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第13話 茜VS四宮2

 レベルが付くスキルは複数の発動ができない。

 例えばだが、物理攻撃力上昇レベルⅠと物理攻撃力上昇レベルⅡの二つを使用した場合、最も遅く発動したスキルが反映される。

 それはサモナーの召喚魔法も同じである。

 レベルが高くなるにつれて、効果は絶大になっていく反面、消費魔力も増えるものであるが、サモナーに関してはそれに加えて、召喚されるモンスターの個数も減る。

 レベルⅠでは21体召喚できるのが、レベルⅥは7体になる。レベルⅧでは4体になりレベルⅨでは2体にまで減る。そしてレベルⅩ、儀式魔法と同等、あるいはそれ以上の力を持つこのレベルは1体が限度である。

 本来、数の暴力で戦うはずのサモナーは強くなればなるほど、正確に言えば強い魔法を使えば使うほど、召喚するモンスターの数が減るのである。

 それを解消する方法が一つだけある。


「このスキルは完全複製。見ての通り召喚したモンスターを増やす効果がある」


 茜がそのスキルを発動した時、熾天使ガブリエルはその数を増やす。

 一体だった熾天使ガブリエルの体が二つに別れ、それぞれが元の姿に戻る。それをもう一度繰り返す。結果四体の熾天使ガブリエルがその姿を見せる。

 本来レベルカンスト時に収得できるスキルを、装備により強制的に習得したため、その効力は弱くなっている。それでも四体まで増える光景は四宮にとって大きな動揺が生まれた。


「レベル1000クラスのモンスターが四体か。そうだな。確かにきつい。だが、忘れたわけじゃないだろう。召喚魔法は召喚者の体力が大きく関係する。今の一ノ瀬茜の体力では十分な能力が発揮されていないはずだ」


 そう、サモナー自身の体力が減れば減るほど、召喚するモンスターのステータスが減少する。だからこそ体力に多くステータスを振らなくてはいけない。

 茜はそうだねと頷いて。


「確かに今のガブリエルは弱い。でも、別に私はこの完全複製がとっておきとは言っていないわよ?」

「どういうことだ?」

「私のとっておきはもっと別にあるもの」


 そう言って、茜は熾天使ガブリエルを一体、自身の元へ引き寄せた。

 すると熾天使ガブリエルはその姿をデータへと変え、茜に吸収されていく。茜の体はそれにより緑色に光る。

 それは召喚したモンスターを生贄に捧げることで自身を回復するスキル。

 消費魔力は白魔法使いの使う回復魔法に比べると断然多い。しかし詠唱時間なしに瞬時に回復させることができる。仮に、これで回復しても、ガブリエルのステータスは上昇しない。

 これもとっておきへの準備の一つ。

 茜は最後のスキルを使う。

 三体いるガブリエルを自身のもとへ引き寄せる。それぞれは先ほど同様にデータの欠片となり、茜の手へ集まりだす。

 いや、ガブリエルだけではない。二体のドラゴンも同様に消えていく。


「これが私がさっき言ったとっておきのスキル。召喚したモンスターを生贄に捧げることで発動できるサモナー唯一の攻撃魔法」


 それは巨大な光の槍となって、茜の手元に現れる。

 茜が持つ唯一の攻撃魔法、それは五体の生贄のもと発動することができる。威力は合計レベルと、サモナー自身の体力が関係するため、召喚したモンスターのステータス自体は関係しない。


「不思議な話だな。どうしてサモナーが召喚したモンスターを生贄に捧げる魔法を使うんだ?」

「さあ、私に聞かないでよ。ゲーム制作者の意地悪でしょ。でも五体も生贄に捧げるほどだから相当な強さを誇るわよ」

「ほう」


 四宮は防御の姿勢を取る。

 自身が使える最高の防御スキルを使って身を守るために。


「受けるの? 死ぬかもしれないわよ?」

「死なないさ」


 そう断言する四宮に対して、茜は容赦なくその槍を投げた。

 それは激しい雷光と共に、茜の周囲を粉砕する。

 範囲攻撃の中でも広範囲を誇り、本来であれば周囲のモンスターを一掃と共に周囲の地形を変えたであろう。

 その光景はまさに災害と呼ぶにふさわしい。

 そんな魔法により硬い強度を誇るバトルフィールドに巨大な後傷を残す。真っ白だった床が黒く焦げ、爆心地、ひいては茜が投てきした場所には大きなクレーターが出来上がっていた。そこから激しい土煙が立ち上る。

 土煙と焦げた匂いを手でかき分けながら、茜はただ待つ。

 四宮がどうなったのかを確認したかったからである。

 土煙が晴れていく中、クレーターの中央に四宮の姿があるのを茜は確認した。


「なんだ。生きてた」


 茜はそう呟くと共に、クレーターの中へと入っていく。

 どうして生きているのか不思議そうな茜に気づいた四宮が答える。


「体力をごく僅か残して、必ず耐えることができるスキルだ。言っただろう、死なないと。まあ耐えたところでのスキルだし、実践では使えないが。それよりも」


 生き残りはしたが、激しい痛みで四宮は動けずにいた。まるで地べたを這いずるようにして茜にお願いする。


「回復アイテムを使いたいが、バトルフィールドでは転移アイテムは使えても回復アイテムは使えない。一ノ瀬茜、さっき使っていた回復魔法は俺に使ってくれないか? 痛みで死にそうだ」

「それはできないわ。あれは召喚者限定だから。それよりも、早く負けを認めたほうが良いんじゃない? そうすれば、バトルフィールドから出られるし、回復アイテムも使えるわよ?」

「確かにそうだ。分かった負けを認める。だから早く戻してくれ」


 そう言って、四宮が敗北を認める。

 バトルフィールドのルールに乗っ取り、茜と四宮は元の大陸へと転移された。

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