別離
「俺で......いいんですか?」
「えぇ。 あなたが、気の済んだ時に外してくれて構わないわ」
心咲の親も納得してくれているらしい。
それはほんとに俺がやっていいことなのか?
......
「そういうことなら......」
俺が応じると会長たちは部屋を出て行った。
いいんだろうか......最期なのに......
いや、気をつかってくれたのか......
そこまでしてもらえるとは......
「心咲、お前は俺で良いのか?」
返事なんてない。
意識があったらなんて言ってたかな......
いつもみたいにはぐらかされたんだろうか......
「なんて言うか......楽しかったよ、お前に会えて。
なんだかんだで俺まで山通うようになっちまったし。
できるなら、また行きたいよ。 お前と。」
お前と。それはもう叶わない願いになった。
だから、か。 涙が頬を伝う。
「ほんとはさ...... 死なせたくねぇよ......」
引き伸ばしたところで心咲の意識が戻るわけではないのはわかっている。それでも失うのは嫌だった。
嫌だけど、でも......しょうがねぇな......
だって、もう......あぁ......
ポケットに手を突っ込む。
中から取り出したのは、
葉っぱの髪留め。心咲だけの髪留め。
俺が持ってるよりも、心咲の髪についてる方がそれらしいんだろうし......
髪留めを着けてやった。
「......やっぱ、似合うな......」
心咲の髪に髪留めを着けた時に心咲の額に手があたった。
まだ生きてる。 それを示すように、暖かかった。
心咲の呼吸器を外す。
それは心咲を殺すことだ。
俺は今から心咲を殺すのか......。
そう思うと、余計に呼吸器を外しづらい。
だが、もう何もすることがない。
だったら......もう......外してやるしか......
呼吸器に手をかけた。
息が上がり、手が震えているのが自分でもわかる。
心咲......
心咲と会ってから、ほぼ毎日山行って、色々話をし
て、木の実採ってもらって、それが毎日楽しくて、
それで好きとまで言ってもらえたのに......
俺は何もしてやれてない。
心咲のことが好きと思ったのも、心咲がこうなってからだから心咲に伝えられていない。
結局俺ができるのがもうそれしかなかった。
——「ごめん......」——




