05
「さすがにこの暑さは耐えられねぇ」
午後の授業が無いため、早々に帰ってきた俺は居間の冷房を真っ先に付ける。
「にう……」
どこかにいた同居者もふらふらと足下に寄ってきた。そのまま通り過ぎて、冷房の風が当たるところで丸まった。どうやら、彼女もこの暑さにやられていたようだ。
「あー、つけっぱなしも考えるか……」
今までペットを飼ったことなかったから考えたことは無かったが、室内飼いだと付けっぱなしの方が良いんだろうな。でも、キーはちょくちょく勝手に外へ出かけているみたいだし……。この間は隣の家の中に居たらしいし。
「にうー」
こうやって考えると、随分と自由だな、こいつ。他の猫もこんな感じなんだろうか…?
「ま、他の猫のことを考えても仕方ないか。キー以外に飼うつもりないし」
…
……
………
「お兄ちゃん、いる?」
「おう、居るぞ」
そう言えば、ラノベとかギャルゲーだと主人公になれる環境してるんだよな、俺。両親居ないし、そのまま一人暮らししてるし。隣の家に幼馴染みは居るし。あとは、幼馴染みより美少女と出会えば完璧だな、うん。
「?」
「いや、幼馴染みより美少女って割と範囲広いなぁ、と」
「いきなり酷いね!?」
「にーう」
キーからも非難の声が挙がる。いや事実、大学に一杯居るからな。……こっちがあまり話しかけないだけで。
「……ぐぬぬ、ライバルは蹴落とす? いや、既成事実の方が早い?」
「何か言ったか?」
「お兄ちゃん、質問があります」
「何だ?」
「人口を減らす方が良い? それとも増やす方が良い?」
「???」
「にーう」
一体、突然何の話だ。ほら、キーも呆れてんぞ。そう言えば、この間買っておいたアイスがいくつか残ってたな。
「お前も食べるか?」
「はっ、これは色気でゆうわくするちゃんすでは…?
お兄ちゃん、棒アイスが食べたい!」
「……かき氷しかないけど」
「なんで?! こういうときって、そう言うもの用意しておくんじゃ無いの?」
「いや、なんでって言いたいのはこっちの方だよ」
……全く。とりあえず、ふたり分のかき氷、レモンといちご練乳か。レイは柑橘系が好きだったはずだな。
「ほら、レモン」
「ありがとー」
さて、俺はいちご練乳……って、この蓋、固いな? っと、ちょっと練乳が服に跳ねたか。
「ちがう、ちがうのっ、そうじゃない、それ私の役目っ」
「?」
「にーう」
……よく分からん幼馴染みだなー。ほら、キーもまた呆れてる。