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コソ泥は異世界の目を閉じた  作者: 本木蝙蝠
第1章 元素の魔石とプリズン・ブレイク
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第18話 泥棒たちは画策する

「おい、八十六番はどこだ?」


 看守がメアリーに話しかけるのが見えた。メアリーはかすかに肩を震わせる。


「八十六番? 誰でしたっけ?」


「お前と同じ牢の男だ」


「サヌマのことかしら?」


「そうだ。早く答えろ。七十四番」


「……知りませんね、看守さん」


「そんなわけないだろ。お前らだいたい一緒に」


 俺は後ろからそっと近づき、メアリーと看守の肩を叩いた。


「やっ! どうしました、お二人さん」


 メアリーはホッとしたような顔をするも、すぐに何かに気付いたのか俺を軽くにらみつける。


「な、お前今までどこにいたんだ?」


 看守が俺の顔を見るや驚いたように言い、肩から俺の手を払った。


「さあ? 適当な囚人を捕まえてカードにきょうじてましたよ? 誰の牢屋かはわからないですね」


「お前、今日は一日見なかった気がするんだが」


「えー、やだな看守さん。俺がどこかでさぼってたとでも? 看守さんは俺の頑張りを見てくれてると思ってたのに、あーあ、ショックだなー」


「な、何を」


「看守さんは俺らみたいなクズを更生させるために見守ってくれてるって、そう思ってたのに」


「……ま、まあね?」


 看守は俺の肩に手を載せて、「これからも精進しろよ」と去って行った。

 看守が視界から消えるのを待ち、メアリーに声をかける。


「お疲れ、助かったよ」


「なーにが助かったよ。君、私が看守に話しかけられたの見て、しばらくほっといてたでしょ」


「な、なんのことだ?」


「しらばっくれないで。話しかけてきたあの絶妙なタイミング、そして気づかれないくらいそっと近づいてきたことを考えれば、当然の結論よ」


 くっそ。やっぱり鋭いところは鋭いんだよな、こいつ。


「あっはは。悪い悪い」


「悪びれてるようには見えないけど……」


 メアリーは深いため息を吐く。


「で、何かトラブルはあった?」


「そりゃあったよ」


 俺は肩を落とす。思い出すのは当然、監獄長の悪趣味な地下室だ。

 その地下室にいた時一度バレそうになったが、タイミングよくメアリーとジンが行動を起こしてくれた。メアリーには監獄のいたるところの爆破、ジンには取り巻きを使って騒動を起こしてもらったのだが、さすがに監獄長も看過できないレベルだったようだ。地下室にまで騒ぎが聞こえるほどだ。完全に想定以上。俺が指示していたよりも騒ぎがでかくなっていたが、結果オーライだ。


「まあ帰ってこれたしそれは良い。今日の結果はジンも含めてまた明日話すってことで良いか?」


「ま、しょうがないわね。もう消灯時間だし」


 俺たちは牢屋に戻り、硬いベッドに寝ころんで目を閉じた。


「ねえ、サヌマ」


 寝ころんでからしばらくして、隣のベッドからメアリーが話しかけてくる。


「どうした?」


「君は、本当に泥棒をやめたいの?」


 ……。


「本当にどうした? 突然だな」


 メアリーは少しだけ考えるように口をつぐんだ。しかしすぐに、暗闇に彼女の声がかすかに響く。


「君はジン君に、ずいぶんとあくどい脅迫をしたじゃないか」


「まあ、な」


 それについては、悪いことをしたと思っている。それでも、俺はやらなければならなかったのだ。


「泥棒から足を洗いたがってるやつのすることじゃないと思うね、私は」


 確かに、一理あるかもしれない。俺はきっと積極的に悪事や悪だくみをするように見えているはずだ。いや、実際にそうだ。しかしそれは……。


「今さらなんだよ」


「え?」


「今さら、変えられるようなものじゃないんだ。ずっとこうしてきた。

 何かを盗まずにはいられない。でも泥棒をしてれば、嫌でも裏の世界とかかわりを持つようになった。そこで生き残るには、頭を使うしかなかったんだ。悪だくみをして、騙して、脅して、裏切るしかなかった。ずっとそうしてきたんだ」


「じゃあ、私も裏切るかい?」


 言葉に詰まる。


「それ、は」


「……まあ裏切っても構わないよ」


「は?」


「変わるか変わらないかは君が決めればいい」


「おい、あんた」


「じゃあおやすみ」


 自分から話しかけておいて、勝手に話を切り上げやがった。

 俺も薄い布団をかぶり直す。

 ……なぜだか銃口でも向けられているような気がして、彼女の話が頭から離れなくて、明日も早いのに、少しだけ寝れなかった。






「昨日の調査結果だが」


 朝、また例の倉庫。今度は誰も近くにいないことをしっかり確認して話を始めた。


 監獄長の一日をまとめるとこうだ。

 ・午前の作業時間に側近が朝食を運び、起床

 ・朝食が済んだらデスクワーク

 ・昼食を側近が運んでくる

 ・昼食後、美術品の鑑賞、手入れ

 ・デスクワーク再開

 ・午後の作業時間に、お楽しみ

 ・おやつ

 ・監獄内の見回り

 ・側近を呼び、報告を受ける

 ・夕食の後、再び美術品の手入れ

 ・入浴

 ・就寝


「まあ、こんなかんじだ。昨日お前らが張り切り過ぎて監獄長が出張ったのは入れてない。まあトラブルがあったら獄長室を出て確認くらいはするんだろ」


「す、すみません。どんどん収拾がつかなくなってしまって」


 ジンが申し訳なさそうに言う。


「いや、別に良いんだ。むしろ助かったし。

 で、聞きたいんだが、この前監獄長が朝食の時に食堂に来たけど、あれはどれくらいあるもんなんだ?」


「たまによ。ほんとたまに」


 メアリーがうんざりした顔で答える。


「なら、早起きできたとき限定ってところだろうな。このスケジュールにおかしなところとかないか?」


「うーん、ないんじゃない? ジン君はどう思う?」


「僕も特におかしなところはないかと」


「そうか、じゃあ脱獄計画について話そうか。一応俺なりに考えてみた」


「へえ? そうなの?」


 メアリーが意外そうな顔をする。


「まあな。実際に監獄長に張り付いてた俺が考えるのが手っ取り早いだろ」

 メアリーは時々なんとかなるだろみたいな姿勢を見せるしな。

「まず元素の魔石についてなんだが、鍵付きの透明なケースに入ってた。で、基本取り出さない」


「じゃあ盗めないじゃない」


「まあ急かすな。監獄長はお楽しみの時と見回りの時に元素の魔石を持ち出す。つまり鍵は獄長室の中にあると考えて良い。


 問題は獄長室のどこにあるかだが、監獄長はお楽しみ……別にオブラートに包む必要はないか、拷問をしに地下室へ行く際、ほぼ真っ直ぐ扉まで進んでいた。あの巨体だ、鍵を取りに寄り道すればベッドの下にいても振動でわかる。


 つまり扉とデスクの間に鍵があるはずで、まあ十中八九美術品を置いた棚のところだろう。鍵のありかは目星がついてる」


「君なら鍵をしまうところを見れると思うけどね」


 メアリーが俺をからかう。


「無茶言うな。ずっとベッドの下で隠れてたし、潜伏を使える時間もほぼ限界に近かったんだ。

 ……話を戻すぞ。元素の魔石を盗むには監獄長がいない間に鍵を探す必要がある。そのまま盗むなら、なおかつ監獄長が元素の魔石を持ち出していない状態であるべきだ」


「そんな時間があったんですか?」


「そうだ、ジン。それはな」


「それは?」


 二人が同時に俺を見る。

 俺は少しもったいつけてから、口を開いた。

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