入学式の朝
美しい桜の花びらが舞う季節。
俺は彼女と出会う。
たとえこの出会いがどんな結果になろうとも。
未来の俺は、「いい思い出だったな」と笑うんだろう。
そんな、甘くて苦い、青春の物語。
ぽかぽかとした陽気の中、商店街を歩く少年と少女。
2人の見目麗しいその容姿に、商店街にいる誰もが振り向く。
しかし当の本人達はそんな事は一切気にせず、メガネをかけた少年は、隣の黒い髪をポニーテールで纏めた少女に話しかける。
「アヤ、忘れ物とかしてないよな?」
アヤと呼ばれたその少女は、その質問に言葉では答えず、メモ帳にシャープペンシルを走らせる。
『今日は入学式だけだから特には何もいらないよ?』
そう書かれたメモ帳を見せて、少女は無邪気に微笑む。
それを見た少年は微笑み返し、少女の頭の上に手を乗せる。
すると、少女はムッとしたような顔になり、またシャープペンシルを走らせ、書いた内容を少年に見せる。
『外でそういうことしないで。』
それを見た少年は苦笑して、
「なら、家の中ならいいのか?」
と聞くと、少女は顔を真っ赤にして俯く。
そんな桃色空間を形成しながら、この物語の主人公、篠田蓮と、その幼なじみである飯島彩華は、本日入学式の行われる学校へ、歩いて向かうのであった。
美しい桜の花びらが散る季節。
私は彼に出会う。
たとえこの出会いがどんな結果をまねこうとも。
未来の私は笑って、「懐かしいな」と過去を振り返るのだろう。
そんな、苦くて甘い、青春の物語。