いつもの日常は、気づかぬ内に変わっていた
午後六時十五分。此処は東京にある二十三区の内の一つ、千代田区。
——俺が今住んでいる街は、世界的に有名な日本の観光地の一つ、秋葉原だ。
秋葉原にはラノベ、アニメ、フィギュア、メイドと言った少女関係の物がかなりある。
観光地と言っても、外国人は大抵、其方をメインとしており、日本のアニメは世界共通でありながら、作画は綺麗で有名だ。
キャラクターの動き、音響等、細かい部分までしっかりとしている——作画ミスもあれば、崩壊しているシーンもあるけどな?
フィギュアも細かく再現されているし、ガチャポンや食玩も結構出来がいいからな。
俺もアニメを見るけど、大抵は萌系やバトル系は好きだから、それ関係のフィギュアやゲーム、DVDは買い漁っているぜ?
えっ? 俺の嫁系とかいないかって? いないぜ? 皆可愛いし、かっこいい娘もいるからな?
……よし、俺の説明は此処までだ! 言い忘れたが、俺の名は……秋葉英雄だ。二十歳の男だ。
好きな食いもんは牛丼だ。俺は今、牛丼をメインにした店内にいた。
「ありがとうございました〜〜」
俺が牛丼をメインにした料理店から出たのと同時に、外国人の店員さんの贈る言葉を背中で受け止めていた——手には、お持ち帰り用の使い捨て容器に盛られた牛丼大盛りの入った手提げ袋がある。
俺は牛丼が大好物で、特にチーズがトッピングされた奴が一番好きだ! いつもならばそれを頼むけど、今回はトッピングされていないそのままの牛丼にしたぜ。
飽きたとかじゃなく、たまには良いかな〜〜ってことだ。牛丼だけじゃない、パスタもケバブも大好きだ!
秋葉原には美味しいもんが沢山あるし、外食したい時は思いっきり贅沢しているぜ! ——千円以内だけどね。
因に関係ないけど、俺はアオの縦縞模様がある白の半袖シャツに水色のジーパンを穿いている。白いスニーかを履いているぜ。
「よし、バイトも終わったし、夕食のもんも買ったし、帰りますか! ——徒歩十分のアパートだけど」
俺はそう言いながら、秋葉原の街を歩く。
夜なのに、人や観光目的で来た外国人は多く、まだやっている店もある。
ゲームやジャンク品を扱う店やゲームセンターもまだやっている。
俺はそれらを見渡しながら歩いていたけど、悪くないな? 嫌なことが遭ったらアニメやゲームで忘れる、とかあるから。
「メイド喫茶どうですか〜〜っ」
歩いていると、近くからメイド服の女性がチラシを持って、歩いている人達に声をかけている。
メイド喫茶の店員で、店に来て欲しいって意味で、声をかけていた。
大抵、男性に声をかけているけど、俺も声をかけられたのはいつもの事だ。
今回は運がいいのか、悪いのかは分からないけど、声をかけられなかった。
理由は、俺が顔見知りだということ、新しい客を得るために声をかけないのかも俺には分からない。
ノルマとか、出来る人間だって証明したいとかも俺には分からない——でも、此処が秋葉原だってことがよく分かる。
俺は秋葉原に住んで日が浅いけど、月数万もしないアパートで生活しながら、この秋葉原のアニメ関連でバイトしている。
アニメ好きが幸いしたのか、アニメ関連の店で働けて苦しくも楽しい日々を過ごしている。
今日の業務は既に終わったけど、明日も好きなことで働ける——そう思うと、俺は嬉しくてたまらなかった。
そして、いつの間にか、古いアパートの近くまで来ていた。秋葉原とは少し離れた場所に建てられたそれは何処か雰囲気が——ない。普通のアパートだ。
ああ、大丈夫大丈夫、事故物件じゃ無いから。そんな所に住むのは命がけで家賃が多少安くても、俺は事故物件じゃない方を選ぶから。
俺はそう考えながら、自分の借りている部屋——二階の方へと階段を上る。
扉の前まで来ると、懐から少女のフィギュア——所謂、ガシャポンで◯◯スイングという奴から購入した物がある鍵を鍵穴に入れた。
軽く捻ると、ガチャッと音がした。扉を開けると、そこはガランとしていた——寂しい、と思えるし、秋葉原という明るい街に似合わない程、暗い。
電気を点けていないのも理由であり、俺が室内に足を踏み入れる前に後ろ手で扉を閉め、鍵を閉めると、奥へと向かった。
部屋の中央には蛍光灯があり、俺はその蛍光灯近くに垂れている紐を軽く下に引っ張った。
蛍光灯から白い光がパッと照らされ、室内を明るくする——広間でもあり、2DKで風呂トイレ付きの奴だ。近くに視線を移すと、部屋の隅には、小さな仏壇があった。
「……父さん、母さん……」
俺はそれを見て、悲しくなる。あれは最近、我がアパートに新しく来た物だ。
俺の両親は数日前、実家で二人同時に……笑えないくらい、ぎっくり腰になった時の日に届いた、『僧侶戦士君 劇中再現! お仏壇セット』の仏壇の奴だ。
あれは抽選だったけど、当たらないと思いながらハガキを送ったら、当たった……ファンである俺から観れば嬉しかった。
運がいいな〜〜ってか、そんな運があったら……。
「半分でも良いから、ソシャゲの方にも運を向けよぉぉぉ!」
何だよ何だよ! ソシャゲで課金しても星五どころか星四も来なかったよ!? 何回スマホを投げたかもどうかも覚えていないよ!
なけなしの、しかもログインで貰える奴で回したら来るって何だよ!? 後悔しかないよ!? 俺はその日は泣きたいのに、嬉しいのに何とも言えなかったよ!
そんな、当たるかどうかも分からないのに一発で当たるって何よ!? 嬉しいけどさぁ!? 仏壇を見ているのが悲しいのはそれだしよ〜〜。
「それに、転売されていたし……」
俺はバイト前に歩み寄った玩具屋さんでこれと全く同じ物で、数万の値段で売られていたのを見かけた。
恐らく、転売屋みたいなことをする輩がいるってことだ。貴重品をホイホイ手放すなんて、何を考えてんだろうな、全く。
コレクターに失礼だし、その運をコレクターに与えろってんの。
「はぁ〜〜っ、そんなことを考えても仕方ないし、牛丼を食いながら何かを観ますか!」
俺はウンウンと頷くと、牛丼の入った袋を置き、テレビの下にある棚からDVDを漁る。
好きなのはバトル系だけど、萌系は……うん、牛丼食いながら何かをするのは止めよう。
俺は即座にDVDのケースの表紙を見る。
『スライム勇者! その壱』。俺の好きなバトルアニメの一つだ。
漆黒の鎧を纏った可愛らしい瞳をしたスライムが魔王を倒す為に立ち上がる勇者もんだ。
スライムって可愛いらしいイメージがあるけど、勇者というあり得ないことをしているから、受けが良かったのか、子供達には人気があったらしい。
可愛い=正義と言うアイデアが何気にインパクトになったんだ。
「……って、俺は何故解説してんだ?」
俺はそう思いながら、DVDのケースを開き、ディスクを見る。
スライム勇者のスラン君がディスクの表紙を飾っている。流石、主人公だ!
俺はそれを見てワクワクした。自分でもオタクだと思うだろうな〜〜っ。
オタクと言っても、女の子のプリントされている服を着ている訳じゃない。
偏見だと思われそうだ。俺はそう思いつつも、ディスクをDVDデッキに入れた。
準備万た……あ、手荒いうがい忘れた。
「良し、今度こそ良いか!」
俺は手洗いうがいを済ませると、牛丼を片手に、もう片手には割り箸を用意した!
飲み物はビール! 製造会社はなんでもいいけど、俺はアニメを見ながら夕食を食う!
最高の至福! 意味は変だと思うが、俺は後悔しない。
それに白いタンクトップに水色のトランクスを穿いている。家の中ぐらい、ゴロゴロさせても誰も文句は言わないだろ?
俺はそう思いながらテレビを観ながら言った。
「いただきま〜〜」
そしたら、周りに白い光が現れた。
「えっ?」
俺が恍けると、目の前の光景が変わった。
「うぉぉぉ〜〜!!!」
おっさんのような怒号が聴こえた。耳に響く程、五月蝿く、喜んでいるようにも思える。
俺は夢を見ているのか? 周りにはおっさんがいて、皆、ちょんまげに着物だ。
武士かなんか? それとも大河ドラマの撮影をしているの? ってか、リアルすぎるしヤバいんですけど!?
俺は牛丼と割り箸を持って驚いているけど、俺の周りの床——には何かの模様が書かれているし、ろうそくが何本も立ってるし。
えっ、えっ? 何かの生け贄をしているの? それが俺を選んだってこと?
ってか、周りにはおっさんがいるし、俺の目の前には巫女服のばあさんが汗だくで倒れそうになっているし、
近くにはかわいい娘さんが「おばあちゃん!」と心配そうに支えていた。
俺は何がどうなっているのかが分からず、何も言えなかった。そしたら、羽振りのいい黄色い着物を着た一人の中年男性が、俺を見ながら、こう言っていた。
「良く来てくださいました! 私達の町を救ってください!」
その人は俺にそう言っていたけど、俺は何も分からなかった。
「えっ? えっ? えっ!?」
人物紹介。秋葉 英雄。男性、二十歳。
誕生日、十月一日。
体重、六十五キロ。
身長、百七十センチメートル
好きな食べ物、牛丼(特にチーズがトッピングされた奴)
趣味、アニメ鑑賞。
この物語の主人公。性格は好きなことに熱中するあまり、時間を忘れるくらい一応熱い性格。
当主、千代田秋丸から千代田を開拓して欲しいと頼まれる。
最初は断った物の、渋々了承すると、千代田を秋葉原にして、江戸一の有名都市にすると決める。(理由は歴史を変えたら何をされるかは分からないとのこと)
好きなアニメはスライム騎士であり、秋葉原関連の知識は一応ある方で、何とかそれらを駆使して、千代田と言う町を開拓する。