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魔王になろう(本当の異世界を少女と歩むMMO-RPG)  作者: Tand0
Saga 4 砂丘トトリーの戦い
51/52

決着

「ドーラ。机と椅子、それからティーセットを出してもらえる? 渡したでしょう?」


「はは、はい!」


 声を掛けられてびっくりしながらもドーラはアイテムボックスから机類を出現させていく。


「こうして2人同時にいることを周囲に見せ付けることでドッペルゲンガーエフェクトを回避するべく認知させる、か…」


 ジア・スルターナは周囲を見渡す。アジア・サーバーの人達は敵軍に備え作られた塹壕に立てこもるもの、抜刀して構えるもの、様々だ。

 敵戦陣のど真ん中に作られた次元の壁。透明な壁ごしに周囲の確認も、周囲からの確認もできるが侵入は赦されず切り離された世界を形成している。


「私だって、消えたくないからね――。ドッペルゲンガーエフェクトが速まるかもしれないけど、『2人で』生き残るならこれが最善だと思うのだけど、どうかしら?」



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 岩と粉塵爆発によってずたずたにされた戦線。

 そこにエンパイア帝国騎士達の突撃が襲い掛かる。



 対する防御側は有刺鉄線と塹壕。

 だが問題は、敵側に完全に見えみえだということだ。

 そして帝国側には妖精帝国の妖精族(フェアリー)たちがサポートに回っている。


「「いでよ! ≪大地のゴーレム≫!」」


 妖精族(フェアリー)たちは得意の精霊魔法を唱える。

 本来砂丘であるトトリーでは大地のゴーレムは召喚できないはずだが、召喚に足る岩類は敵陣深くに大量にばら撒かれたのだ。使わない手はない。

 ダメージを追ってもただ土や岩に帰るだけの存在であるゴーレムが騎士の前に立ち勢いよく鉄線を引きちぎらんと迫る。


「そのままいっちゃえー」

「塹壕なんかもゴーレムの土で埋めちゃえばいんだよねー」

「そんな見えみえのトラップに引っかかるわけないよねー」

「「ねー」」


 もし有刺鉄線が破壊されてしまえば、鉄線に雷系攻撃魔法≪核心の光宙≫を流して倒すという戦術は使えない。

 だが、見えみえのトラップで妥協するような連中が、日本人たる魔王たちにいるだろうか?


「あれ? ゴーレム倒れた?」

「ツルっといったよ?」

「あれは――。ばなーな?」


 置かれたバナナで転倒するゴーレム。馬すらも転倒し、乗せた騎士を振り落とす。


「く。異界の隠し(クローズド) トラップ(スキル)か!」


 キャラクター(魔王の徒)であればマーキングが表示され引っかかることはない罠スキルだが、見えないNPCにとってそれは脅威だ。



≪血縁の形代より来たれ、全てを奪う猛ける炎将――イフリート!≫


「なぎ払え! ≪イフリート≫!」


 倒れた兵士達に火炎系中級精霊魔術、≪猛将の炎≫が降り注ぐ。


 だが、それを防ぐのもまた≪猛将の炎≫だ。≪殺しの≫ミキが防御戦に入る。


「守ってよね! 縁形の奪炎将(イフリート)


 その防御は、3体のイフリートの攻撃を難なく受けきった。

 ミキの魔術は3人の50レベルカンスト精霊魔術師によるスキルと拮抗する。


「くそ。何で同じスキルなのにここまで差が!」


「たかが魔王から得ただけのスキルと、英知に達した魔術が同じと思うなぁ!」


 その流れに乗じ、妖精族(フェアリー)達が流れ込んだ。


「罠なら踏まないようにすればいんだよー」

「ゴーレムの屍をこえていっちゃえー」


「フェアリーどもの言うとおりだ。罠など踏み越えて行け。敵陣地に乗り込んで混戦になれば我々の真骨頂だ。我ら帝国騎士団! 全軍突撃! 蹂躙せよー」


「魔術師! そこの騎士団長っぽいやつを狙え!」


「させるかぁぁ――」


 怒号が飛び交う。

 しかし開戦当初の岩のダメージは防御側にとって深刻で、帝国騎士たちはつぎつぎと防衛陣地内へと侵入し――



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「こんなの勝てるわけねーだろう」


 ケイン達に向かっていた盗賊職達が両手を挙げて逃げていく。

 それもそうだろう。攻撃により僅かに通ったHPダメージも、エアリによる回復魔法で簡単に治されてしまっているのだ。モチベーションが保てなくなるのは時間の問題だった。


「とー、見せかけて――」


 逃げた先で弓を番え放つ盗賊たち。

 もう姿を隠すそぶりさえ見せない。

 わらわらと降り注ぐ矢を回避していくエアリとケイン、盗賊職達に向かい突撃を図るメイドのリナ。

 盗賊職達は弓を放棄してさらに逃げる。


「やべー」


 盗賊職の男はリナの攻撃をぎりぎりで回避する。

 いや、HPは5割以上持っていかれていたのは回避とは言わないだろうが。

 しかし、逃げ続けていた男は、うまくいったと言わんばかりの表情でにやりと笑っていた。リナは最初の戦端からだいぶ距離が離れている。


 そのリナが急にひっくり返った。

 そのリナの目に映るのは黄色いバナナの皮。


 そこはそう、盗賊の罠スキルでこれでもかと敷かれた地雷原の只中だったのだ。


 慌てて助けようとケインが全力でリナの方に向かう。

 しかし、それは同時にエアリと距離が離れる、ということを意味していた。


 そこへ姿を隠していた盗賊職の男達が群がり――


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 七日野亜細亜とジア・スルターナは刻一刻と変わる戦況を眺めつつ、状況を分析していた。


「戦闘は防衛陣地が混戦で我々側はほぼ敗戦。ケイン君側が計略に嵌って我々側の勝利ということかしら」


「そうなると思います。ギルドマスター。ルール的には人数差が勝利条件だから。このままでいけばディストピア側の勝利ということでしょうか?」


「そうなるわ、ね――。ドーラ。貴方たち猫耳族の安住の地の提供は来週になると思う……」


 アジア・サーバーの面々はたとえここで負けても来週にはもう一つの公開サーバー、ルーピーな人たちと同じようなサーバ間交流戦があることを知っている。

 不満が来るようなことはおそらくないだろう。


『で、解析の様子はどう?』


 七日野亜細亜は会話(wis)を飛ばす。

 それに呼応して絶対の防御を誇るはずの次元の壁の中に一つの光が現れると、そこにあらたな人が出現する。

 その頭上にはGMの文字。GM3こと七日野ようこ(中二の美少女)だ。


「ジアちゃん1週間ぶり。それから亜細亜くん。きも(GM1)たんの解析ではもう十分な存在力を得ることができたって。本当に良かったのです」


 その言葉にジア・スルターナはホッとする表情を見せた。


「これで、2人も消えることがなくなった。ということですの?」


「えぇ、地球の人の魔力はこちらでは何百万倍にもなるからね。いくら力が弱いといっても数千という人がいればそれは相当な力になる。自然現象に逆らうだけの力は十分に得たと思っていいはず。おめでとう、亜細亜くん。ジアちゃん」


「えぇ、ありがとうございます」


 とりあえず、お茶しましょうか?

 そんなようこの提案をうけ恐縮しながらティータイムに突入する4人。

 ドーラは恐縮し、事態しようとしたが、亜細亜がギルドマスター権限で座らせた。


 周囲は阿鼻叫喚の戦闘が続く。

 「なにやってんだこいつら」という視線が突き刺さる中、話は続いた。


「さて、2人が無事だってことが分かったら今後どうするか、ということだね。

 だって、この「魔王になろう」、あと5年もたないもの」


次回作始めてます。こちらから→ http://ncode.syosetu.com/n5694cx/

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