賭け
短いですがご容赦ください。
今、俺は葉月と山へ向かうため閑静な住宅街を歩いている。
登山口までは直線距離で600メートルだが、迂回する必要があるので15分程かかる。
ただ歩くのも暇なので先程気になったことを聞いてみることにした。
「なぁ、葉月って視力いくつなの?」
600メートル離れた山にいる人が見えた上に、普通の登山者の可能性もあるはずなのだが葉月はうちの学校の生徒と言い切った。マサイ族並の視力なのだろう。
と、思っていたのだが、
「えっとー、2.0だよ?確かね。」
と普通な答えが返ってきた。
「何でそんなこと聞いたの?」
「山にいる生徒なんて見えるものなのかなーって思ったから。」
「ほんとにいたよー。まだ疑ってるの?」
曖昧な返事をしてその場を流したが、ぶっちゃけ疑ってる。
少し間を置いて葉月が
「じゃあさ、本当にうちの学校の生徒がいるかで賭けようよ。」
こんなことを言い出した。
「生徒がいたら何か一つ私の言う事をなんでも一つ聞く!とか。」
納得してない俺を置いて葉月はどんどん話を進めていく。新手の詐欺のようだった。だが、このままでは賭けにならないので、
「じゃあ、生徒がいなかったら何してくれる?」
と、聞いてみると
「じゃあもし生徒がいなかったら樹にココアクリームあんみつを奢るね。」
と言われた。すっごい笑顔で。
おい、賭けの内容が釣り合わないだろ。何故俺は何でもしなくちゃならないのにお前はスイーツ1つで済ませるんだ。
そもそもココアクリームあんみつって何だ。初めて聞いたわ。
まぁ、甘い物は好きだし葉月の要求だってきっとそんな大したことないはずなのでそれで手を打つことにした。
そんなとりとめもない話をしばらくしている内に登山口へ着いた。
登山口は木が茂っている中に人が歩ける程度の道がある。立て看板のようなものもあり、一応は登山口としての形は保っている。
しかし、登山道として使われている様子は無く、立て看板も風化していて字が読めなかった。
正直かなり不気味な感じだ。
葉月はそんな山道に入ろうとしている。
「ほんとに行くのか?」
「へぇ、私1人で行かせていいの?」
ニヤニヤしながら葉月が言った。
確かに葉月を1人で行かせたらごまかされる可能性もあるな。あと事故られると後味悪いし。
「わかったよ。行くよ。」
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ココアクリームあんみつって甘ったるそう。