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魔王になろう(本当の異世界を少女と歩むMMO-RPG)  作者: Tand0
Saga 4 砂丘トトリーの戦い
28/52

好きだよ。マスター

「おぉぉー。なんじゃこりゃぁーー」


 俺の思考は、そこで止った。


 嫁として褒めまくった、褒められてすっかり出来上がっている女の子。

 俺誤のみの、金髪碧眼ロリ巨乳属性の女性。


 自分を好きな少女。


 それが全裸で俺の前に、いた。

 異世界から、トリップしてきた。

 なんじゃこりゃー、としか言いようがない。


 え、まさかあれ、ホンモノの異世界だったの?


 いや、確かに触れ込みは「本当の異世界を私達と一緒に旅してみませんか?」だけどさ。まさか本当に異世界だとは思わないじゃない。

 いや、『魔王になろう』の画面は確かにめちゃくちゃクリアで本当の異世界っぽかったよ。

 いや、『魔王になろう』のAIの受け答えは本当に生きているんじゃないかって思ったよ。

 いや、『魔王になろう』の嫁の表情は本当に可愛かったよ。


 うん。でもまさか本当にホンモノだとは思わないじゃない。


 『魔王になろう』の画面を見る。

 なぜかケイン君たちがドラゴンと戦っていた。

 長期戦になりそうな雰囲気だ。

 わけがわからない。


 いや、そんなことしている場合じゃねぇ。

 ササとか食ってる場合じゃねぇよ。


魔王(マスター)。やっと会えた。やっと会えたよぉ……」


 ぼろぼろと涙をこぼしながら上目使いで訴えるジア。


魔王(マスター)なら出来ると思ってたんだよ。異世界への≪瞬間転移≫。私、魔王(マスター)に会いたくて、会いたくて――」

「ちょ、ちょっと待て――」


 そのまま椅子から転げ落ちる。

 2人して倒れこんだ。

 俺が押し倒すような格好になる。


 ヤバイ、これはヤバイ……


 心臓の鼓動が速くなるのが止められない。


 これはどう見ても、犯罪だ。


「とりあえず服着よう。服な……」


 取りい出したるは男物のYシャツ。だってそれしかないんだもの。

 着せてみることをシミュレートしてみる。


「やばい、よりエロさを感じる」


 タンスを漁る。とりあえず気やすそうなジャージを発見。

 ださけりゃエロさは少しは減るだろう。


「これとかどう」


 渡す。俺は後ろを向いた。

 PCの『魔王になろう』のウィンドウを見る。

 戦闘は終わったようだ。

 倒され、血抜きされるドラゴンがとてもシュールに見える。


GM3『おーぃ。見てるぅー?』

GM3『おーぃ』

GM3『タッキー大丈夫ぅ?』


 メッセージウィンドウに自称中二の美少女(GM)の書き込みがあるのを見つけた。


タッキー『うへ、助けてよ。うちに、うちに超絶美少女が光臨してー』

GM3 『へー。よかったじゃん』

タッキー『うん、いいんだけど。いや良くなくて……』


魔王(マスター)。着ましたけど?」

「あ……」


 裸のジアちゃんを見るのは犯罪臭がしてヤバイ感じだったが、服を着せたことでようやく落ちつ――


「あの、そんなにじろじり見られると、恥ずかしいです……」


 落ち着くわけがなかった。

 特にジアちゃんは下着を着ていないのだ。

 ジャージは、身体のラインがはっきりとわかる。


 恥ずかしがって身じろぎする姿がエロすぎた。


タッキー『大体なんでこんなことになっているんだよ。ゲームの世界は実はホンモノの異世界でしたとか俺、聞いてないんだけど!』

GM3 『そんなことないのです、最初から言ってるのです。それこそあらすじの第1行目からなのです。ほら見てみてよあらすじ! そうすればPV1個増えるし』


 自称中二の美少女(GM)はPVを稼ぐのに必死だった。


タッキー『いやそうだけど、いやそうじゃなくて――』

GM3 『で、召喚されたジアちゃん襲わないのです?』

タッキー『誰が襲うかぁ。ケダモノかよ。こういうのは順を追ってだな――』


 さすがにいきなりとか躊躇われるだろう。


GM3 『姫が魔物に攫われ、なんとか戻ってくるものの、なぜか身ごもって帰ってくる。ほぉーら、状況的にみんな察して許してくれるから大丈夫だぜッ』

タッキー『ぜんぜん大丈夫じゃねー。そのストーリーだと俺が黒幕で超犯罪者じゃないですかぁー。外国産鶏肉を国内産と偽って販売するより酷いよ』

GM3 『そこはほら。GMから一言。魔王になろう?』

タッキー『その魔王ぜったいタイトルが想定していた魔王とちげ――』

GM3 『じゃぁ勇者?』

タッキー『だめだこいつ、だれかなんとかしろーー」


「ふーん、私のこと、こんな画面で見ているんだ……」


 身体を寄せ、興味深そうにディスプレイを眺めるジアちゃん。

 ちょ、ちょっと近いって。


「じゃ、ちょっと戻ろうかな。私はもう『一度でも見た』し。ばいばい。また会おうね。魔王(マスター)


 そういって俺の頬にキスをしてからディスプレイの≪瞬間転移≫のアイコンをつつく。

 何か不穏な言葉を吐きつつ。

 なに「一度でも見た?」だと。家政婦かよ。

 いやまて、一度でも見たってことはジアちゃんは何時でも自由に「ここに」に≪瞬間転移≫可能ってこと?


「あれ? 飛べない?」


 つんつんディスプレイを触るジアちゃん。

 いや、そりゃ無理だろう。

 キスした反動か顔が真っ赤で、かつ、なにかすごく気まずそうだ。


「いや、そこはマウスで動かすんだよ」


 俺がマウスを右手で動かすとジアちゃんも右手を合わせてきた。

 胸が背中に押し付けられる。

 その姿に俺はドキリとする。


「じゃ、今度こそばいばい。好きだよ、魔王(マスター)


 ボタンがクリックされる。

 その瞬間、ジアの姿は現実から消えた。


 その場にはひらりと落ちるジャージが残されるのみ。


「なんだったんだ? 一体――」


 1人の部屋。一瞬、全てが夢だと思えてくる。

 ただの気の迷いかと。


 だが、そこに金の長髪が数本落ちているのを見る。

 俺は現実に引き戻された。

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