第1話
私には、秘密がある。
大きな秘密を抱えていたと言っても過言ではない。
隠してた。
誰にも言う予定もなかった。
なぜなら、その後、本当は…
そんな私が抱えている秘密をあの日…
16歳。
高校に通っていて、たわいのない話を友達と話したり笑ったり、自分の席に着いて、教科書やノートを手にしたり、つまらない授業の話を聞きながら居眠りしたり、隣の席には、少し気になる男の子だったり…
放課後には、友達と、少しオシャレなお店に寄って買い物をしたり、
「ここの、パンケーキ、最高!」
そう微笑み合いながら、共感したり…
そんなどうってこともない日々を過ごしていても、毎日がキラキラとした楽しくて楽しくて…
でも、時には、友達と喧嘩なんかしちゃって…
「絶交だから!」
そんな言葉を浴びさせられたりも…
大体の人がこの道を通っていく。
しかし、私は、一握りの数少ない、一人。
好きだった人との間に…
出来てしまった訳で…
16歳。
その彼に打ち明けたら、呆然とした顔。
驚きのあまりか、何も発しない。
しかも、幹にシワを寄せており、眉も強張った、険しい顔つきである。
彼の両親からも
「ごめんなさい!本当にごめんなさい!」
「……」
謝罪されて、その申し訳なさそうな感じで、封筒を渡されたらしい。
私は、少なくとも、大きなショックを受けた。
もっと、喜んでくれると思っていたのに。一緒に。
16歳。
私は、決心をした。
自分のお腹の中にいる赤ちゃんを産むことを。
勿論、親からは、反対された。
その中でも、母は、唯一、私の味方でいてくれ、支えてくれていた。
しかし、その母が…
突然、身体を壊し、いずれは…
病気で、私から去っていった。
1週間、飲み食いせず、ベットの上で、布団に潜り込み、部屋は、カーテンが閉めっきりの真っ暗闇で、引きこもり状態であった。
流石に、1週間も経てば…
「ぐーぅ、ぐーぅ…」
お腹もなる訳である。
「うー…」
冷蔵から漁り、適当に口にした。
膨れているお腹を見て、触れた。
すると…
動いた気がした。
感動の一瞬だった。
だから、それでも、私は、お腹の子を…
覚悟して、産んだ。
産まれたての赤ちゃんを目の前にして、感動した。
感動のあまりか、目からは、涙が溢れ出た。
だけど…
寝る時間なんてなくて、お金もない私は、苦労していた。
やっと、寝てくれたと思ったら、夜泣き。
「うわわーぁ、うわわーぁ」
その声に起こされ…
面倒も毎日見て…
家の家事にも気を遣いながら…
部屋は、子供には、割れ物の飾り物を置かないようにしたり、テーブルも角のとれた丸っこくなったもの。
突然、走り出しても大丈夫なように、たくさん、座布団を置いて置いたり。
しかし、そんな育児に疲れ果てていた。
ある日、その子を連れて、散歩をしていた。
毎日、散歩は、している。
まだ、この子がお腹の中にいた時も。
それだけは、欠かさずに。
いつもの土手を通って、野球をしている少年達の姿を少しだけ、見て、家からは、少しかけ離れた公園に行き、
「かわいいですね!何ヶ月くらいなんですか?」
「8ヶ月くらいです」
「そうなんでね、今、私のお腹の中にもいるんですよ」
もう一人の子供なのか、男の人と遊んでいる。
お父さんだ。
その光景を見る度、複雑な気持ちが私には迫ってくる。
公園から出て、更に、少し歩く。
そして、そこには、踏切が。
カンカンカンカン、カンカンカンカン…
私の耳に、鳴り響く。
電車が、走ってくる音。
………
その時だった。その光景を見られてしまっていたのだ。
周りに、誰もいないと思っていたのに…
そこで、出会ったのが、彼だったのだ。