第2話 『モノ』の心
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ーー次の日。
非日常なことが昨日起こりすぎたせいか俺は珍しく早起きだった。
時刻は午前6時。ここまで早く起きたのはもしかしたら初めてかもしれない。
あの子はまだ寝てるかなと思ったが、俺よりも早く起きていた。
その子は本棚にあった不思議な絵本を持ちながら、じっと俺の机の上に置いてあるマフラーを見ていた。
「......あなたはサグルを愛しているのですね」
「誰が俺を愛してるの?」
「あ、サグル。おはようございます」
「おはよう」
愛しているってマフラーに向かって言ったのか?
それって、マフラーの言葉が分かるとか?
......それはないか。いくら、この子でも『モノ』の心までは読めないだろう。
まあ、読めるほうがおかしいけど。
だから、誰か別の人とでも話していたに違いない。
「誰と話してたの?」
「いいえ。このマフラーの心を見ていたのです。サグルはこのマフラーにすごく感謝されていますよ」
「え?マフラーに?......それに心って?」
「『モノ』には必ず心があります。私は『モノ』とは話せませんが、どんな気持ちなのかを見ることはできます。だから......」
その時、この子が持っていた絵本が動きだし、俺に寄ってきた。
俺は突然の出来事に唖然としてしまった。
絵本が動いた。
それだけで、驚く理由としては十分だった。
絵本はパラパラとページをめくり、俺に『読め』と言っているような動きだった。
ページを見ると、続きが描かれていた。
俺は絵本を手に取り、描かれていた続きを読む。
『なまえをきいたしょうねんは、ようせいのおんなのこといっしょに、しれんにたちむかいました。ふたりはがんばってみっつのもんだいをとき、しれんをのりこることができたのでした』
絵本の話はここで終わり。
というよりも、絵本のページ数がもうなく、これ以上描けない状態になっている。
そのせいか、昨日の出来事をかなり簡略化されている。
「この絵本は『未来絵本』。この絵本に描かれた文章や絵は必ずその通りになります。そして、これは私たちが作った......古の秘宝です」
「君たちが作った!? じゃあ、この絵本が動いてるのはなんで?まさか......」
「心があるからです。私たちが作った『モノ』にはみんな自我があります。未来絵本はその中でもかなり強力なものですけど」
『モノ』には心がある。
それは、母さんの口癖と一緒だった。
モノは大切にしないといけない。モノは優しく丁寧に使ってくれる人を愛する......
だけど、本当に心があるなんて......
「丁度いい機会です。昨日のことも含めて、少し私たち古代人のお話をしましょうか......」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
私たちは、『モノ』を作るのが大好きでした。
人々の生活や仕事に役立つような『モノ』を作り、より便利にさせるのが目標でした。
そこで、私たちは考えました。
『モノ』に心を込めよう!
そうすれば私たちも『モノ』もみんな幸せ!......と。
そして、次第に『モノ』を作っていくうちに、『モノ』に自我が芽生えました。
『モノ』は私たちのために精一杯の努力をしました。
料理、掃除、建築、遊具、勉学......『モノ』は私たちに必要とされるのが何より嬉しかったのです。
いつしか、『モノ』も家族のような存在になり、私たちの世界では『モノ』に自我があるのが当たり前のようになったのです。
こうして、私たちと『モノ』は互いに協力し合い、これからも共に生活する仲間となる......はずでした。
『モノ』は私たちに頼られるのが好きと分かると、私たちは逆に何もしなくなりました。
ご飯を作るのも『モノ』。
掃除、洗濯......と生活の作業は『モノ』が全てこなす。
そんな生活を送る人たちが増え始め、ついには『モノ』を作るのをやめてしまいました。
『モノ』自体が『モノ』を作れるようになったからです。
しかし、ある一人の古代人が言いました。
『何もしなくなった俺たちを『モノ』は支配しようとするのではないだろうか。今の立場を利用し、『モノ』は
俺たちを逆に使う側にするのではないか』
これをきっかけに、私たちと『モノ』の間に亀裂が生じてしまったのです。
支配されるのを恐れた私たちは、『モノ』に頼らないようにしようと自分たちで生活するようになりました。
頼られなくなった『モノ』たちは、なんとか自分たちを頼らせようと必死になっていました。
頼られないということは『お前はもういらない』と言われたのと同じだからです。
しかし、私たちはそんな『モノ』の悲しみを聞こうとしませんでした。
そして、使う必要がなくなった『モノ』たちを......
私たちは捨てたのです。
それから『モノ』たちは私たちに攻撃をし始めました。
捨てられた仲間の復讐。
そして、いつ自分が捨てられるか分からない恐怖。
二つの感情が重なり、それは『モノ』を助け合う道具から憎しみの道具へと変えてしまったのです。
この事態を重く見た私たちは、強力な『モノ』を封印することにしました。
『モノ』にもボス的な存在があり、それを封印すれば『モノ』たちの攻撃を収められると考えたからです。
私はその『モノ』の一つの未来絵本を封印しようとしたのですが、逆に返り討ちにあい、試練の洞窟という未来絵本が作った洞窟に封印され、身動きがとれなくなってしまいました。
「たすけて......」
助けが来るのを待ち続けて3000年後......
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「私はサグルに助けられたというわけです」
「そんなことが......」
「でも、未来絵本は今は反省しています。もう誰かを閉じ込めたりはしないでしょう」
未来絵本は申し訳なさそうに静かに本棚へと戻って行った。
確かに反省はしている感じだった。
「封印すると言いましたが私はその気はありません。
ですが、強力な『モノ』......古の秘宝をこのまま放っておくわけにはいきません。そこで、サグル......お願いがあります」
「ま......また?」
「はい......私と一緒に各地にある古の秘宝を取り戻してくれませんか?」
話を聞くだけだと思っていた俺は甘かった。
どうやら、俺は母さんと同じようにトレジャーハンターをやらされる羽目になりそうだ。
今の目標はポイント10pt目指すことです