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瞑想迷走 蛙よ走れ  続  作者: らいのべーる
3/9

御定まり

 着いて歩いて来てみれば、案内人が姿を眩ます。よもや騙されたかと振り返るも今居た場所は霧の端。何を元に振り返るのか、何を求めて切り出すものかと途方に暮れるも何も見えずにいる。


 高くいた日の光りもやがて地上に降り立ち、赤へ黒へと変わりだす。牛をひく老婆や枝を振り回す子らはは家路と急ぎ、一人置き去りにされるほど、落ちぶれてはおらぬ。何処から来たのか何処から来るのか、好奇に踊る幼子のように一つ一つに驚くことはない。己というものを持っていさえすれば意図も容易い謎解きのようなもの。迷い落ちれば闇の奥、解き明かすれば光の国。よもや己のいる場所さえ覚えておけば、むやみやたらと慌て騒ぐことは何も無い。


 まさしくそれは 安心感


 人と同じで違うもの。けれど、まさしく同じもの。


 己のいる場所いたい場所。それさえ知っていれば恐いものは何もない。些か強引にもの思うことはあるけれど、明日は晴れだと進むことが重要なのである。


「はて どうしたものか」


 酉とはぐれ一人山の麓に足を止め、辺りを見渡し記憶を巡る。それは今の時を遡ることではない。今の過去を記憶に写すことである。かの経験が同じで違う、今の今と過去の過去を点でなぞり後を追うのである。


 経験を元に今を見る


 同じ過ちを繰り返すのなら同じ思考で選択しているのと同じ。二つに一つと決めたならそれを実に行動起こす。けれど、そんな単純な迷路のような道であっても、何度も同じ道を選んでしまう。


 まさしくそれは 癖 である


 癖と云うものはそれはそれは厄介なものであり、イトオシイものでもある。意識の内に囁く感覚的なものであり、無意識に咲く羞恥の花でもある。何する事なく表れる癖の類いは、良きも悪きもその人を写すのである。思考 行動 感情 視覚。どれを取っても容易いこと。しかし私は同じ鉄を踏むことはあまりない。作ることはあるとはしても、いびつな形で同じものは一つとない。よもやまさしく同じだと指を差され指摘されても私は私。一向に構わないということである。


 うんともすんとも言いながら、辺りを見渡し一つ行動を起こしてみる。


 酉とはぐれた山の麓。道は三つに目にみえる。一つは山の右側へ、一つは山の左側。そして一つは山の中へと続いている。


「砂利道 畦道 獣道 とは」


 顎に手を触れ腕を組む。これはどれにと空を見る。己の迷いに頭を揺らし、空を眺めて一つに決める。 


「それもそうだな 私はここに」


 右の片手に拳を握り添える片手にポンと打ち、よしと声をはっては足をだす。


 薄暗くなる空に田畑は眠りに入っていく。遠くに光る家々の暖はポツポツと灯り消えては話をしだす。今日は明日と笑いだし、泣く子の声に安らかに見る。それは帰る場所を知っているからこそ、歩いていけると云うものである。



 砂利道 畦道 獣道。三つの道に、私は畦道を歩いていく。


 悩み浮かべて行き着く場所は、行き行く場所はと思いを馳せては畦の田畑に目を飛ばす。今日も昔と同じような経験に景色に見た。


 あれは幼少の刻、友と遊んだ記憶のことと同じような経験に見ては黄昏る。しかし、それは結果として似ているものなのであり同じものでは一切ない。似ているものは、似ている程こびりつく灰のように心の壺に焼き付いて塗り込まれていくのである。喜怒哀楽共に塗り込まれる記憶は、時として誤魔化す化け物にも成り上がる事もあり、あの頃はと黄昏ついでに襲われる事もあるのである。


「あの頃の あやつは今、、、」


 普段考えもしない物事ほど、その時ほど出てくるものはない。記憶という感情に、似ている経験が合わさるものほど移り行く時を止めてしまう。それは、後悔 という船に乗ってやってくる。やって来るならそれならそれで、七の神も一緒に乗って来て欲しいものだと鼻で笑う。


 楽しいと思うものほど顔を出さず、辛い悲しいといった思うものほど、それ来たことかと顔をだす。よもやお節介やきの姑のように。


 黄昏れついでに歩を進め、田畑に影を落として歩いていくと、先の方から声が聞こえる。


「ちょいとちょいと お前さん ちょっと手伝ってもらえませんか?」


 暗闇に姿を見るもよく見えず、声の音から聞いて若い女性だとわかった。


「どうしたというのか?怪我でもしたか?迷ったか?」


 畦に腰をついて、見上げるように助けを求める女性に近づいては手をかける。あやかし類いのモノなのかと疑いつつも、手を触りて人の子と安心しては女性の体を引き起こした。

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