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コソ泥は異世界の目を閉じた  作者: 本木蝙蝠
第3章 精神の魔石とイカサマギャンブラーズ
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第56話 ミストリアは賢者の石を狙ってる

「譲ってくれって……ミストリア、お前何言って」

「何って、そのままの意味だけど?」

「いや、これは俺たちが手に入れたものでだな」

「私も協力した。違うかい?」


 む。確かにそれはそうなのだが……。


「あなたたち、それを身に付ける意味が本当に分かってる?」


 話に入って来たのはスペックだった。ニヤニヤと愉快そうな表情を浮かべている。


「意味?」

「そうよ~ミストリアちゃん。賢者の石はどれも常人が使えばそれなりのデメリットがあるけど、これは賢者の石の中でもトップクラスに負担がかかるわ。試しに誰か付けてみなさいよ」


 そう言われ、俺とミストリアは互いに顔を見合わせる。


「わかった。ジン、つけてみろよ」

「僕!?」

「まあまあ、所持者の第一候補なんだから」

「あれ本気だったんですか!?」


 そう言いながらもジンは素直に指輪をはめる。


「じゃあ、何でも良いから知りたいことを思い浮かべてみて?」

「は、はい」


 スペックに指示されるまま、ジンは目を閉じる。その直後ジンは「ぐああああ」といううめき声と共に鑑定の魔石を放り投げた。


「大丈夫か!?」

「は、はい。なんとか。ありがとうございます、サヌマさん」

「いや、魔石の話」

「あんた最低だよ!」


 ジンは額を押さえながら、何とか立ち上がる。


「これヤバいですよ。脳みそをグチャグチャにかき混ぜられたみたいだ」


 うーん、これは本気でヤバそうだな。


「よし! ミストリア、君にこれを託そう。受け取ってくれるね?」


「馬鹿サヌマ! 何考えてるのよ! あんたソレ必要なんでしょうが!」


 メアリーの罵声で思い出す。そうだ、俺は賢者の石を七つ集め、俺をこの世界に送り込んだヒイラギとかいう男に「窃盗欲求」を消してもらわねばならないのだ。


「そう……だな。うん、そうだった」


 俺は泥棒をやめたいんだ。そのために賢者の石を盗んでいる。行動と理念は矛盾している。ヒイラギの話をどこまで信じて良いのかも分からない。けれど、今の俺にはこれ以外に道しるべになるモノはない。

 賢者の石をすべて集めて、ヒイラギと接触する。それが当面の目的なのだ。


「なら、鑑定の魔石の所有権を賭けて勝負をしないかい?」

「……ミストリア、そもそもこれは」

「また同じ問答を繰り返すのかい? サヌマ君。私は強盗に協力した。盗品の分け前は平等に決めないとね?」


 その言葉で、昔のことを思い出す。銀行強盗に誘われた時のことだ。俺は頑なにあいつらに協力はしなかった。分け前でもめることが目に見えていたからだ。


「……これだから」


 協力するってのは面倒だ。


「何か言ったかい? どう? やる?」


 勝負を行うことでミストリアの気が収まると考えれば、まあ許容できなくもない。奪い合いが殺し合いに発展するよりはマシだ。ただ――


「勝負の方法による」


「考えて欲しいんだけどさ、サヌマ君。これを手にするのはより有益な人物だと思うんだ。これを世のため人のために役立てられるね」


「ん?」


「つまりだね、より町の人間を助けた者こそが鑑定の魔石を手にするべきだってことさ。だから、勝負はギルド管理協会が集めているクエストで決めないかい?」


 ふっ……なるほどな。


「メアリー。クエストってなんだ?」


「今『なるほどな』みたいな顔してたわよね、あんた」


「無知は罪だが、罪を笑うべきではない」


「サヌマ、小難しいことを言って煙に巻こうとしないで。……クエストっていうのは、ようは依頼、短期のお仕事みたいなものよ」


 ……仕事? そんなので良いのか? 


「そ、そうか。まあ、ミストリアがそれで良いなら、別に構わないが」


「そう? なら決まりだね。ランブルー、あいつらそろそろ帰ってくるだろう? 協力してもらうよ」


 あいつら?


 一瞬脳裏に浮かんだ疑問はすぐに解消した。そう言えば、このギルドハウスに初めて来たときにランブルー以外には三人のメンバーがいたはずだ。


「あ、ああ。そうだな。……悪いサヌマ。今回はそっちの味方は出来ない」


 心底申し訳なさそうにランブルーが言う。まったく律義と言うか、何と言うか。


「そりゃそうだろ。気にすんな」


「じゃ、開始は明日ね。今日は流石に疲れたし。私は寝るとするよ」


 ミストリアが階段を上がり自室へ戻ろうとする。

 ……あれ、これもしかして、ミストリアが寝た後に逃げれば良いのでは?


「あ、そうだ。鑑定の魔石はそこの自称賢者に預けておいてくれよ。あなたは中立な立場、と考えて良いよね?」

「オッケーよ~ん」


 そう返したスペックをメアリーがゴキブリでも見るような眼で見ていた。……本当に何があったんだ。




 こうして、鑑定の魔石を巡りミストリア達「色彩の欠いた傭兵団」と争うことになったのだが、俺は一つ大きな勘違いをしていた。クエストが何なのか、ちゃんと理解していなかったのだ。


「ぎゃあああああ」


 追いかけて来る魔物から俺は必死に逃げている。クエストって、短期の仕事ってこういうことかよ……!

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