09
本日2話目。
主人公気絶から復活により、視点が主人公に戻ります。
「お、矢田、大丈夫か-?」
「あ、おう。大丈夫だ」
目が覚めると、部屋に大学同期の美女がくつろいでいた。……いや、高校も同じだったけど。とそれよりも、庭に何か起きたはずだ、と思い出し、庭へと続く扉へ向かう。
「なうー」
とてとてとウチの同居者も着いてくる。さっきのは、恐らくパニックを起こしたのだろう。にしても、キーでも恐いモノがあったんだな、とほっこりした気分になる。
「なうー」
さて問題の庭だが、扉を開くと、今朝と一切変わらない状態だった。
「あ、お兄ちゃん、気がついたんだ?」
「あ、おう。 どうも、こいつがパニックを起こしたらしくてな」
「なうー」
「ソ、ソウナンダー」
幼馴染みはそう言いつつも、庭に水を撒いている。ああ、そう言えば今朝水撒くの忘れてたっけ?
「なうー」
「さっきからどうした、キー」
「うー」
着いてこいとばかりにキーが先行する。家の方向だが……。
「あー、多分エサじゃないかな」
「ああ、そう言えばエサも忘れてたか。庭ありがとうな」
「あっ、うん」
案の定、キーが向かった先は、エサが置かれている棚の前である。そこで一声鳴き、じっと俺の方を見る。
「ちょっと待ってろ」
エサを取りだし、さらに入れるとガツガツと食べ始める。ここまでがっつくのは初めてかも知れないな。
「矢田、もう私帰るわ」
「ん。そう言えば、なんで居るんだ?」
「レイに呼ばれた、以上」
「ああ、そっか」
そう言えば、高校の時から先輩後輩の関係であることを思い出す。俺が家で倒れているのを見て、アイツもパニックにでもなったのだろう。
「ありがとな」
「ああ、矢田も色々と気をつけろよ。……お前は師匠と同じで巻き込まれやすいんだから」
「何か言ったか?」
「んー、いや」
最後の一声だけなぜか寂しそうに、そのまま彼女は帰っていった。その姿をキーは追う。玄関で撫でられ、一声鳴き、再びご飯の続きをしに戻ってくる。ふと、その姿がいつか見たような景色と被る。恐らくどこかで、この一人と一匹の姿を見ていたのだろう。
「まぁ、お前も色々あったんだな」
「ぬやん」
…
……
………
時間は遡る。
ある日、猫は自由になった。
あの口煩かった人間は居なくなった。
大勢の人間が現れた。
自分をどうにかしようと狙う気配を感じたのでしばらく離れようと思った。
「ノアール」
そう呼ぶ人間が居なくなった時とは大違いだと思った。
猫は自由になった。
人間の男と出会った。
ソイツは、確かあの人間の仲間の仲間……だったはずだ。
……未来が視えた、この男が居なくなる未来が。
「うなう」
猫は『仕方なく』飛び出した。
物語は一旦、ここで終了です。
読了ありがとうございました。
……余談が一話だけ続きます。