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ネコは日常を駆ける  作者: Thi
ネコとかいぬし
8/10

08

本日も1日2話更新です。

次は15時更新です。

引き続き、幼馴染み中心です。


『ひう、我が世界がどうなっても良いのかー! きちくむすめー』

「いや、アンタの世界、知らんし」

『我が世界は、なぜか勇者が転生せず、召喚してもすぐに扉が閉じるわで、世界的にも危機的状況なのじゃぁ!!』

「それがお兄ちゃんとどう関係あるのよ?」

『知らぬ。 だが、こうしてワタクシが呼ばれたと言うことは、『お兄ちゃん』様はこちらの世界に呼ばれるはずじゃったのじゃ!』

「……ごめん、そろそろ腕疲れてきた」

『そんなぁぁ!?』


 青いゴミ箱に半身が入っている状態でそんな話をし出すものだから、情けとしてレイは腕を止めたが、触れてないと碌に持てなくなってしまう猫付きの状態である。一応、女子高生である彼女に限界が来ていた。


「じゃあね」


 と言うわけで、精霊の声を聞くよりも早く手をパッと離す。そして、ゴミ箱の中へと消えていった。レイがゴミ箱の中を除くと、いつも通り、何も入っていない状態になっていた。


「転生・転移、ね」


 ふと最後の言葉を思い出す。レイもまたラノベを愛読している。ここ最近はネット小説も読み始めた。そして転生モノで良くあるのは現世で何かしらの事故に遭い、そのまま別世界で生まれることである。


「ノワちゃんの出会ったあの日、あの子が足止めしてなかったら、お兄ちゃんはあの事故に巻き込まれてたのかしら」


 その日、トラックが坂道で暴走する事故が発生した。被害は公園の塀のみ。しかし、そこは彼がいつも通る道であり、彼がそこを通るのが数十分早ければ十分に巻き込まれた可能性がある。


「そして、あの日のお兄ちゃんの居間の扉、完全に異次元に繋がっていた……」


 数日前に感じた魔力の揺らぎ、慌てて家に突入したが、居間への扉がまるで別の、異なる法則へと繋がっているような、感覚を感じたのだ。ただ、魔力によるものと分かったため、すぐに解除できたのだが……。


「あれが、召喚術……ってやつ? ねえ、ノワちゃん。 あれ、ノワちゃん?」


 そこで、(ようや)く近くにあの猫が居ないことに気づく。もう帰ったのだろうか。いや、ちょっと待て、とレイは記憶を辿る。


「確か、剣にくっついていて、私が手を離して……、あれ?」


 剣が落ちていくときに、黒い物体もくっついて一緒に落ちていったのを目撃したような気がする。つい、精霊のせいで冷静になれていなかったが……。


「え、ちょっ、ノワ、ノワちゃぁぁん!?」


 もう一度、ゴミ箱の底を確認する。今度はしっかり、手がすり抜けたりしないかなど、頭から突っ込んで隅々を確認するが、至って普通の、空のゴミ箱である。


「の、のわちゃんっ……」




……


………


「ついに後輩が知り合いの家のゴミを漁るようになったんだが、私はどう反応したら良いんだ、レイ」

「その声っ、先ぱ――いた、狭っ」

「やれやれ、デカい揺らぎだったから来てみたものの、後輩のストーカー行為を目撃することになるとはな」

「ちょ、ちょっと待ってください。まだ、まだ大丈夫ですよっ! それにこれには深い意味がありまして……」


「うん、前半の言葉は聞かなかったことにするよ。……で、深い意味とは?」

「猫、えーと、その、ここの人の猫を一緒にゴミ箱に突っ込んでしまいまして……」

「何この子、まずは飼い猫から排除しようとしたの?」

「にーう」

「違いますって。ちょっと人の想い人を奪う自称精霊を排除するときに事故で――」


「……さっきと何が違うのかよく分からないのだが」

「にうー」

「ですから、一緒に排除しちゃって……えーと」

「結局、排除しちゃってんじゃん。で、その排除した猫ってこの子のこと?」

「うなう」

「そうそう、そんなってあああああ!! ちょ、ノワちゃん、無事だったんです「ぬあうっ」ぐふっ」


「まぁ、うん。一緒にゴミ箱に突っ込まれたらそりゃ怒られるわな」

「ぬやう」

「ひっ、ごめんなさい」

「動物に土下座する人、初めて見たわー」


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