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宿屋の娘の恋事情。  作者: 潤ナナ
第一部.宿屋の娘。二節.冒険稼業。
15/24

01。

◇◇◇

 白竜の窖亭が再開して、早二年の時が過ぎ、私カレンデュリアは10歳になっていた。


 年明け早々、ここ王都の冒険者ギルドに来ている。

「あのっ、ジャン=ポール様、いらっしゃいますか?」

 窓口の女性、茶色の髪の毛でヘーゼル色の瞳の幼い感じの方、10歳の私が言うのも変だが………。その方が言うのです。

「ジャン=ポール組合長(ギルドメートル)は、約束の無い人にはお会いできません」

 一瞬、何を言われたのか、分かりませんでした。

「約束はあります。あっ、名前をお知らせすることを忘れていましたわ!私、カレンデュリアと申します。ジャン=ポール様は……」

「あなたのような、小さな女の子には、会え無い方なのですよギルドメートルと言うのは。分かります?」

「確かに私は貴女と比べて、小さいのでしょう。ですがお取り次ぎをお願い致します。カレンデュリアがお会いしたい。そうお伝えして頂ければ……」

 受付窓口で、こんなやり取りをしているからでしょうか。「早く何とかしろ!」「餓鬼、そこどけ!」と、後ろに並ぶ方々が騒いでいます。

「お嬢ちゃん、他の人の迷惑ですから、一度下がりなさいな」

 受付の女性が、手振りをしながら、言いました。そして、

「お待たせしました。―――次の方どうぞぉ」

 と、もう私など居無いかのように仰いました。少し悲しいです。


「ったぁーい!何すンのぉー痛いじゃ無いぃ!」

 受付の女性が頭を両手で押さえていた。直ぐ後ろに立つ背の高い大きな男性に拳骨を貰ったようだ。

「おい、コラリー!見た目でこのお方を判断するんじゃ無えっ!」

「へ?」

「その嬢ちゃん……、カレンデュリア嬢を見たくれで決め付けんなって言ってンだ!―――すまなかったな、カレンデュリア嬢」

「いいえ。(わたくし)が、このような見た目……、子どもであることがそもそもの原因です。それで、彼女に誤解を与えたのです。おそらく、言葉も適切では無かった。と言うことの結果なのですわ」

「っくうぅ~、良く出来たお嬢ちゃんだぁ。。。おいっ、誰かコイツと窓口業務代われ!コラリー、組合長室(俺の部屋)に茶菓子用意しろ、急げっ!」

「は、はいっ!」

「それとぉ―――――、おい、ピエール、おまえ等、少し割のいいバイトしねーか?最大三人に金貨三枚。最低でも銀貨三枚やる」

「「「おーーー!」」いいねっ、やる!」

「ンじゃあ、ちょっとそこで待っとけ!」

 ジャン=ポール様に促され、私はギルド三階のお部屋に通された。マホガニーの大きな机と焦げ茶色の皮張りのソファーのあるお部屋です。壁際にある棚には、たくさんのトロフィーが飾ってある。その少し上に陛下とお妃様お二人の絵が飾ってあった。

「で、では、あたし、これで……」

「まあ、待て」

 お茶を用意し終え、退室しようとしていたコラリーさんはジャン=ポール様に呼び止められて、眉尻を下げている。

「コラリー、おまえも座れ。カレンデュリア嬢、座ってくれ」

 私がソファーに座るのを確認して、ジャン=ポールさんは、向かい側に腰掛けた。

「コラリー、この子、カレンデュリア嬢は豊穣祭(ポンレコルト)の競技大会……武闘大会の三年連続の優勝者だ。勿論、12歳以下の部の。だがな。八…、いいや、正確には七歳の時からの優勝者…」

「マジっすか?だって、女の子……ですよ?」

「あのなぁコラリーよぉ、本当に知ら無えーのかぁー、黒髪のぉー美少女のぉ女の子って言ったら……」

「王子様の婚約者で、あ、えっ、ええー、えっ、英雄さんの娘さんんーーーっ!!!?」

「やっと、分かったみたいだな。おせぇーよ!―――っでだ、お嬢ちゃんは先月、10歳になったんだよな?今日は冒険者登録に来たんだと思うが…」

「はい、その通りです」

「うん。で、コラリー、おまえに訊くが……。登録時、最初は『(セーブル)』だが、登録試験を行って、試験官の判断で等級(クラス)は何処までの上からのスタートが可能だった?」

「ええーっと、二段飛んで、『(ヴァート)』です」

「違う。とは言え、普通はそう答えるもんだ。だがこの嬢ちゃんは、『(ギュールズ)』スタートだ。おそらく」

「ええっ!三段飛ばしって……、試験官は(アジュール)以上の人で、その試験官が認めた上で、統括組合長(グランメートル)と所属国の国主の承認あっての、、、更に『白金級(プラティヌクラス)』の方の署名が必要なのではありませんでしたか?」

「良く答えられました。合格。窓口業務、外すつもりだったんだよ?さっきのお嬢に対する対応見てさぁ。良かったなーコラリー、おまえ、就職早々、職追われかなねー状況だったンだぜ、さっきまで…。で、これだ」

 ジャン=ポールさんが手に持っていた筒から一枚の羊皮紙をテーブルに出した。広げた羊皮紙を見て瞠目するコラリーさん。

「こ、これ、――――アルバン・アフリア……統括組合長。それと、、、ディクリス四世……陛下の署名。エリエンス・スィエル・ド・ショーラ……伯爵。アラハバキ・ルナール。誰?」

「閣下は分かるだろ?アラハバキ・ルナール。彼女も我が国のプラティヌランカーだ」

「『カレンデュリア・リュシー・ド・ショーラを階級『赤』の組合員と認めるものとする。』って、何ですか?まだ試験も行っていないのにっ!」

「これから行う。まあ、ついでだ、おまえも来い。コラリー」

「あのう、ジャン=ポール様、試験って、、、私何を行うのでしょうか?」

 何故か、勝手にお話しが進んでいるようで、ちょっと不安ですの。訊かずにはいられません。場合によっては、何か用意する物も入り用かも知れませんし。

「なぁーに、簡単だよぉ。試験官と少ぉーし戦うだけ」

 連れて行かれた地下。半地下ですね。窓が上に付いています。広い地下室は堅牢な部屋でした。

 四方の壁は金属板が嵌め込まれています。見学席、でしょうか?降りて来た階段口横に立ち見席があります。

「おぅ、来たな。コイツ……、失礼。この女の子、カレンデュリア嬢の試験官を行って貰う。嬢ちゃん、試験官の青級冒険者(アジュールランカー)、ピエールとパトリスそれとノエルだ」

「って、おいおいギルメ様よぉー、こん餓鬼、相手にすんの?俺等。冗談……」

「俺が冗談嫌いだって、知ってンだろ?」

「や、でも、これは無ぇーだろう。女の子相手とか、バカにしてんのか、ギルメよおー」

「俺達、舐めんのも大概だぜ」

「全くだ!」

 三人共、お怒りですの。どうしましょう。。。と言いますか、どうして怒ることがあるのでしょう。分かりません。

「一応、言っておくが、このカレンデュリア嬢は、ショーラ閣下の娘さんだ」

「娘。閣下。誰?」

「お、おい、ピエール、あれだ。ショーラ閣下って、伯爵の……」

「お貴族様の娘?だからなんだってンだよノエル」

「バカかピエール。英雄さんだよう。ショーラ伯爵って言ったら」

「はあ?パトリスよお、だとしてもこんな嬢ちゃん、剣なんて握ったこたあ無ぇだろうし、魔法だって使えんだろうが、実戦とかの経験無さそうな美少女ちゃんだぜ?」

「ホント、無知って罪だわー」

「つか、ピエールがバカってだけだわ。パトリスぅ。ホント知ら無ぇの?俺、去年の夏当たったんだわぁー、その美少女ちゃんの兄弟子のサラディンってイケメンに」

「去年の夏、って、国王主宰の武闘大会のことか?」

「ああ、ピエールも出場した(出た)ろ?で、優勝がそのサラディンだ。あいつ試合ごとに得物変えてたよな?俺ん時、あいつ得物なんだったと思う?」

「見て無ねえ」

「俺、知ってる。たしか、タガー一本」

「そう。俺ぁー、舐められたもんだぜって思ったがよぉー」

「瞬殺だったなっ」

「そうなんだよ。で、あいつ、サラディンのヤツ、小声で呟いたんだ。『俺が勝ち進めんのもお嬢様が出て来るまでだろうな』って。。。」

「―――お嬢様。って、この娘っ子のことか?」

「でもよぉノエル、今試験受けるってこたぁー、まだ10歳だろこの子。まだ六年も後の話し、普通呟くかぁ?」

 何だか私の評価が上がっていますのね。っと言うか、夏の武闘大会って、成人する16にならないと出場出来無いのよね。ああっ、私、冬生まれ。つまり七年立たないと参加資格が………。

「三丁目の皆さん……」

「「「ちっがぁーうっっっ!!!」」」

「ええー!?スイマセンスイマセンスイマセン」

「受付のねーちゃん。俺等は三丁目、じゃ無ぇー!」

「『西区三番通り団』だっ」

「間違えんじゃねーよ!失敬なっ」

 パーティーの名前かしら?面白い方達、ね。

「そのっ、西区三番通り団、さん。。。その大会の出場資格は、確か成人していることの他に、主催者が………、つまり、陛下がお認めになられた人も資格を得ることが出来た筈です。えっと、ですよね?ギルメ」

 何だろう『ギルメ』って、、、ああ、組合長(ギルドメートル)様のことかしらね。ギルメ、ジャン=ポール様をギルメって。私も使いましょう。素敵、ギルメ!うん。美食家っぽいわね!


「まあ、コラリーの言う通り、陛下が言えば参加出来る。が、その場合、陛下の一存にも『根拠』ってのが必要になる。未成年であっても、国軍か騎士団の所属、若しくは警邏隊。これらは最低12歳以上でなければ、見習いにすらなれん」

 じゃあ私、後二年……、三年後です。参加出来るのは。

「―――――もう一つ。冒険者として、青級(アジュール)以上の未成年、だ」

 おおーーー!頑張る!アジュールに私は、なる!

「頑張って、青目指しますっ。ギルメっ!」

「おいおい。嬢ちゃんまで、ギルメってぇー。まっ、ギルメだが…。で、バイトの件、どうする?一応、最大金貨三枚、とは言ったが条件付きだ」

「おおう、訊くよー条件」

「先ず、一回戦う毎に銀貨一枚。試合時間五分以上だったら、金貨一枚」

「つまり、俺等一人の試合に付き、ってことか。んじゃあ、俺から~」

「いいや、一回戦目は、魔法無しの剣、若しくは槍、戦斧、タガー……、要は物理のみ。二戦目は、魔法ありの弓、ボウガン等での一回目と違って、遠距離戦。二人で対していい。最後は、おまえ等三人対嬢ちゃん。この三回戦だ。何れも、五分以上の戦闘なら、金貨一枚出す」

「「「「はあーっ!?」」」」

「そんなのこの子、可哀想です!イジメですか!?」

「いくら何でも、酷えじゃ無えのギルメ!」

「おいおい、マジかよぉー」

「いや、いいんじゃねえ?金貨三枚、頂きだぜい」

 何だか盛り上がって……。。。あら?観客、増えてる!?

―――――――へえー。―――面白そうじゃん―――何?女の子対三丁目さんかいなぁ―――どっち、勝つ?―――賭ける?―――バッカ!賭けンなん無ぇーだろ?―――そりゃどうだ!――――

「私、あの子に金貨一枚賭けるわ」

「マジか?」

「俺、三丁目さんに一枚」

「俺も三丁目!」「俺も」「オラッチも」「俺も!」「三丁目に一枚」「俺も一枚、三丁目」「三丁目に金貨!」

「おいおいぃぃぃー!娘っ子に賭けんの一人って、あのねーさんだけじゃねーのぉ!?もし娘っ子勝ったら、ねーさんの総取りってこったあー」

「んなこたぁー無ぇーよぉー。万が一に勝てたら。だろぉー?」

「ンじゃあ俺も一枚噛むわぁー。嬢ちゃんに一枚」

「おおーい、ギルメ。あんた、寝ぼけてんのか?」

 どうしよう?負けられ無い。頑張って、いい成績出して、出せば認めて貰えるのであれば………、んん?試験の評価は、三丁目さん?でしたっけ、が出すのでしたでしょう?

「あのっ、ギルメ様、評価の基準と言いますか、評価はどのように出すのですか?単純に勝てば良いのですか?」

「いいや、勝ち方も重要。負けても、その試合運びも大事な評価基準になる。まあ、勝つのがいいのは、当然だがな!因みに、三丁目は、青級パーティーだ。全力で勝ちに行け!嬢ちゃん」

「あのう、全力。いいのですか?怪我……、とか、大丈夫でしょうか?」

「あいつ等の心配か?相変わらず優しいなあ、嬢ちゃんは」

「いやいやいやいやぁー。嬢ちゃん自身の怪我ってことだろうがぁー。ギルメ、冗談キツい……」

「おい、ピエール。冗談言わ無ぇーって言ってたよな、ギルメ……」

「俺等、全力で行こうぜ。嫌な予感がする。。。」




 ◇◇◇

「(あれからもう7年。すっかり大人の女性になった宿屋の女の子。あの頃の俺は、成人したばかりの若造……、)餓鬼だった」

「今も餓鬼じゃんロック」

「ウッセーよ、マチアス」

「なんだ。おまえ等?」

 そう、どうして、『アホい放蕩』の方がいっしょに居るのでしょう?

 あの町、帝国の砂漠の玄関口『ロンターノ』で別れた筈ですのに。

「このツルペタめがっ!」

「コイツ殺していい?」「おう、ヤれベル!」

 ベルぅ、程々に、ね。ベルナール。

 結果、やり過ぎです。ロックさん、気を失ってお仕舞いになられて、荷車に載せる羽目になって仕舞いました。アランさんが迷惑しています。

「そろそろ、夕刻です。野営の準備、致しますか?」

「そうですね。カレン様、私達、薪になる物を探して来ます」

「では、俺も」「俺も」

「ったりめえぇだぁ、付いて来たんなら仕事しろっ!てめぇのリーダー、寝てるだけだし」

「多少の役には立ってくれよぅ」

「双子さん、辛辣です」

「頑張って集めますよ。薪」

 マチアスとエド。意外、良い方。。。


 本日は、昨日ジョゼとレア、ベルの狩って来た鳥の臓物とお野菜を煮込んだスープスパ。比較的に安かったパスタの乾麺を多く購入していたので。スープスパを作りました。

「旨い!」「美味しい!」

 ありがとう。ベル、レア。

「とても、貴族の令嬢の料理、とは思えません!最、高ですカレン様」

 う、はあぁー、嬉しい。本当に美味しいの?

「旨い!」「旨いっすよう。カレンさん」

 ありがとう。で、

「何故、あなた方がこの商隊に付いて来ているのかなぁ?」

「そりゃあー」「ええーとぉー」

「俺達……、俺が、惚れた、………からだっ!」

 ええーっ!!!

「アランさん、に?」

 ロックさん。男色のご趣味のお方だったのですか!??


「違っ…………。」


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