表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/41

第1話 結と楓

 三野結はまだ裏ダンジョン、白の世界を諦めていない。

 例えクリアしたとしても、その名は刻まれない。それでも挑戦するのは結自身がまだ諦めたくないからである。

 魔女シリーズ第二を揃え、現在レベルは544。挑んでいる階層は54にまで到達した。

 一階層から順に白の世界は降りていく必要がある。

 その日も結は降りていく中、再びその女性と出会うこととなる。 


「また来てる」


 その女性はまだ3階層であるが、中々の急成長を見せていた。

 結に気づくことなく、必死にモンスターを狩り続ける姿は、何とも真面目であるが無防備でもある。

 その女性、二見楓に結は話しかける。


「ねぇ、楓だったかしら」

「ああ、三野さん。こんにちわ。また会いましたね」


 そう言いながら、モンスターへの攻撃の手は止めない。

 ここ数日、楓が裏ダンジョンでレベル上げをする姿を結は確認している。

 トッププレイヤーである一ノ瀬樹と、その妹である一ノ瀬茜と別行動中なのか一人でレベル上げをしている。

 最初のうちはそこまで不思議に思わなかったが、ここ数日一人行動となると変わってくる。

 結は楓がモンスターを倒したのを確認して聞く。


「他の二人はどうしたの?」

「今、樹君と茜ちゃんは前線の方に戻っています。流石に私のレベルを前線レベルまで手伝ってもらうのは時間がかかりますので、今は一人でレベル上げをしています」

「前線?」

「第10の大陸を、トッププレイヤーやそれに近いプレイヤーは前線と呼んでいるみたいです。それ以上は詳しくは知りません」

「そうなの」


 どうして前線なのか、結は不思議に思いながら。


「レベル上げ手伝いましょうか?」

「いえ、大丈夫です。というよりも申し訳ないです」

「そう? でも」

「それに、私はもう弱くありません。この辺りのモンスターでしたら余裕を持って狩れるほどに強くなりましたから」


 前までの楓の戦いを知らない結にとっては強くなったかは判定できないのだが、それを抜きにしても楓の戦い方が優れていると結が思うほど、楓は一方的にモンスターを狩っていた。

 それもペットの力を借りずに。

 ただ、それが問題である。

 結は楓がペットを召喚せず戦う姿、楓の危なっかしさに目が行ってしまう。


「楓。あなたは強いペットを持っていないの?」

「ローズと名づけたルルドラゴンが一匹います。ですが、ローズを失いたくありませんので、私一人でレベル上げをしています」

「それは止めた方が良いわ。自身のレベル上げをするときは、相棒となるペットも同時にレベル上げしないと」


 結は楓に自分の過去の教訓を教えるために。


「そうしないと、何時か死ぬわよ?」

「死ぬですか?」


 その唐突な言葉に楓が首を傾げる。

 それと同時に、モンスターがスポーンする。

 安全地帯へ避難していないため、モンスターはスポーンする。そしてプレイヤーを見つければ襲ってくる。

 それに結は気づいていたが、何も問題視していなかった。

 結は楓の後ろにスポーンしたモンスターに向けて、攻撃魔法を唱える。

 それは炎の矢になってモンスターの体を貫通する。

 結とそのモンスターの圧倒的なレベル差ゆえに、一撃で体力を削り取りデータの欠片へと変える。


「ありがとう、ございます」

「ここで立ち話は面倒だから、階段の方に移動しましょう」


 結の提案に楓は小さく頷いた。




「それで話をもどしましょうか」

「はい。確かに、樹君も茜ちゃんも強いペットがいました。ですが、あれはある程度レベルを上げたら、育て始めるものではないのですか?」

「そういう人もいるけども、自身と同レベルのペットを所有しているプレイヤーとそうでないプレイヤーの実力差は天と地の差があるわ。だから同時に育てるの。少しでも自分と近い強さを持つペットを常に保有するために」

「それではペットはまるで自分を守る道具みたいじゃないですか?」

「道具は言い過ぎだけども、それに近い感情で割り切った方が良いわよ。所詮、ペットは生きていないデータなのだから、と。そうしないと死んじゃうから」


 楓は結の言葉に納得してしまう。

 確かに同時にレベル上げをしなければ、得られる経験値をある程度無駄にしてしまう。一切無駄にせず進めることは不可能ではあるが、可能な範囲経験値は無駄にせずに行くのが効率が良いに決まっている。


「まあ、後はあなたがどう判断するかだけども。あなたの彼氏である樹には恩があるから、少しぐらいは手伝ってあげても良いわよ?」


 恩というのは結が勝手に抱いているだけである。

 お金と素材を交換した。等価交換ではあるが、それによって得られた時間は結にとって大きかった。もしも交換してくれなければ、まだ素材集めをしていたかもしれない。

 結の言葉に楓が引っかかる。


「かれし?」

「ええ。彼氏」

「彼氏じゃないです。違います。まだ私と樹君はそういう関係じゃないです」

「あれそうだったの? でもまだということはあなたは樹に対して恋愛感情を抱いているのかしら?」

「恥ずかしながら」


 結はそんな恥ずかしがる楓を見て、何とも言えない感情、恥ずかしさ似たもどかしさを感じる。

 あまりこういった話を聞きたくない。親しい友人ならばからかったりできるが、まだ顔見知りの段階である楓に対してからかうことは、流石にできない。


「こんな分かりやすい恋愛感情に気づかないなんて、樹は目が腐っているのかしら」

「いえ。気づいた上で拒否しているのだと思います」

「…………どういうこと?」

「樹君、好きな方がいるみたいです」


 その言葉と共に楓は落ち込んだ表情を作る。

 楓にとっての恋敵。それの存在を知った上で、片思い相手に別の片思いの相手がいたという悲しみを背負った上で、まだ好きでいるということは相当好きなのだと、結は思い、楓を応援したい気持ちが出てきた。

 場を変えるために咄嗟に変な冗談を考えて。


「そうなんだ。誰? まさか実の妹とかではないでしょ?」

「もちろんです。樹君も茜ちゃんもそれぞれ、初めてパーティーを組んだ異性が好きみたいです。確か樹君の好きな女性の名前は、空だったはずです」

「…………空?」


 その名に結は聞き覚えがあった。

 ただそれがどこだったか、そして誰からかは思い出せない。

 それで、と結は楓に聞く。


「手伝いほしい?」

「そうですね。ではお言葉に甘えたいと思います。でも、私の気がおさまりませんので私にも何か三野さんの手伝いをさせてください」

「あなたがそれを望むなら、分かった。それで、どうする? 私が見るに、今のあなたに必要なのはローズを育てることではなく、ローズ以外のペットだと思うのだけれども」


 結の言葉に楓が聞いてくる。


「どうしてですか?」

「だって、ここに挑むことができるレベルで、まだペット一匹なのでしょ?」

「はい」

「もっと持っていた方が良いわよ。最低十匹。できればそれ以上持つべきだけども」

「そんなに、同時にレベル上げできるのですか?」

「そこはプレイヤーの腕と練習次第かしら。複数のペットと同時に戦うことを練習すれば、一人でレベル上げするのよりも早くレベル上げできるわよ。時間効率という意味でね」

「なるほど。勉強になりました。ですが、ローズ以外に良いペットを知らないです」

「そうね。私のおすすめはゴーレムよ」

「ゴーレムですか?」

「そう。基本的にゴーレム種は高い耐久で、壁になってくれるから。見た目からして、あなたも魔法使い型っぽいし。土塊召喚使えると思うけども、あれには頼らない方が良いわよ」

「分かりました。ではそのゴーレムを捕まえに行きます」


 楓はそう言ってガッツポーズをした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ