生徒会長
まさか2日連続で生徒会資料倉庫に訪れるとは思ってなかった。
しかし、生徒会長が俺に何の用だろうか。
生徒会長なんて朝礼や総会の時にチラッと見る程度で全く印象にない。
めんどくさいことになんなきゃいいんだけどな。
そんな思いで扉を開けた。
生徒会長は窓辺の近くで待ち構えるように立っていた。
黒髪ロングできっちりしてそうな見た目。まさしく生徒会長って感じだ。
「突然呼び出して申し訳なかったわね。そこ座ってくれる?」
「はぁ。」
勧められて椅子に座ると彼女も近くの椅子に座った。
彼女の雰囲気が雰囲気だけに、何か悪い事でもしただろうかと思っていたのだが、
「ここの片付け、手伝ってくれたらしいわね。ご苦労
様」
ちょっと意外なことを言った。
先程までの固い雰囲気はなくなり、優しい表情をしていた。
「あ、ありがとうございます。」
「まぁ、本題はそっちではないのだけれど。」
サッと雰囲気が変わる。笑顔のままだが迫力が違う。
「心咲に会ったそうね。」
ん?心咲?何故心咲がここで?
「あぁ、言ってなかったわね。心咲は私の妹よ。」
「葉月さんに聞いたわ。あの山で心咲にあったのでし
ょう。」
「えぇ、そうですけど?」
葉月め.....。
「昨日は2人で山に行ったとも聞いたわ。」
「そーですよ。」
「手は出してないでしょうね?」
「出してねーよ!」
思わずタメ語になった。
何を言い出すんだ、コイツは。シスコンか。
「あの、帰っていいっすか?」
「まだよ。あの子が山で休む理由を説明してない
わ。」
「家じゃ休めない。って言ってましたけど。」
「家では休めない理由を説明されてないでしょう?」
確かに説明されてない。
心咲は家では休めないとは言っていたが、何故家で休めないかは言ってなかった。
一体どんな理由なのだろうか。
説明を一通りされたが、ごちゃごちゃしてて理解に苦労した。会長の話を要約すると、
遺産相続やら、父親の不倫やらでとにかく家庭内が荒れているらしい。
「大変っすね。」
「下手な同情は辞めてほしいわ。」
そう言ってため息をついた会長は続けて、
「それに、私はもう、慣れてしまったの。」
「あの子は、耐えられなかったんでしょうね。」
それが心咲の山へ行く理由.....。
想像以上に深い理由だった。
「長々と話して悪かったわね。以上よ。」
しばらくは立ち上がる気になれなかった。
会長は、俺が立ち上がるまで律儀に待ってくれてい た。
再び立ち上がる気力が出てきて退室しようとしたと
き、ふと疑問が浮かんできた。
「心咲が俺のことを木みたいって言ってたんすけど、どういう意味なんですかね?」
会長は少し間を置いた後、
「あなた、気に入られたのよ。心咲に。」
柔らかい笑顔でそう言った。
教室に戻りながら、先程の話を思い出してまた疲れてしまった。
山に行こう.....。
そうしないとやってけないような気がした。
ありがとうございました。