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二人のお馬鹿?

入学式から一週間が経ち、生徒達は皆、学校での立ち位置や所属する集団などが曖昧ながら決まり、落ち着きが感じられるようになった。

(れん)彩華(あやか)もその例外ではなく、少しずつだが友人も出来た。

その日の朝も、蓮と彩華が一緒に教室に入ると、挨拶をしてくれるクラスメイトたち。

それに対して蓮は挨拶を律儀に返し席に着くと、前の席の光希(みつき)が蓮の方へ振り向く。


「おはよう、篠田君。今日も眠そうだね。」


そう言って、愛らしい顔で微笑む。


「ああ、おはよう、光希。今日はしっかりと寝たぞ?」


そんな光希に対して、蓮も微笑み返しながら応答する。

その応答に、不思議そうな顔をする光希。


「しっかりって、何時間くらい?」


「10時間。」


「それは寝すぎじゃないかな……?」


そんなやりとりをしていると、荷物を置いた彩華が近づいてくる。


「あ、飯田さん、おはよう。」


『おはようございます、獅子丘君。』


そう書いたメモ帳を見せて、頭を下げる彩華。


「飯田さんは、何時間くらい寝た?」


『10時間です。』


「二人とも寝すぎじゃない?」


そう言って笑う光希。

二人も、つられて苦笑する。

その時、教室のドアがガラッと開く。

寝ぼけ眼を擦りながら入ったきた少年は、蓮たちの席に近づく。


「おはよ……、蓮、光希、飯田さん。」


「……今度は死にかけてる人が来たね。おはよう、平田君。」


声をかけられた少年、平田大介(ひらただいすけ)は、よろめきつつも力なく微笑む。


「大介、なんでそんな眠そうなんだ?」


蓮がそう質問すると、大介が拳を握りしめて口を開く。


「俺に課せられた、責務を果たすためだ……。」


「……責務?」


少し、蓮の目つきが訝しげなものに変わる。

そんな目線を気にせず、空元気を振り絞って、大介は口を開く。


「……ああ。俺がやらなきゃいけないこと。俺しか出来ないことだ……。」


「……何をしたんだ?」


蓮がそう聞くと、待ってましたとばかりに口角を吊り上げ、大介は蓮に胸から取り出したUSBを渡す。

それを丁重に受け取る蓮。


「……俺はやり遂げたぜ、蓮……。」


「だから何をだよ。」


「そのUSBにはなぁ……」


クラスのど真ん中で大介は高らかに宣言した。


「この学校の全女子生徒の何から何まで!出産直後の体重から最近の趣味や持っている下着の種類!スリーサイズはもちろんのこと、血液型から性癖まで!洗いざらい、全部調ベさせてもらったぁ!俺はこのクラスの女子の身体の隅から隅まで知ってるし、そのUSBには全部そのデータがぶち込んである!」


大介は女子からの冷ややかな視線と、男子からの呆れや羨望や尊敬やらがいろいろ入り混じった視線を感じながら。

静かにこう言った。


「野郎ども、資金の貯蔵は十分か?」


その言葉を聞き終えた蓮が、手に持ったUSBをポキリと折り、それを見た大介が意識を失ったのは、余談である。










大介が保健室に運び込まれるのと入れ違いに、先生と同時に女子生徒が息を切らして入ってきた。

少女は肩で息をしながら口を開く。


「……はぁ、はぁ。……ギリギリ……セーフ?」


「次からはこんなにギリギリにならないようにね、大原さん。」


「あー、はい。頑張ります。」


そう言って蓮の隣の席に座る少女、大原桜。

席についた途端、隣の蓮に話しかける。


「おはよ、蓮君。今日ってどんな時間割だっけ?」


「その言葉から察するに、大原さんは教科書を持ってきてないよね。」


「えへ。」


「えへ。じゃないから。で、今日はどうしたの?寝坊?」


「ちょっと厄介ごとに巻き込まれちゃってね。」


「厄介ごと?」


蓮がそう聞くと、桜は自慢げに語り出す。


「ちょっと明らかに怪しそうな黒ずくめの男達を尾行してたんだよ!」


「街中にそんな怪しげな人、よくいたね。」


「それでね、よくテレビに出てる社長さんが黒いケースを渡しててね。何を言ってるのかは聞き取れなくて、夢中になってたら……。」


「……夢中になってたら?」


そこでゴクリと唾を飲み込む蓮。

そんな蓮の態度に満足しながら言葉を続ける桜。


「後ろからもう1人の黒ずくめの男に鈍器で殴られたの。」


「……はい?」


「それで気を失っちゃった私は変な薬を飲まされちゃって気づいたら……。」


「気づいたら……?」


またまたごくりと唾を飲み込む蓮。

その態度に満足げに頷きながら続ける桜。


「体がナイスバディに!」


「小さくならないの!?」


「えー、だってパクリは不味いし。」


「だからってなんでナイスバディ?」


「そこはホラ、夢ってやつですよ。」


「あー……そうだね。夢を見るのも大切だよね。大原さん、頑張って。」


桜の平坦な胸を見ながら蓮は桜に微笑む。


「おい、今、私のどこを見て言った。どこを見て言ったんだよ。おい。」


その態度に桜が噛みつく。


「二人とも、朝礼中だから静かに。」


「「はーい。」」


先生に怒られた二人は話をやめる。

二人共反省した様子は内容で、ため息を吐く先生だった。

読者の皆様、お知らせです。

デザコメ、更新ペースがあがります!

金曜と土曜の21時更新となるので、よろしくお願いします♪

他の作品も更新ペースが変わりますので、よろしくお願い致します。

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