果実
時間が少し飛びます。
前回は月曜日ですが、今回は水曜日です。
「樹くん?」
心咲の声で目が覚めた。
水曜日。
変な時間に体育があるせいでか眠くて仕方ない。
「んぁ、悪ぃ。」
「ふふっ、よく寝てたね。」
今日は奥の池のある場所での休憩だった。
いい感じの岩があり、ほどよく暖かい岩の寝心地はかなり良かった。
「この岩、いいでしょ。君たちに会うまではこの岩で
休んでた。」
「あぁ。あん時か。」
心咲に初めて会った日のことを思い出した。
もうだいぶ前の事のように思えてしまう。
「いつもの場所と、ここでって、何が違うんだ?」
どういった意味で使い分けているのだろうか。
「ん、そだね。特に理由はないんだけどね.....。」
「ないのかよ。」
「でも、こっちの方は、特別な場所になったかな。」
「はぁ.....」
心咲の言うことにはどうも意味深なところがある。
あえて言ってるのか天然なのかはわからんが。
「あ、ちょっと待ってて。」
突然何かに気づいた心咲は、池を回って対岸の木に向かった。
そして木の枝に向かってぴょんぴょんしてた。
しばらくぴょんぴょんした後、手に木の実を持って帰ってきた。
「これ、食べてみる?」
「ん?食えるのか?」
「食べれないものは出さないよ。」
採ってきて貰ったわけだし、せっかくだから食べてみた。
「あー、なんか好きな味だ。」
「それなら、良かった。」
少し酸っぱいが自然な甘みがあった。
日が傾いてきたので、そろそろ帰ることにした。
下山途中の滝に差し掛かった時、心咲が立ち止まった。
「樹くん。」
「ん?何だ?」
「あの場所のことは、誰にも言わないでいてくれ
る?」
「ん?何でそんなこと?」
「あの場所は...あんまり他の人に入って欲しくない
し。」
「元々言うつもりもねーけど、わかった。
黙ってるよ。」
それを聞いて心咲は安心したような顔をしていた。
「樹くんは、植物みたいだから特別。」
あの場所に入るには心咲独自の裁量があるらしかっ
た。
「じゃあ、また明日。」
「お、じゃあな。」
初めて心咲と別れの挨拶を交わした気がした。
ありがとうございました。




