02
同居者こと、ネコのキーの出会いは突然だった。
大学からの帰り道。自転車の乗っているところへ飛び出してきた黒猫、それがキーだった。
なんとか猫を轢かずに済んだと安堵しているところへ、彼女は前カゴに飛び乗り、ぬやぁ、と鳴いた。
「……いや、連れてけないって」
「ぬや」
不機嫌そうに尻尾をフレームに叩きつけるが、もし飼い猫だったらただの窃盗だからな。
そう思いつつ、ネコの胴体を掴んで地面に下ろすが、一瞬のうちに前カゴへと飛び乗られる。
「や」
「そうか、そういうつもりか」
「ぬやり」
こうして、前カゴを巡る戦いの火蓋は切られたのであった。
ーー数十分後。
「はぁはぁ、お前、やるな…」
「……お前こそ」
こうして、俺と彼女の友情が生まれたのであった。
……妄想の中で。
「ぬやん」
「あっ、ちょ、逃げるのか、俺との友情は?!」
まぁ、現実は非常である。
飽きたのか、突然前カゴとは違う方向へ走り出す黒猫。先ほどまでの数十分間はなんだったのか、とばかり呆然とする俺だけがその場に残されたのだった。
…
……
………
「ぬやん」
「で、俺の家に先回りってか」
「ぬやぁ」
なんでドヤ顔してんだ、このネコ。
まぁ、その後の後日談だが、この時にちょうど居合わせた隣の幼馴染み兼JK美少女(自称)に飼うことを勧められ、ペットの道具やなんやらを買いに行かされたのであった。
後日、よく話を聞くとこの猫は元々お婆さんが飼っていたらしいが、その飼い主が亡くなり、引き取り手を探していたらしい。そして、事故で両親を亡くしたばかりの俺の癒しになれば、と思って、やや強引に勧めたのだとか。
「ぬやぁ」
……まぁ、癒しにはなるな。