気鬱
心咲を死なせてあげること。
死なせてあげる.....?
「死なせてあげるって.....治らないんですか?」
「医師は、そう判断したということよ。
治そうとしても苦しむだけ、って」
そんな.....
「ほんとに治らないんですかね.....」
「樹くん?」
「また、心咲と話したいんですよ.....
心咲と山行きたいんですよ」
「だから、治ってくれないですかね.....」
ベッドの上の心咲に目をやる。
「私も、そう思っているわ.....治ってほしい。
でも、心咲を苦しませるくらいならなら、
このまま.....」
会長はそのまま黙って心咲を見ていた。
俺は病院を後にした。
心咲の生死の判断は親が来てからするそうだ。
治らない、か.....。
どうしようもねぇな.....。
教室は、クラスの連中は、いつもと変わらなかった。
一人欠けているにも関わらず。
心咲のことなんてどうでもいいのかよ.....
そんなふうにさえ思えた。
「おはよ.....樹」
「あぁ、おはよ.....」
席に着くと葉月が声をかけてきた。
葉月との交わす挨拶の中でこんなに暗く重いものは今までなかった。
「心咲さ.....治んねぇかもって」
「えっ.....」
「治らないと.....どうなるの?」
「.....多分、死ぬと思う.....」
重かった空気が更に重くなる。
そしてそのまま朝のホームルームが始まったのだが、重かった空気は教室中に拡散することになった。
担任が言った一言で。
「紅林だが.....、残念だが.....明日で息を引き取るそうだ.....」
ホームルームは終了したものの、依然として重い空気は抜けない。
空席の心咲の席が異様に浮いていた。
心咲は明日死ぬ.....。
会長と親の出した答えがそれだ。
今更俺がなにかした所で何も変わらない。
脱力感が半端じゃない。
放課後。
葉月は手早く荷物をまとめると、
「樹.....。 私、心咲ちゃんに会ってくる」
と言った。
「あ.....俺も行く.....」
「うん.....」
互いに何も言わなず、互いに距離がある。
2人で病院に向かうというよりは別々で向かっているそんな感じで病院に向かった。
会長と、心咲の親がいた。
「最期に、会いに来ました.....」
葉月が心咲に歩み寄り何か言った、気がした。
そしてそのまま病院を後にした。
黙って心咲を見た。
これで、最期.....
「いいのよね」
会長は親に確認を取った。
「樹くん、お願いしていいかしら?」
「.....なんでしょうか.....」
「心咲の呼吸器、外してもらえる?」




