遭遇
外から見た感じは不気味だったが入ってみると普通の登山道のようだ。
木が太陽の光を遮ってくれるおかげでかなり涼しい。山特有のジメジメした感じはなく居心地のよい場所だった。
葉月はさっきから辺りをキョロキョロと見回しながら進んでいる。
「なんか探してんの?」
「可愛い動物でもいないかなぁ、って思ってるんだけど...」
そういや葉月はうさぎが好きだったな。と、どうでもいいことを思い出しながら歩を進めた。
しばらく歩くと滝が目の前に現れた。高さはそれほどでもなく5メートルくらいだ。水の降ってくる音に趣を感じる。
川が近くを流れていてその水は透き通っている。
飲めるのだろうか。
「ダメだよ、樹。川の水には何があるかわかんないんだよ。」
飲もうとするよりも先に葉月に注意された。
「まだ飲もうとしてねーよ。」
「絶対飲もうとしてたでしょ。ほら行くよ。」
「だからしてねーよ。」
確かに飲みたいとは思ったけど。エスパーか。
「ここ、いいとこだと思わない?」
また少し歩いたところで突然葉月が聞いてきた。
「そうだな。」
確かにいい場所だと思う。普段は木や川なんて見向きもしないのに、この場所では新鮮に映る。
童心にかえるという表現が正しいだろうか。
グサッ。
「痛っ、何すんだよ!」
葉月も童心にかえっているらしく、落ちてた栗のイガを投げてきた。
「アハハ。足元に栗が落ちてたから投げたくなっちゃって。」
投げ返してやろうと思い、栗を拾うと葉月は子供みたいに走って逃げた。
「あ、おい!待てよ!」
投げ返してやろうと拾った栗をその辺に捨てて葉月を追いかけた。
葉月を追いながら少しの間走っていたら急に開けた場所に出た。
その一帯は木があまりなく、丘のような土地が広がっていた。芝生のような場所もあり、寝心地良さげな場所だった。
「わぁ、こんな場所があったんだ。」
葉月は驚いていた。
俺もこんな場所があるとは思ってもなかったので驚いた。
「すごいよ、樹。近くにこんな場所があったんだ。」
この新発見に葉月の声は弾んでいた。
この地域にこんな場所があるなんて聞いたことすらなかった。
初めて来た場所なのでぶらぶら散策していると何かに気づいた葉月が正面を指しながら
「樹。あそこ。」
「何だ?」
その指の先には、
俺たちと同じ学校の制服姿の少女がいた。
ありがとうございました。
ようやくあらすじの少女が登場しました。