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ネコは日常を駆ける  作者: Thi
ネコとかいぬし
4/10

04

 

「……またか」


 ここ最近、同居者こと猫のキーが玄関に妙なものを置いていく。

 今回は炭?のようなもので、触るとボロボロに崩れてしまった。


 俺は馴染みとなった箒と塵取りで近くのゴミ箱に捨てる。このゴミ箱は古き良き、あの青い蓋付きの、いかにもザ・ゴミ箱という感じのゴミ箱である。

 そして、その蓋の上にチョコンと黒い毛玉が乗っかっていた。


「キー」

「ぬやぁ」


 一声鳴くと、彼女はゴミ箱から居り、どこかへ出かけて行ってしまう。ここまでが、いつものパターンである。



 …


 ……


 ………


「で、お兄ちゃん、その黒いモノの出所が知りたくて、ノワちゃんをストーカーしてるってワケね」

「人聞き悪いな。 ちょっとした飼い主による調査だ、調査」


 朝。キーが家から出て行くのを確認後、こっそりと後をつけていたのだが、その様子を隣の住人にバッチリとみられていたらしい。


「まぁ、警察のお世話にはならないでね」

「……なるかよ、相手はただのネコだぞ」

「挙動不審もいいとこだと思うけど」


 さすがに電柱の後ろに隠れるのはベタすぎたか。だが、相手は動物だしなぁ……。何かシックスセンスでもあるかもしれん。


第六感(シックスセンス)は否定しないけどねぇ。 ただでさえあの子、賢いし……」

「だろ、飼い主に似たんだと思うぜ」

「じゃあ、前の飼い主だね」


 前の飼い主と言えば、お婆さんか。きっと近所でも名を馳せていたのだろうか。


「いや、あの子のことをノワールって呼んでたお姉さんの方だけど」

「そう言えば、ノワって呼んでるのってそれ由来か」

「そだよー、お姉さんも居なくなっちゃったから、そう呼ぶ人いなくなっちゃうのは可哀想かなって」

「そっか」


 アイツ(キー)も色んな経験をしてウチに来たんだな。そう思いつつ、目線をターゲットに戻す。現在は近所の子供に戯れられているらしい。


「クロちゃんげんきー?」

「うなうー」


 ゆらゆらと二本の尻尾を揺らしながら、子供の掴み攻撃を華麗にかわす。つーか、尻尾が早すぎて二本に見えるって、最近のネコ、やべえな。





 しばらく子供と戯れた後、彼女はそのまま公園の脇にある草むらへと飛び入る。


「ふむ、ホシが動いたようだ。 ……レイ?」

「あ、うん。 お兄ちゃん、何かな」

「いや、キーが草むらに突入したんだが、どうした?」


 そういえば、随分と先ほどからずっと大人しかったが、何かあったのだろうか。それとも体調か?


「いやぁ、端から見てたらネコと戯れる幼女を監視する不審者かな、って思ってただけだから。 うん、お兄ちゃん、私、成長しちゃってゴメンね?」


 そう言いつつ、少しずつ距離を取っていく幼馴染み。 ……って、ちょい待て、お前も真横で同じことしてただろうが!


「あはは……って、ノワちゃん草から出てき……あー……」

「どうし――痛っ」

「ぬあう」


 爪ありの猫パンチが俺のふくらはぎに直撃する。もはや、ただのひっかきである。そして、そのまま元の草むらへと戻っていく。


「ぬやぁ」

「……ついてこいって、言ってるみたいだよ、お兄ちゃん?」

「あ、ああ」


 ひっかかれた痕を気にしつつ、キーの入った草むらへ案内されると、そこに少し大きな枝が落ちていた。


「ん、随分と大きい枝だな」

「……普通に杖だね」

「なう!」


 その杖を何度も猫パンチしたり、頭で押したりしようとしているが、何かが引っかかって動かない。軽く持って引っかかっていた蔓などを払う。


「いや、まぁ、どうするんだ、コレ」

「うなう」

「まさか、持って帰れと?」

「にゃう!」

「お兄ちゃん、そうみたいだよ。 多分、持って帰っていつものゴミ箱に入れたら満足するんじゃないかな」

「にゃうにゃう!」


 幼馴染みの声に反応し、褒めるように鳴く同居者。うんうん、そんなに褒めるな「なうっ」、そうですね、俺のことじゃないっすね。


「お兄ちゃん、かなりノワちゃんと馴染んでるねー」

「……馴染んでる、というより、ただ調教されているような気が」


 おい、そこで視線を逸らすな一人と一匹(ふたりとも)


 …


 ……


 ………


 結局、あの枝はウチのポリバケツ(特大)へと放り込まれた。

「うなぁ~」

 いや、こっちがヤレヤレだっていいたいんだが。


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