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第11話 茜VS四宮1

 一ノ瀬茜と四宮連。

 二人のレベル差はほぼないが、装備で若干ながら茜の方が、そしてステータスの相性で若干ながら四宮の方が優勢である。

 茜のステータスは体力と魔力に多く振り、攻撃をすべて召喚魔法で召喚したモンスターに委ねた耐久型サモナー。

 対して四宮は物理攻撃速度よりの速攻戦前衛型である。武器が双剣である点から正確には速攻剣士型が正しいのか。

 サモナーにとって最も相性の悪い相手は範囲殲滅力の高い黒魔法使い型、もしくは攻撃速度と移動速度に重点が置かれ魔法を邪魔することが得意な速攻前衛型や盗賊型である。特別職も含めれば他にもいくつかあるのだが、冒険職で言えばこの二つになる。

 ステータス面の相性が悪いが、だからと茜には負ける気がしなかった。

 このバトルフィールドは決闘を行うために存在するステージであるが、これは両者同意の上でゲームシステムで移動する他に、アイテムによる強制移動が存在する。使われたのは後者である。

 両者同意の上でゲームシステムに乗っ取り移動した場合、どちらかが死なない限り出ることはできない。しかし、アイテムによる場合、アイテム使用者が負けを認めれば出ることが可能である。もしくはアイテム使用時の場合に限り、超位転移アイテムを使用することで逃げることも可能である。

 できることなら茜はそのアイテムを使いたくない。

 ならば、四宮に負けを認めさせるか、殺す他ない。


「さてと、始めますか」


 四宮が双剣を構え、そしてまるで隙を作るかのように能力強化魔法を使う。

 物理攻撃力上昇レベルⅧ。物理防御力上昇レベルⅧ。物理攻撃速度上昇レベルⅧ。回避率上昇レベルⅨ。命中率上昇レベルⅨ。移動速度上昇レベルⅧ。

 順に使われていく強化魔法を前に、茜は攻撃を仕掛けない。

 攻撃を仕掛けることを相手が望んでいるからである。

 そして変わりになるように、茜は召喚魔法を唱える。


「召喚魔法レベルⅧ。土塊大召喚。毒龍儀式。炎龍儀式」


 上位者同士の戦いになると、能力強化魔法の使用は隙と見なされる。だからこそ、仮にも使うならば相手が隙を作った時に、一つずつ重ねていくものである。一度にすべてを重ねる余裕の時間など、戦いの中で生まれることはほぼない。

 その隙をあえて見せるのはつまり攻撃を誘っている他ない。

 ただ、あえてその誘いに乗って、相手の能力上昇を防ぐべきかどうかはプレイヤーの判断によるため、正解はない。

 茜にとって能力上昇魔法を使う隙を作ってくれた方が嬉しかったのも事実。

 サモナーにとって召喚魔法を何時使うかが、勝負の鍵になるのだから。


「儀式を二回使うのは、流石に飛ばし過ぎじゃないか?」


 召喚魔法、レベルⅧは800レベルクラスのステータスを持つプレイヤーと同等の強さを持つ。モンスター名はアモン。悪魔である。召喚可能数はわずか四体と少ないが、それだけの強さを誇る。同様に土塊大召喚は土塊召喚の上位互換であり、召喚したゴーレムはアモン同様の強さを誇る。

 そして儀式によって召喚した二体のドラゴン。

 一体は毒のドラゴン。もう一つは炎のドラゴン。

 儀式はサモナーのみが覚えることができる最上位召喚魔法の相称である。

 儀式魔法は合計で3回同時発動可能である。同様に儀式の使用回数、ストックも3回である。このストック1回の回復におよそ8時間かかる。

 今、茜は2回使った。使えても後1回。そしてそれが終わると8時間たたないと召喚できなくなる。そうむやみに発動できる魔法ではない。


「あなたと戦うにはこれぐらい使う必要があるでしょ?」


 ドラゴン二体の純粋なステータスは900レベルクラスの上級モンスター並みである。

 四宮が戦う敵戦力はレベル900クラスの上級モンスター2体とレベル800クラスの中級モンスター5体。そしてまだ召喚魔法をいくつか残した自身と同レベルのプレイヤー1人。この数の暴力がサモナーの強味である。

 本来であれば、ここにペットも含めるのが茜の戦いであるが、このバトルフィールドではペットの召喚ができない。

 つまり頼れるのは召喚魔法だけになる。それは相手も同じ。

 茜の余裕の表情に対して、四宮が笑う。


「じゃあ、行きますか!」


 四宮の回避率をもってしても、二体のドラゴンの範囲攻撃は回避できない。というよりも範囲攻撃はその範囲外に出る他回避できない。

 だからこそ四宮はまずドラゴンを倒しにくるはずである。

 そうでなくてはいけない。

 しかし。


「そんな見え見えの作戦にのるわけがない」


 四宮が始めに攻撃を仕掛けたのはアモンであった。

 茜がレベルⅨではなくレベルⅧを使用したのはアモンのスキルに頼ったからである。

 四宮の双剣がアモンを一秒という短い時間に7回斬りつける。これが物理攻撃速度の上限である。四宮の高い物理攻撃力と、アモン自体が魔法型なために耐久はなかったがために、一瞬にして倒される。


「くっ!」


 すぐさま茜はドラゴン二体とゴーレムにアモンを守らせる。

 ドラゴンがスキルよる範囲攻撃を四宮にかけるが、四宮はそれを避けない。そのままアモンの元へと走る。

 壁となるべく立ちはだかるゴーレムを飛んで回避し、後ろのアモンをスキルを使用して、瞬殺する。

 瞬く間に二体倒された茜は再び召喚魔法を使おうとするが。


「そんな暇は与えない」


 四宮はそのまま茜の元へ直行した。

 発動に3秒かかる召喚魔法を邪魔するべく、剣を振るおうとする。

 その行動を読んでいた茜は、先にドラゴンに命令をしていた。背後から現れた炎のドラゴンが回転するように尻尾で四宮の胴体を吹き飛ばす。


「ちっ!」


 舌打ちと共に、体を回転させ着地する。

 その隙に召喚されたアモン2体。そして、始めに召喚されていたアモンのスキルが発動した。

 赤い光が四宮を包む。


「くそっ!」


 アモンの最大の強味と呼べるスキルは相手のステータスを減少させる。

 それはほぼすべてのステータスを減らす。そしてこれは重ね掛け可能である。最大で四体のアモンからステータス減少を食らえば、四宮の勝機はなくなる。

 ただ、アモンには様々な弱点がある。

 このスキルの他の攻撃魔法は威力が弱く、頼れない点。

 このスキルは使用しているアモンを倒せば解除される点。

 アモン自身のステータスが魔法よりで耐久が非常に弱い点。


「…………っ!」


 四宮は双剣を上に構えた。

 出し惜しみしている場合ではない。

 自身の体力の約四分の一を使う大技。それを発動するべく。

 その構えに見覚えがあった茜はすぐさま防御の姿勢を取る。自身の前にゴーレムとドラゴン二体を置く。

 奥義、趨炎奉勢。

 双剣のみが扱える炎の物理技。四宮の双剣から激しい炎の風が相手を切裂くべく、茜へ向かう。

 見た目は派手な魔法に見えるが、ダメージ計算は物理のみが関係している。

 冒険職物理型が使える奥義はサモナーの儀式に近い。儀式同様にストックと長い再使用時間がある。ストックは4回。1回の回復時間は6時間である。

 多くの体力を使う反面、その威力は壮大であり。

 ゴーレムと4体のアモンを一撃で消し去り、二体のドラゴンの体力がほとんど持っていかれる。

 そして自身が召喚したモンスターを貫通して、茜の高い体力を三分の一近くを持って行った。これでも威力はステータス減少で減っているのに対して。


「一気に形成逆転だな。防御スキルを使えばよかったのに」

「私は残念ながら防御スキルが使えないわ」

「そうだったな」


 耐久型のサモナーは召喚魔法と一部強化魔法、微量な回復魔法しか使えない。防御スキル、強化魔法、回復魔法など、そういったものは召喚したモンスターに任せるのが耐久型のサモナーである。

 茜は二体のドラゴンに守らせながら、 自身を落ち着かせるべく深呼吸する。


「流石に、私の甘い考えが招いた結果ね。スキル…………」


 茜は召喚魔法を唱え始める。

 茜が最後まで温存するべく魔法を。

 茜にとって、儀式以上の取って置きの奥の手を使うべく、巨大な魔方陣を展開した。

 それを見るや否や、四宮は動き出す。召喚魔法の使用を邪魔するべく、茜との距離を一気に詰める。

 そして、二体のドラゴンの攻撃を回転するように避け、剣を茜に向ける。


「使わせる暇があるとでも」


 それを、茜は受け入れる。

 茜の体を連続して七回攻撃した四宮はドラゴンの二撃目を後ろへ飛ぶ形で回避する。

 一度攻撃を仕掛ければ召喚魔法は終る。再び使えば、また距離を詰めて攻撃をしかければ良い。

 そう判断した四宮をあざ笑うかのように、茜の召喚魔法は途切れていなかった。


「何故」

「魔法はほとんど攻撃を受ければ中断される。でもそれはすべてじゃない。そうでしょう?」


 その知識は四宮ももちろん知っている。一部攻撃魔法は中断されないものがある。しかし召喚魔法で、中断されない魔法など四宮は知らなかった。


「召喚魔法レベルⅩ」


 それは茜の背後に、降臨した。

 はるか上空からゆっくりと降りて来るそれの姿は神々しく。四宮は数刻それに見とれてしまった。

 三対六枚の翼を持つ天使。名を熾天使ガブリエル。一対は顔を一対は体を、そして残りの一対で空を飛ぶ天使種のモンスター。


「可笑しいな。レベルⅩは、レベルカンストしてやっとで覚えれる魔法のはずだろう。一ノ瀬茜、お前はまだレベルカンストに到達していないはずだが、どういう手品だ?」

「ええ。まだしていないわ。これはただの副産物。私が手に入れた装備のね」

「…………どういうことだ」


 茜はそう言って、微笑みを浮かべた。


「ついでに、もう一つ私のとっておきを使ってあげる」

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