01
うわぁっ!!
っと、思わず出そうになった悲鳴を、慌ててなんとか耐える。
……皆さんには、こう言う体験は無いだろうか。たまたま泊まった旅館で押し入れの中を開けてみると一面のお札、ないし、人形が飾られていたことがーー。
……あ、無いですか、はい。
さて、俺、矢田侑士は、同居住民の不可解な行動を怪しみ、こっそりとつけた結果、恐ろしいものを目にしてしまったのだ。
彼女の向かった先は俺の家の庭。そこは俺が普段手入れをしている木々や少しの足しになればいいなぁと思いつつ育てている家庭菜園がある。
彼女も庭へはちょくちょく出入りをしており、俺の知らないところで何かしているのは知っているが、それはそれぞれのプライベートということでお互い干渉しないことにしていた。
未だ庭に留まる彼女は右向き、左向き、誰もいないことを確認すると、庭に続く扉の方へと消えていく。恐らく家に入ったのだろう。
さて、俺が先ほどから凝視してしまっている物体に近づく。それは薄い土で覆われてカモフラージュされているように見えるが、明らかにそれが庭一面に広がっているように見える。今も、俺が踏んできた場所にも、ちらほらとソレの一部が見える。
庭一面のお札である。
しかも旅館とかで貼ってあるような剥がすと駄目よーって感じのやつ。
「さ、さすがに、これは困るなぁ……」
すでに他界した父母からは、ここにヤバいものが眠っている、などと聞かされた覚えはない。と言うか、この前に家庭菜園を広げようとした時にはこんなものが無かったはずだ。
となると、犯人は十中八九、ここ最近の彼女の仕業だろう。この庭一杯のお札を使って何をするつもりなのか。
「……とりあえず、燃えるゴミかな」
一枚見えているものを手に取ろうとして、激痛が走る。
…足に。
「フーッ!」
同居者こと、ネコのキーである。どうやら、俺の足に噛み付いた後、威嚇しつつ猫パンチを繰り出している。……うん、かわいい。
「違う違う。これ、お前の仕業か」
「ぬやん」
「持ってっちゃ駄目なのか?」
「ぬやん」
「はぁ、ただのゴミにしか見えないんだが「フーッ」、はいはい、とりあえず、明日になったら捨てるからな」
「ぬやん」
同居者との相談の結果、とりあえず、今日一日は置いておくことになった。まぁ、一日経てば気が変わるだろうし。……個人的にはさっさと取っ払ってしまいたいが。
翌日、庭一面にあったはずのお札は、一枚残らず消えていた。……え、何、怖い。
「ぬやぁー」
なぜドヤ顔なのだ、このネコ。