回想-前編
萌芽のカットした部分の話です。
俺と心咲の山での出来事か...。
だとすると、ここから話すのが1番わかりやすいだろうか。
俺が心咲に好きだって言われたこと。
すっ。
突然心咲が寄りかかってきた。
「心咲?」
「樹くん。君のこと、好きだよ。」
「えっ」
意外なことを言われたので間の抜けた返事をしてしまった。
心咲は俺に寄りかかるのを止めて、
「ん、もう一回言う?」
と聞いてきた。
聞こえてなかったと受け取られたらしい。
「いや、そういうことじゃなくて。」
先程の植物は違うけど人間が他人を好きになるってのは、心咲自身のことを言ってたのだろうか。
「その、好きってlikeの方?loveの方?」
「likeって意味もあるけど、今のはloveの方で言った
つもり。」
.....。
「嬉しくなかった?」
「いや、すげー嬉しい。......ただ、悪いんだけどさ、
理由聞いていいか?」
若干失礼な気がするが、一応会ってからまだ日が浅いので聞いてみた。
「うーん.....そうだね.....。」
心咲が指を3本出した。
三つ理由があるということか.....。
一つ目。
「樹くんの行動や言動が植物っぽかった。」
ま た そ れ か。
二つ目。
「一緒に居ると落ち着く。」
そうなのか。一つ目と比べて随分と一般的な理由だった。
「最後の理由は.....」
「は?」
「気がついたら好きだった。」
「.....なんだそれ。1番理由になってないな。」
笑いながらそう言うと心咲も、確かに。と笑った。
「でも、1番しっくりくる理由だと思うな。」
それを聞いて俺は確かにな。と笑ってしまった。
理由を説明した心咲は、また岩に座った。
「好きだ。って思いを伝えられるとさ、付き合うって
ことを考えるのがほとんどでしょ。」
図星。まさしくそう考えてた。
「でも、ぼくはそうは思わないな。好きなものに好き
って言っただけだし。」
「じゃあ、今の好きは別に付き合ってくれ。って意味
じゃねーのな。」
「そうだよ。それとも、樹くんはぼくと付き合いたい
の?」
「うーん.....特別そう思うってわけでもないんだよ
な。」
「.....それはそれで傷つく。」
「悪かったな。」
「でも、植物らしい答えだなって思うよ。」
「そのよく言う植物みたいってどんな意味の比喩な
の?」
前々から気になってたので聞いてみたら、
「.....比喩じゃなかったり。」
と、お茶を濁されてしまった。
その後は何をするわけでもなく時間がただ流れていった。
ありがとうございました。




