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魔王になろう(本当の異世界を少女と歩むMMO-RPG)  作者: Tand0
Saga 4 砂丘トトリーの戦い
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熊のような大男

「こ、こんなことをして許されると――」


 よろよろと男が立ち上がる。

 それを助け助け起こす追っ手の男達。

 だれも熊のような男に立ち向かおうとしない。

 怯えたように震える男。

 熊のような大男にはそれが滑稽に映る。


「そういえば、先ほどオネェちゃんに会うためには楽しいところに行けばよいとか言っていたな。案内せい――」


「くっ……」


「嫌か? では仕方がない」

「あべしッ」


 もう一度手を振るう熊。

 男は再び3回転して地面に転がった。

 2度の打撃によって、手が変な方向に曲がっている。


「おまえ冒険者だろう、殺しはしない、という冒険者の条約を知らないのか――」


「あぁ殺しはしないさ」


 熊は笑顔で答える。

 だが、熊の笑顔は犬歯が剥き出しになっており、単に怖いだけだ。


「なら――」


「さらった女を闇から闇へ――。女であれば多少注目されるかもしれない。では男なら? 街の者にも鼻持ちならないごろつきならば、行方不明になってもキット見てみぬ振りをしてくれる。あぁ殺しはしないさ」


「な……」


 熊が睨むと男はぴくりと震える。


「お前――、こいつの姉がどうなってもいいというのか」


 だめもとのように男が震えながら熊を脅した。


「なに?」


 脅しは、一瞬だけだが熊を立ち止まらせることに成功した。


「お前らいけ――。いってボスに報告してこい――」


 倒れた男は手を振り、他の男達に指示をする。

 それをまったく無視して、熊は哀れな猫を助け起こした。


「いやぁ、大丈夫だったかい。猫さんもとんだイベントに巻き込まれて災難だったね」


「え、いえ……。助かりました――」


「姉のことなら心配しなくていい。猫さんも俺たちの仲間(キャラクター)なんだから。その姉なら助けるに決まっているよ」


「はん。今行った連中がボスに知らせりゃおまえらなんかー」


 熊は最後まで言わせず、わめく男の腹を蹴り上げる。

 男はさらに一回転転がった。


「ぐぎゃッ」


「はッ。集まったのは俺だけじゃねぇ! どうせスキルポイント1点とか程度だろうが、公開始まって以来始めてのゲームマスターによる公式イベント(おまつり)だぞ。最低でもユーザーの半分。2万5千以上のキャラクター(魔王の徒)が参加するはずだ。いまごろそのボスとやらなぞ……」


「な、なにを言っている……」


 熊は男をとどめとばかり踏みつける。

 男は気絶した。

 その代わりに周囲からわらわらと別の男女が次々と現れる。


 エルフの少女。大剣を持った男。中肉中背の盗賊(シーフ)

 ドーラが目を凝らすと次々に魔法陣によるステータス表示がキャラクター(魔王の徒)達だろう。


「さて、殺すとハートフルポイントが減るから――さてどうすれば良いのかな?」


「うちの魔王(マスター)から提案があるのですが?」


 熊があごに手を当てて考え込んでいると、集まってきたキャラクター(魔王の徒)の中から一人のエルフの少女が歩み寄る。


「ほう。どんなだね。美人さんや」


「『しまっちゃえば?』だそうです」


「――なるほど。しまっちゃうか。続く言葉は『熊だから冬眠用の洞窟があるんじゃないか?』か? いやないが?」


「それなら良いところを知ってますぜ。だんな。暗くてじめじめしたところでしょう? 任せてくだせぇ」


 こちらは中肉中背の盗賊(シーフ)だ。


「よし。ならば、しまってしまえ」


 ここから、後の世に『猫巾の乱(びょうきんのらん)』と呼ばれる一連の騒動が始まるのであった――



 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・



 翌朝――


「――てなことがあったわけよ。俺完全無視で進むとかどうよ? タッキー」


 学校の教室で俺はついに「魔王になろう」を始めたという大崎の言葉をぼーっと、聞き流していた。


「話が長すぎるわ! もう朝のホームルームが始まる時間じゃねーかよ大崎」


 あまりに長すぎるのでほとんど内容は聞いていない。


「うへ…」


 しかし、「魔王になろう」を楽しんでいるようでなにより。

 俺としてはまったく運営とは関係していなんだが、先行してやっている身としては嬉しくなってしまうな。

 大崎は徹夜明けのように目にクマがある状態。

 あー。今日の夜とかも遊び倒すんだろうし大変だよなー。

 ディストピアでもGMちゃんイベント起こしてくれないだろうか。

 まぁ、試用版より商用の方に力を入れるのは当然っていやー当然なのかもしれないが。


 朝のチャイムが鳴り、先生が入ってくる。

 いつもの光景。だが、いつもと異なり周囲がざわめく。

 先生の後ろに制服を来た低身長の少女がいたからだ。


「あー。突然ですまないが新しく転校生が入るので紹介する。東欧アスター侯国からの海外留学で帰国子女の――」


「七日野亜細亜!? まさか――」


 突然大崎が立ち上がる。というか知り合いか? 君達。

 といって転校してきた少女を目にして俺は黙らされた。

 金髪碧眼ロリ巨乳。それは見まごうことなく――


「やぁ、大崎くん。タッキー。こんなところで会うなんて奇遇ですわね」

「ジアちゃん……」


 くすりと笑う少女。絶対に奇遇じゃなくて鬼謀だろう。

 その姿は俺の嫁、ジア・スルターナに酷似していた――


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