安らぎ
今回から話が動き出します。 多分。
「ねぇ、何してるの?」
芝の上で寝転んでいた少女に葉月が聞いた。
少女は声をかけられてから初めて俺達に気づいたようで、少し驚いているようだった。
「誰?」
少女が聞いてきたので、
「えっと、22HRの多々良 葉月です。」
と葉月が自己紹介をした。
お前も言え。と言わんばかりに葉月がこっちを見てきたので
「あー、俺も22HRの青島 樹だ。」
と自己紹介をした。
そうすると少女も続けて、
「22HR、紅林 心咲」
と名乗った。
あ、同じクラスだったのか。
「ごめん。紅林さん、同じクラスだったのに。」
葉月も覚えてなかったらしく、謝った。
「心咲って呼んでくれた方が、いいかな。」
心咲の方は気にしてないようだった。
「それで、ここで何してたの?」
この葉月の問いに少し間を置いてから、
「休憩。」
と、答えた。
「休憩?ここで?」
葉月の疑問も最もだった。
普通はこんな日にまでわざわざ山に来てまで休憩するだろうか。
「家じゃ、休めないから.....」
哀愁のある言い方だった。あまり触れちゃいけないんだろうな。
「ここしか落ち着く場所無いの。」
ため息をつきながら言った。
「座ったら?」
心咲に勧められたので近くに座り込んだ。
その後は何をするわけでもなく、寝転んでいた。
「ほんとは、ずっとここにいたい。」
いきなり心咲はそう言って立ち上がった。
その時、初めて夕方になっていることに気がついた。
「また、ここ来る?」
心咲は俺にそう聞いてきた。
「来るよ。ここ、落ち着くからな。」
「そう.....」
心咲は小さく笑いその場をあとにした。
俺も寝ていた葉月を起こして、下山を始めた。
「不思議な感じだったねぇ。」
住宅街に戻り、しばらくしてから葉月が言った。
葉月の言う通りで、山で寝転んでいただけなのだが、すごく不思議な時だった。
脳が空っぽになっているような感じがして、そして気がついたら夕方になっていた。
忙しさを忘れて、久々にのんびりできた。
「明日も行ってみるかな。」
「私、明日は行けそうにないなぁ。気をつけてね。山で迷ったりしないでよ。」
「迷わねーよ。」
葉月と別れて、今日を終えた。
ありがとうございました。