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コソ泥は異世界の目を閉じた  作者: 本木蝙蝠
第3章 精神の魔石とイカサマギャンブラーズ
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第58話 佐沼とジンは武器をそろえる

 今度こそ逃がさない。警官は確かにそう言った。……今度こそ? やはり前に一度――


「あ」


 思い出した。この町に来る途中、盗賊に襲われた後に出くわした警官だ。この町に来てたのか。厄介な。

 だが、それはそれとして。


「ジン=ノーディンの一味だってよ。お前首謀者扱いされてるぜプププ」

「笑い事じゃないんですけど!?」

「それに笑ってる場合でもないわよ」


 警官は今にも俺たちを確保しようと動き出す寸前である。メアリーの言う通り、確かに笑っている場合ではない。


「普通ならな!」


 そう言って俺はメアリーとジンの手をつかむ。そして潜伏を発動。


「え!? あれ!? 嘘……」


 目の前で消えて見せた俺たちに、警官は困惑を隠せずにいた。オロオロしながら周囲を見回している。

 俺は二人を引っ張ってギルド管理協会の方へ走り出した。あまり長い時間潜伏を使ってもいられない。さっさと――と、撒こうとした時だ。警官が俺たちへ向かって走り出した。まさか見えてるのか!? いや、そんなはずはない。当てずっぽうか? 良い勘してるなチクショウ。


 とにかくこちらは警官に見えていない。圧倒的に有利な状況だ。とりあえず、適当な屋内へ入ってやり過ごせば問題はない。

 俺は二人の手をグイと引っ張り、手近な店の中に入った。しかし慌てたせいで躓き、入店と同時に床に転がってしまう。


「いてて……」


 はずみで潜伏も解けてしまった。


「何よ急に……痛いじゃない」

「すまんメアリー。こうするのが手っ取り早いと思ってな」

「まったく。サヌマさんはいい加減スタンドプレーをやめるべきですよ」


 おっしゃる通り過ぎて言葉が出ない。


「それで……ここは」


 見回すと、店内に飾られているのは剣や槍などの武器、武器、武器。見渡す限り武器しかない。


「武器屋か」

「あー、でも丁度良いかもですね」


 ジンの言葉に俺もうなずく。昨日は魔物に短剣が通じないことを嫌と言うほど思い知らされた。対人ならこれで問題ないのだが、魔物相手にはそうも言ってられない。


「それにしてもここ……」


 メアリーが鼻をつまむ。言われてみればどこかカビ臭かった。顔をしかめると、奥からキコキコと車椅子をこぎながら老体が現れる。


「いらっしゃい。カビっぽくてすまないね。でも心配しないでくれ。武器の手入れはどこよりも丁寧だから」


 ……なんか、不気味な店主だな。

 店主には片足がなかった。しかしそれが理由ではない。目だ。この世のすべてを見透かして、そして憎悪しているような目。白髪で、服はヨレヨレ、顔にはしわが目立つ。どれもか弱い老人であることを示しているにも関わらず、俺はなぜか圧倒されていた。


「ど、どうも」


 そう返し、ふとメアリーを見る。どうにも妙な顔をしていた。


「どうした? メアリー」

「うーん……いや、ごめん、何でもないわ」

「そう、か」


 何かを隠している、と言うよりは「確信を持てない」みたいな素振りだ。メアリーは隠し事が致命的に下手だから、そうじゃないことは簡単にわかる。

 まあ良い。とりあえず、何か武器を仕入れておきたい。


「何をお探しで?」


 タイミングよく、店主が近づいてくる。


「ん、ああ、魔物の討伐用に……」

「面白い事を言う。それ以外の用途が?」


 ……いや、まあ、それもそうか。さすがに強盗するときに使うかもしれないとは言えないしな。


「ははは、そーですよねー」


 俺の乾いた笑いが壁に消えていく。


「良ければ見繕いますよ。お客さんは、どんな戦闘スタイルを?」

「えーっと……気配を殺して不意を突く感じ、ですかね」


 ふむふむ、と店主が頷き、それからジンの方へ視線を向ける。


「そちらのお客さんは?」

「僕は……そういうのはなくて。ちょっとよく分からないです」


 そもそもジンは監獄に収容されるまでは暴力とは無縁の生活を送っていたらしい。その後は囚人に対抗できるように体術は見て覚えたようだが、それも対人用。魔物と戦う術など持っているはずがなかった。


「ふむ。わかりました。そちらは?」

「私? 私は良いわ。間に合ってるから」


 メアリーが素っ気なく返すと、店主はそそくさといくつかの武器を取り出す。数秒悩んだ後俺とジンにそれぞれ武器を手渡した。


「そっちの体力がなさそうなお客さんは魔銃。身体の大きいお客さんはバスターソードだ」


 俺は手渡された銃を見つめる。……この世界って銃とかあったんだ。ん? ちょっと待て。


「魔銃?」

「自分の魔力を弾として打ち出すんだ。銃弾を別に用意する必要がないから便利だよ」

「へえ」


 確かに潜伏を使いながら遠距離攻撃が出来るのは便利だ。俺はこれで良いとして、ジンは……


「重いですね、これ」


 ジンに渡されたのは俺の背丈ほどある大剣だ。いや、でかすぎんだろ。


「振れんの? それ」


 俺が尋ねると、ジンは「まあ」と言いながらブンブンと剣を振り回す。危ない。危ないって。


「もう振り回さなくて大丈夫です。わかったので」

「なんで急に敬語!?」


 こえーんだよ。

 忘れてたが、ジンも見た目だけは凶悪犯罪者である。当然それだけの腕力もあるというわけだ。


「どうする? 試し撃ちと試し斬り、していくかい?」


 店主の言葉に俺とジンは顔を見合わせ、頷いた。


「それじゃあ三人ともこっちへ」


 指し示されたのは、店の奥にある扉。そこを開けると、下へ階段が続いている。


「いや、何で私まで」

「店主さん? これは――」


 ジンがそう言って振り返り返った時だ。背中に強い衝撃を感じ、すぐに身体が重力に従って落ちていく。


「なんで……」


 言葉を紡ぎ終えることもなく、俺は意識を失った。

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