木みたい
登校して今日も教室に入る。
テンプレ化した日常の始まり。
幾人かのクラスメイトと挨拶を交わし、自分の席に着いた。
「ねぇ、樹。」
席に着いた途端、後ろの席の葉月が話しかけてきた。
「心咲ちゃんの席わかる?」
「いや、わからん。」
「そっかー、だよね。」
同じクラスだったことを忘れていたんだからわかるわけないだろ。
しかし、辺りを見渡しても心咲の姿はなかった。
それから5分くらいで心咲が登校してきたが、肝心の心咲の席は葉月よりも後ろの列だった。
6限の授業が終わった。
俺は部活動に所属していない。
よって今からフリーダム。
帰り支度をしていると心咲が俺の席まで来た。
「今日も、来る?」
「あぁ、そうすっかな。」
するとその会話を聞いていた葉月は、
「いいなー、私も行きたかったなー。
あ、気をつけてね。」
と言って慌ただしそうに教室を出て行った。
「忙しいんだね。」
「さて、行くか。」
今日は心咲と山へ向かった。
心咲は山に入ると深呼吸をして、
「ただいま。」
と、言った。
「ほんとに山が好きなんだな。」
「変?」
そう聞いてきた心咲の顔はやや赤かった。
「別に俺は変とは思わないけど。家より落ち着く場所なんだろ?」
少し沈黙。
次に心咲が放った言葉は、
「樹くんって、木みたい。」
そんな言葉だった。
昨日の場所に着いた。適当な芝に寝転ぶ。
心咲も同様に寝転ぶのだが.....
近い。
俺と心咲の距離は30センチくらいだった。おまけに心咲はこちらの方を向いているので余計に近く感じてしまう。
「な、なぁ。なんでそんな近いの?」
「ん、嫌だった?」
嫌ではない。決して嫌ではないのだが。ほら、何というか、落ち着かないというか。
「樹くん、木みたいだから。」
またですか。
「木に似てるってどういう意味で言ってんだよ。」
さっきも言われたので聞いてみることにした。
すると心咲は悪戯な笑みを浮かべて、
「教えてあげない。」
と言って、反対方向を向いてしまった。
「樹くんは、植物、好き?」
急に心咲が聞いてきた。
なんか心咲は急に話を振ってくることが多い。
「さぁな、考えたこともなかった。」
「そう.....」
昨日の「そう」と違い、少し寂しげだった。
「ぼくは、好きだよ。草も、花も、 木も。」
何か含んだ言い方だったが、俺は心咲がぼくっ娘だったことにしか意識がいかなかった。
翌日。登校すると昨日と同様に葉月が話しかけてき
た。
しかし、その話題は全く想像してないことだった。
「樹。なんか生徒会長が話があるって。昼休みに、生徒会資料倉庫に1人で来てって。」
ありがとうございました。