02。
◇◇◇
「――――あ、れ?ええー、と。俺倒れてる?瞬殺?」
「マジ、瞬殺……。だわ」
一戦目、勝った!行けますわ!
「――――おい。おいおい、マジ、かー、ピエールよう。負けてんじゃ無ーよぅ。。。おい、ノエル!ボウガンじゃ無く、弓使え!用意するのはボウガンじゃ無く弓だ」
「パトリス、威力より手数ってことか?」
「ああ、速さ重視だっ!俺、初っぱなから火炎系魔法、射ち巻くっからよう」
ええ、っとおー。聞こえてますけど。………ああっ、そうですわ!
「見学者の皆様。危ないので、障壁。。。障壁系の魔法、使える方、いらっしゃるのなら、全力で張って下さいませ!私、加減出来無いかもしれませんので……」
二戦目は、二人。パトリス様が、杖を構えているので、魔術師ですね。ノエル様は、弓と帯同している短剣、それに杖も右腰にあるので、近接戦も得意そうです。遊撃担当なのでしょうか。ならば、先制攻撃です。
「用意はいいな。―――――始め!」
「火球!」
右手の平から小さな青白い火を放つ。ノエル様は弓矢を一本放った時点で二本目を放つ。
―――遅いです。同時に、大きな水球を作り上げたパトリス様。パトリス様、「火球」って言いませんでした?まあ、なんにせよ、それは悪手ですよ?
――――ドっっっ!
私の火球が、パトリス様の水球に呑まれた瞬間、大爆発を起こしました。しました。―――こう言うのって、『水蒸気爆発』とか言うのでしたかしら?私の火球、超高温ですのよ!
勿論、私は自分の四方に障壁を張りましたが、、、ああー、ノエル様もパトリス様も防御、怠った様子ですね。
観戦している方々、大丈夫でしたかしら?私に唯一賭けて下さった女性………、アトラさんでしたのね。彼女が、障壁を張って下さったようです。
って言うか、やり過ぎました!
「あ、あのー大丈夫ですか?怪我……」
ああーノエル様の右腕、あらぬ方向を向いてます。頭髪に至っては、ありません。燃えましたようです。パトリス様は……、気を失っておられるだけのようです。
「ご、ごめんなさい!少しは加減したのですが……、何方か、回復系の……、聖魔法お持ちの方、いらっしゃいませんか?ノエル様、ノエル様が骨折して仕舞われました。骨折させました!私、私の所為で、大怪我を………。私、私の……不注意ですわ!私の所為です」
「嬢ちゃん、全力で、と言ったのは、俺だ。気に病むことぁ無ぇ。それに、回復系統の魔術師、王国国内にはおらん。残念だが、ノエルは、暫く仕事出来無えだろう……。いや、今後、冒険者としては……」
「そんな、、、」
(僕、回復させられるかもよ?)
本当?ネージュ。出来るの?本当、治せるの?
「お願い!ネージュ」
『任されたっ!――――でも、初めてヤるから、怪我のトコ、固定してくれる?』
私の影から表れたネージュ。二年で大きくなったのよね、ネージュ。丈が2メートル越えてそう。でも、可愛いわ。真っ白で、お父様の髪の毛みたいだし。。。
「おお!」「なんだ!?」「でけー!」「狼?」「いいや、」「フェンリル?マジ、フェンリルじゃね!?」「おいおい、俺等、食われんの?」「こえーわ!」「神獣!?」
ネージュってば、大き過ぎるのね。
「小さくなれる?」
『なれるけど僕、回復魔法使うの初めてだから、身体小さくすると法力も小さくなるかも。多分、無理。失敗するかもだから。身体、そのままがいい。と、思う』
「ええっとぉ皆様、この子、この子ネージュ。ネージュは私のお友だちで、大きいけど優しい子ですの。だから、怖く無いのですのよ?」
顕現したネージュ。倒れているノエル様を囲う光り。青く淡い光り。優しい光り。ネージュの輝きは、柔らかくて 優しい。そして暖かい。
ノエル様の腕を癒す光り。徐々に光度を上げて行く。
「いっ、痛てぇー痛てぇー、放せぇ、放せよぉー!」
ノエル様、暴れて仕舞い、全く固定出来ません。どうしたら良いのでしょう。と、思っていましたらピエールがノエル様の身体に股がり抑え付け、パトリス様は腕をガッシリ掴んで、固定してくださいました。
ネージュの優しい光がノエル様を包みます。
『治った。かなぁ?大丈夫、だと思うよ?もう疲れた、戻る』
「―――…フェンリル。マジにフェンリルなのだな。ああー、ショーラ閣下の言っていた通り、フェンリルを飼っていたとは………」
『飼う?……失礼な。ボクは、カレンの友達だよ』
「そうよ。ネージュは私の子どもなのっ!」
『子どもぉ?それはそれで、ボクに失礼じゃ無いの?あ、治ったかなぁ?コイツ…』
三丁目のノエル様。大丈夫、みたいです。
「――――で、これが組合員証。ここに署名しろ」
金属板、これがギルドカード。
特殊なインク、らしい。そのインクに羽ペンを付け、書名する。
『カレン・リュシー』。。。
偽名でも良い。って、ジャン=ポールさん、組合長さんが言っていらしたので少々、アレンジです。
これで今日から、私、冒険者ですわ!『赤』スタートですの!三丁目「西区三番通り団だ!」さん達が、
「青級の俺等より強えぇ嬢ちゃんが『赤』程度とは思え無ぇーが、文句無しで、『赤』だ!」
と、仰って下さいました。
そう言う訳で、私は本日より冒険者です!早速、お仕事を………。
「『弟切草求む』。これ、良さそうね」
依頼版から依頼書を剥がして受付窓口へと持って行く。コラリーさんが窓口業務だ。
「コラリーさん、これ、よろしいですか?」
「良いです。が、先程は、失礼致しました。あれ程の力量がありますのに、私、貴女を侮っていました。申し訳ございません。カレンデュリア様」
「そんなこと、どうでも良いのです。それよりもこれ、如何です?弟切草の群生地って、お分かりになられますでしょうかコラリーさん?」
「これはですねぇー………」
コラリーさんの言う群生地は、ゴブリンの営巣地が近く。はっきり言って、「危ない」と言う。
ゴブリンと言うのは雄だけで、生殖の為、他種族、例えば人間の女性を拐い犯すのだそうだ。そうして、ゴブリンは増えて行くのだとコラリーさんは言う。
「―――ですから、カレンデュリア様。弟切草は諦めて、違う依頼を見繕って下さいまし」
「では。ゴブリン討伐、しますわ!」
王都の西門を抜けて森に入るのだが、王都西の森の手前に集落がある。
小さな村、『フォリオ』。
「ウチのテファも拐われた。嬢ちゃんが冒険者って、ウソだろう?逃げな。森に入っちゃいかん。危険だ!」
とは言われたが、森に入った。
直ぐに、ゴブリンの一団、五匹だが、が居た。
瞬殺。
「コラリーさんが言ってた。討伐した場合、部位は右耳、若しくは、胸の魔石、と…」
胸に、無いわね魔石。では、耳を……、切る。袋に五つの右耳を入れ、先を進みます。
大きな岩山があります。洞窟になっているのでしょうか。二匹、ゴブリンが入り口っぽい所に立っています。
先手必勝です。「火球!」。
小さな青白い炎は、ゴブリンの手前で大きな火球になる。そう言う魔法なのだ。
―――ゴオーッ!
真っ黒焦げになって仕舞いました。耳、取れますでしょうか?ああー、無理っぽいです。焦げ焦げです。
まあ、そんな訳で、私は弟切草の採取目的で、ゴブリン討伐を行うのでした。
薬草の『弟切草』を採取する予定が、ゴブリン討伐になりました。
おそらく、この岩山はゴブリンの営巣地。一気に殲滅。と考えたのですが、数名の女性…、女児が拐われているようです。
いい加減、ゴブリンの右耳、60を越えています。もう袋に入りません。
それにしても、胸、心臓傍にあると言う魔石、全くありません。もっと高位の魔物であればあるのでしょうか?
おお、奥にでっかいゴブリンがいます。
「火槍!」
火玉ではありません。槍をイメージした『火の槍』です。
真っ直ぐに火槍はゴブリンの胸に吸い込まれ、ゴブリンは絶命しました。
そのゴブリンの下に裸の女の子がいました。
「ナイフ、そのナイフ、貸して下さいませんか?」
私が、ナイフを渡すと、その女の子はいきなりご自分の喉を引っ裂きました。
鮮血が迸りました。
一瞬の出来事でした。
何があったのでしょう。一体、私は何を見たのでしょう。私に何が出来たのでしょう。
自害する少女を私は只、見ていることだけだったのです。
大きなゴブリンの体内。心臓の傍には、大きな魔石がありました。
ゴブリンの右耳は、全部で72個。焦がしてしまって耳を取れなかった20体以上はこの際無視。魔石は1個。そして、助けられなかった少女……、女性、三人。遺体二つ、目の前で命をたった少女が、一人。。。彼女、大きなお腹だった。多分、ゴブリンの子を宿していたのでしょう。
私は、フォリオ村でことの顛末を報告しました。
「そうか、テファ、自害したのか。。。」
何ともやるせない。そんな気分になる初仕事でした。王都に戻り、報告しました。
72個の耳と一個の魔石。他に20数匹のゴブリンが居た営巣地であったことを報せると、コラリーさんは慌てて奥に引っ込みました。
間も無く、三階のお部屋……、ジャン=ポール様、組合長のお部屋です。に連れて行かれました。
「ええー、と?」
「おまえ……。。。嬢ちゃん一人で、ゴブリンの営巣地、殲滅したのか?」
何を興奮してらっしゃるのです?ジャン=ポール様。真っ赤なお顔で、お鼻が大きく開いておりますわ。
「そうです。でも、救えませんでした。お一人、救えた筈でしたのに、不用意に渡したナイフで、自害されて、自殺させて仕舞いました……。私は未熟者です」
俯いている私にギルメは言いました。「顔を上げろ。誇れ!」と。
「おまえは、誇っていい。村を救ったのだからな。そして、今日よりおまえは、『青』だ!」
こう言うことは、異例なのだそうで兎に角、私は一日で三階級上がりました。ああ、そうだ。試験での賭け。アトラさんとギルメ、二人は金貨10数枚頂いたと言うことでした。
私は、依頼書の『弟切草』を10本。それと、ゴブリン討伐の報酬で金貨四枚と銀貨六枚頂きました。弟切草の方は銀貨五枚で、ついでのゴブリンのが多いと言う結果でした。
自害させた女の子。どのようにすれば……、どのようにしていたら良かったのでしょう。どうしたら救えたのでしょう?「生きて行くには辛かったであろう」と、彼女のお父様らしい方は仰いました。
ですが……、私、辛いです。
何か、どうにか、私、出来無かったでしょうか?何故、死なせてしまったのでしょう。
あんな小さな少女さえ、救え無い私。。。
「おまえが、そう思うのなら、彼女は救われる」
私を抱き締めるお父様。優しいお父様の言葉が私を救うのです。
こうして、冒険者登録をした一日は終わりました。そのまま、私はお父様のベッドに潜り込みました。
◇◇◇
「初っぱな、赤かよー!」
「スゲーなぁー」
「なる程、その歳で、『銀』なのも頷ける」
そう私、今は銀級冒険者。『黒髪の突風』とか、言われております。
恥ずかしいですわ!
と、言いますか私、黒い髪の毛以外、特徴無いのでしょうか?確かに平凡な顔、ですし、色白な肌。
特徴は、唯一黒髪だけなのでしょうね。
「平凡、ではございません。はっきりとした目鼻立ち、と、言いますか、真っ直ぐ通った可愛らしい小さなお鼻、大きな瞳、愛らしい頬。何処をどう取っても、美しい。唇なんてフルフルです。可憐で清楚で、ああー、何と言うのでしょう?尊い!」
何を言うのかしら?ジョゼ。
「平凡なお顔ではありません」「そう。お美しいです。カレンデュリア様は」
レア、ベル。私を褒め過ぎです。
第一王妃殿下、フェリシー殿下。綺麗な方です。彼女に似ている私、ひょっとしたら綺麗な顔立ちなのかも!
いいえ、思い上がってはいけません。平凡な私、特徴の無い顔の私、侍女達が持ち上げても、思い上がってはいけません!
「美しいです。カレンデュリア……」
何起き掛けに何を言っているのです。ロック!貴方は寝ていなさい。
全くぅ、何が、「美しい」ですか……。「美しい」のでしょうか?私。
「綺麗です」「美しい」「尊い」
レア、ベル、ジョゼ。ありがとう。と言うか、ジョゼ、貴女は何を言っているのかしら?
「自覚無いのですお嬢様は」「ご自分が如何にお美しいのか、分から無いのですお嬢様は」
何を言っているのです。レア、ベル。
「―――尊い。。。」
意味分かりませんジョゼ。
そもそも私、『東の黒髪の悪魔』って言われる程、忌み嫌われる存在ですのよ?美しい筈がありません。
『僕、カレンデュリアが綺麗なの知ってる。人間の美醜とかって全く分から無いけど、美しい心と言うのは知っている。カレンは美しい。そう感じる何時でも!』
ありがとう。ネージュ。。。
「初仕事で、目の前で自殺者、とか。トラウマもんだろう」
「ええ、結構こたえました。当時は……。ロックさん達の初仕事はどのような仕事だったのです?」
三人はお互いの顔を交互に見て、言いました。
「俺等、皆ソロだったんだぜ」
「俺、別パーティーに入ってた」
「一人で、採取系の仕事してた」
意外です。ずうっと、パーティー組んでいたのだと思っていました。ロックさん、ソロ。マチアスさん、他の所属。エドさん、ソロ。
「パーティー組んだのって、白竜の窖亭に初めて泊まった後、だったよなあーエド」
「そうそう、あのハンバーグとか言うの食べながら、『パーティー組もうぜ』って」
「旨かったなぁー、あれ。作れる?」
ハンバーグ、ですか。
「お肉、違いますが、今夜にでも作りましょうか。白竜の窖亭のとは、味が違うと思いますけど……」




