どうしたら良いのでしょう。と、思っていましたらピエールがノエル様の身体に股がり抑え付け、パトリス様は腕をガッシリ掴んで、固定してくださいました。

 ネージュの優しい光がノエル様を包みます。

『治った。かなぁ?大丈夫、だと思うよ?もう疲れた、戻る』


「―――…フェンリル。マジにフェンリルなのだな。ああー、ショーラ閣下の言っていた通り、フェンリルを飼っていたとは………」

『飼う?……失礼な。ボクは、カレンの友達だよ』

「そうよ。ネージュは私の子どもなのっ!」

『子どもぉ?それはそれで、ボクに失礼じゃ無いの?あ、治ったかなぁ?コイツ…』

 三丁目のノエル様。大丈夫、みたいです。




「――――で、これが組合員証(ギルドカード)。ここに署名しろ」

 金属板、これがギルドカード。

 特殊なインク、らしい。そのインクに羽ペンを付け、書名する。

『カレン・リュシー』。。。

 偽名でも良い。って、ジャン=ポールさん、組合長さんが言っていらしたので少々、アレンジです。

 これで今日から、(わたくし)、冒険者ですわ!『(ギュールズ)』スタートですの!三丁目「西区三番通り団だ!」さん達が、

青級(アジュールランカー)の俺等より強えぇ嬢ちゃんが『赤』程度とは思え無ぇーが、文句無しで、『赤』だ!」

 と、仰って下さいました。


 そう言う訳で、私は本日より冒険者です!早速、お仕事を………。

「『弟切草求む』。これ、良さそうね」

 依頼版から依頼書を剥がして受付窓口へと持って行く。コラリーさんが窓口業務だ。

「コラリーさん、これ、よろしいですか?」

「良いです。が、先程は、失礼致しました。あれ程の力量がありますのに、私、貴女を侮っていました。申し訳ございません。カレンデュリア様」

「そんなこと、どうでも良いのです。それよりもこれ、如何です?弟切草の群生地って、お分かりになられますでしょうかコラリーさん?」

「これはですねぇー………」

 コラリーさんの言う群生地は、ゴブリンの営巣地が近く。はっきり言って、「危ない」と言う。

 ゴブリンと言うのは雄だけで、生殖の為、他種族、例えば人間の女性を拐い犯すのだそうだ。そうして、ゴブリンは増えて行くのだとコラリーさんは言う。

「―――ですから、カレンデュリア様。弟切草は諦めて、違う依頼を見繕って下さいまし」

「では。ゴブリン討伐、しますわ!」




 王都の西門を抜けて森に入るのだが、王都西の森の手前に集落がある。

 小さな村、『フォリオ』。

「ウチのテファも拐われた。嬢ちゃんが冒険者って、ウソだろう?逃げな。森に入っちゃいかん。危険だ!」

 とは言われたが、森に入った。

 直ぐに、ゴブリンの一団、五匹だが、が居た。


 瞬殺。

「コラリーさんが言ってた。討伐した場合、部位は右耳、若しくは、胸の魔石、と…」

 胸に、無いわね魔石。では、耳を……、切る。袋に五つの右耳を入れ、先を進みます。

 大きな岩山があります。洞窟になっているのでしょうか。二匹、ゴブリンが入り口っぽい所に立っています。

 先手必勝です。「火球!」。

 小さな青白い炎は、ゴブリンの手前で大きな火球になる。そう言う魔法なのだ。

 ―――ゴオーッ!

 真っ黒焦げになって仕舞いました。耳、取れますでしょうか?ああー、無理っぽいです。焦げ焦げです。


 まあ、そんな訳で、私は弟切草の採取目的で、ゴブリン討伐を行うのでした。




 薬草の『弟切草』を採取する予定が、ゴブリン討伐になりました。

 おそらく、この岩山はゴブリンの営巣地。一気に殲滅。と考えたのですが、数名の女性…、女児が拐われているようです。


 いい加減、ゴブリンの右耳、60を越えています。もう袋に入りません。

 それにしても、胸、心臓傍にあると言う魔石、全くありません。もっと高位の魔物であればあるのでしょうか?

 おお、奥にでっかいゴブリンがいます。

「火槍!」

 火玉ではありません。槍をイメージした『火の槍』です。

 真っ直ぐに火槍はゴブリンの胸に吸い込まれ、ゴブリンは絶命しました。

 そのゴブリンの下に裸の女の子がいました。

「ナイフ、そのナイフ、貸して下さいませんか?」

 私が、ナイフを渡すと、その女の子はいきなりご自分の喉を引っ裂きました。

 鮮血が迸りました。

 一瞬の出来事でした。

 何があったのでしょう。一体、私は何を見たのでしょう。私に何が出来たのでしょう。

 自害する少女を私は只、見ていることだけだったのです。


 大きなゴブリンの体内。心臓の傍には、大きな魔石がありました。

 ゴブリンの右耳は、全部で72個。焦がしてしまって耳を取れなかった20体以上はこの際無視。魔石は1個。そして、助けられなかった少女……、女性、三人。遺体二つ、目の前で命をたった少女が、一人。。。彼女、大きなお腹だった。多分、ゴブリンの子を宿していたのでしょう。



 私は、フォリオ村でことの顛末を報告しました。


「そうか、テファ、自害したのか。。。」

 何ともやるせない。そんな気分になる初仕事でした。王都に戻り、報告しました。


 72個の耳と一個の魔石。他に20数匹のゴブリンが居た営巣地であったことを報せると、コラリーさんは慌てて奥に引っ込みました。

 間も無く、三階のお部屋……、ジャン=ポール様、組合長(ギルメ)のお部屋です。に連れて行かれました。

「ええー、と?」

「おまえ……。。。嬢ちゃん一人で、ゴブリンの営巣地、殲滅したのか?」

 何を興奮してらっしゃるのです?ジャン=ポール様。真っ赤なお顔で、お鼻が大きく開いておりますわ。

「そうです。でも、救えませんでした。お一人、救えた筈でしたのに、不用意に渡したナイフで、自害されて、自殺させて仕舞いました……。私は未熟者です」

 俯いている私にギルメは言いました。「顔を上げろ。誇れ!」と。

「おまえは、誇っていい。村を救ったのだからな。そして、今日よりおまえは、『(アジュール)』だ!」

 こう言うことは、異例なのだそうで兎に角、私は一日で三階級上がりました。ああ、そうだ。試験での賭け。アトラさんとギルメ、二人は金貨10数枚頂いたと言うことでした。

 私は、依頼書の『弟切草』を10本。それと、ゴブリン討伐の報酬で金貨四枚と銀貨六枚頂きました。弟切草の方は銀貨五枚で、ついでのゴブリンのが多いと言う結果でした。

 自害させた女の子。どのようにすれば……、どのようにしていたら良かったのでしょう。どうしたら救えたのでしょう?「生きて行くには辛かったであろう」と、彼女のお父様らしい方は仰いました。

 ですが……、私、辛いです。

 何か、どうにか、私、出来無かったでしょうか?何故、死なせてしまったのでしょう。

 あんな小さな少女さえ、救え無い私。。。

「おまえが、そう思うのなら、彼女は救われる」

 私を抱き締めるお父様。優しいお父様の言葉が私を救うのです。

 こうして、冒険者登録をした一日は終わりました。そのまま、私はお父様のベッドに潜り込みました。




◇◇◇

「初っぱな、赤かよー!」

「スゲーなぁー」

「なる程、その歳で、『(アージェント)』なのも頷ける」

 そう私、今は銀級冒険者。『黒髪の突風(ノワールナファール)』とか、言われております。

 恥ずかしいですわ!

 と、言いますか私、黒い髪の毛以外、特徴無いのでしょうか?確かに平凡な顔、ですし、色白な肌。

 特徴は、唯一黒髪だけなのでしょうね。


「平凡、ではございません。はっきりとした目鼻立ち、と、言いますか、真っ直ぐ通った可愛らしい小さなお鼻、大きな瞳、愛らしい頬。何処をどう取っても、美しい。唇なんてフルフルです。可憐で清楚で、ああー、何と言うのでしょう?尊い!」

 何を言うのかしら?ジョゼ。

「平凡なお顔ではありません」「そう。お美しいです。カレンデュリア様は」

 レア、ベル。私を褒め過ぎです。

 第一王妃殿下、フェリシー殿下。綺麗な方です。彼女に似ている私、ひょっとしたら綺麗な顔立ちなのかも!

 いいえ、思い上がってはいけません。平凡な私、特徴の無い顔の私、侍女達が持ち上げても、思い上がってはいけません!

「美しいです。カレンデュリア……」

 何起き掛けに何を言っているのです。ロック!貴方は寝ていなさい。

 全くぅ、何が、「美しい」ですか……。「美しい」のでしょうか?私。


「綺麗です」「美しい」「尊い」

 レア、ベル、ジョゼ。ありがとう。と言うか、ジョゼ、貴女は何を言っているのかしら?

「自覚無いのですお嬢様は」「ご自分が如何にお美しいのか、分から無いのですお嬢様は」

 何を言っているのです。レア、ベル。

「―――尊い。。。」

 意味分かりませんジョゼ。

 そもそも私、『東の黒髪の悪魔』って言われる程、忌み嫌われる存在ですのよ?美しい筈がありません。

『僕、カレンデュリアが綺麗なの知ってる。人間の美醜とかって全く分から無いけど、美しい心と言うのは知っている。カレンは美しい。そう感じる何時でも!』

 ありがとう。ネージュ。。。


「初仕事で、目の前で自殺者、とか。トラウマもんだろう」

「ええ、結構こたえました。当時は……。ロックさん達の初仕事はどのような仕事だったのです?」

 三人はお互いの顔を交互に見て、言いました。

「俺等、皆ソロだったんだぜ」

「俺、別パーティーに入ってた」

「一人で、採取系の仕事してた」

 意外です。ずうっと、パーティー組んでいたのだと思っていました。ロックさん、ソロ。マチアスさん、他の所属。エドさん、ソロ。

「パーティー組んだのって、白竜の窖亭に初めて泊まった後、だったよなあーエド」

「そうそう、あのハンバーグとか言うの食べながら、『パーティー組もうぜ』って」

「旨かったなぁー、あれ。作れる?」

 ハンバーグ、ですか。



「お肉、違いますが、今夜にでも作りましょうか。白竜の窖亭のとは、味が違うと思いますけど……」


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