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魔王になろう(本当の異世界を少女と歩むMMO-RPG)  作者: Tand0
Saga 3 少女と異世界を歩んだらこうなりました。
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絶望する少女にトドメをさせ(前編)

 俺の名は滝川健。X市の某高校2年。身内からはタッキーと呼ばれている。

 なぜかは分からないが、名前がケンだからだ。

 恋人いない暦は生まれた年と同じ。


 そう、俺は純国産100%のチキンヤローである。


 今までは、昨日も一昨日もその前も学校にいって、勉強して、たまに暇つぶしにネットで「小説家になろう」なんかを読んでいる、チキンヤローにはお似合いの生活を営んでいた。


 だが、今日は違う。


 なんと初めてOFF会なるものに行ってきたのだ。

 まさにチキンヤローにあるまじき所業である。


 そこで貰ったDVD-RAMのゲームをなんの躊躇なく自分のPCへインストールする。あ、いちおうウィルス対策ソフトは入っているからきっと安心だ。たぶん。


 なんでもこのゲームは自称中二の美少女が発案で、ひよりの地に巣食う大学生や院生、教授までもがよってたかって作った、その日本のHENTAIと呼ばれる能力をいかんなく発揮する自作のMMO-RPGなんだそうだ。 おぃどこだよ。ひよりの地って。妖怪のたまり場かなにかか?


 そのMMO-RPGのスローガンは、


「本物の異世界を私達と一緒に旅してみませんか?」


 そのためNPCやらなんやらがなんでも勝手にうにょうにょ動くらしい。自キャラまでもが! ブルータスお前もか! 自キャラ勝手に動いちゃだめだろう。それゲームとして成り立っているのか?


 そんなこんなで勝手な妄想を抱いていると、インストールは簡単に終わる。

 というかこれ、指紋認証のところだけしかソフトが入っておらず、データはネット経由のようだ。そりゃ速いわな。


 そして立ち上がるゲームウィンドウ。聴こえ始める一見やさしげだけど、結局チープなBGM。


 俺はその画面を見て思わず叫んだね。


「うわ。HENTAIだー。ここにHENTAIがおるぅぅ」


 どんだけ気合を入れれば気がすむのだよと。


 そこにはまるで実写としか思えないほどの綺麗なグラフィックで異世界『ディストピア』が描かれていた――。ところでその異世界の名前にいろいろ思うところがあるのだが放置しておこう。


 抜けるような青空。僅かな空の白い雲でさえ時間で微妙に動く。


 次に現れたのはタイトルロゴ「魔王になろう」


 うむ。魔王となって自キャラを操るわけだね。そして操られる対象は基本自律でうにょうにょ動くと。


 だが、俺は知っている。


 酷く気合の入ったHENTAIゲーであるこのMMO-RPG。

 これが、かの自称中二の美少女ちゃんが書いている、『小説家になろう』というwebサイトで書いていた中二な小説の派生作品であることを。

 だからきっと、メインストーリーとしてその中二な小説に出てくる冒険者が中心となってゲームが進行し、脇役である俺ら魔王にはそんな変な動きをされたくないから、自キャラに指示させるような形式を取っているのだろう。

 というか、その小説サイトのOFF会に俺が行ってこのDVD-RAMを貰ったわけなので、ベースシステムが小説のそれ――異世界ファンタジーであることは当然かもしれない。ここで突然スチームパンクとかだったら逆に変すぎる。


 ――しかしこれ、タイトルいい加減だな。どうせ「小説家になろう」ってサイトに投稿している作品だから、「なろう」って語尾に文言付けておけば「おッ」とか思った人を釣ってPVを増やせるんじゃないか、とか邪まな考えが透けて見えるぜッ。


 それはさておき、普通MMO-RPGといえば自己投影して自分と同性のキャラを作る、というのが一般的だろう。と世間一般では考えられている。

 特にアニメなどではその傾向が顕著で、とあるVRMMO-RPGでは自キャラを男の子にして、MMO-RPG世界で一番可愛い女の娘をGETするようなのが今の流行だ。


 だが待って欲しい。


 MMO-RPGでそんな可愛い女の娘をGETできるような甲斐性が俺にあるだろうか。チキンハートのこの俺に?

 ちょっとでも話しかけようものなら、ドあがりして一瞬のうちにフライドチキンになってしまうような、この俺に?

 ないない。そんなことができるなら現実世界でハーレム作ってやんよ。びしびし。


 そして考えてみよう。もしたとえGETできたとしてもその女の娘。


 中身はおっさんだぜ、きっと。


 好きになどなれるはずがない。

 いや、いまさっきのOFF会で逢った自称中二の美少女ちゃんが正真正銘の中学2年っぽいロリの美少女だったから、例外もあるかもしれないが。あれは例外中の例外だろうというか反則だろアレ。しかも銀髪幼女でッ、狐のコスプレでッ、……とと本編から外れたので戻さなければ。


 俺が言いたいのは、だから世間一般な認識としてはMMO-RPGの自キャラは同性を選ぶものであるとしても、それはオタクの間では非常識だ。ということだ。ニワカすぎるよな。


 だって、そこに女の娘がいるんだぜ。


 しかもMMO-RPGの女の娘は自分好みですげー美人だ。なぜならばそうキャラクターメイキングするからに決まっているだろう。

 なぜ男など選ぶ。男などいらん。

 いや、ショタなら女性に人気やもしれんが。


 そういうことで、俺はキャラクターを、女、金髪碧眼、巨乳、多少ロリ、令嬢、清楚な感じ、一人称は私、最後は「ですわー」、そんな感じでかーなり、テキトーに選んでいく。


 次は名前欄か。


 どうも『魔王になろう』では魔王自身には名前を付けれるが、キャラクターには名前が付けられないようだ。


 どんだけ本物の異世界に拘っているんだと俺はいいたい。


 魔王の名前はそうだな、『火炎剣のタキガワ』とかにしておくか?

 うーん。なんかお仏壇のはせ○わみたいでアレだな。ガワしかあってねぇ。

 それに日本語っぽいのはダメだろう。やっぱり『火炎剣のタッキー』くらいで妥協しておくか。OFF会のときに使っていたハンドル名だしね。

 だいたい、OFF会のお誘いがあったのって、『魔王になろう』小説のネタででてきた火炎剣と称して鉄パイプを炎であぶってぶん回した動画を投稿したところから来ているんだから、さすがに火炎剣は外せないだろう。


 あぁ、火炎剣。自分でやっておいてなんだが、若気の至りというか後で盛大な黒歴史になりそうで怖いぜ。


 そんなこんなでさらにぽちぽち設定を行っていくと、やがて画面が切り替わった。

 そこはどこかの邸宅の寝室らしい。

 なぜ寝室だと俺が分かったのか。知りたくないかね?


 そこにベットが置いてあったからだ。

 そこでは1人の少女が眠っていた。

 彼女をまじまじと観察する。たぶんこれが俺の自キャラだ。


 ――これは卑怯だ。今日から俺の嫁と言わざるを得ない。


 とにかくかわいすぎる。

 俺好みの女の子で間違いない。

 そりゃまぁ、そうなるように設定したからなのだから当然なのだが。

 それにしてもド・ストライクである。


 ネグリジェ (?)とか服装もポイントも高い。

 鎖骨から胸のあたり、見えているよ。

 金の長髪が髪が下ろされているが、ツインテにすればさらにかわゆくなるだろう。


「ん――。あ……」


 少女が目を覚ましたようだ。


「ほう、これはこれは――。自称中二の――じゃない、GM(ゲームマスター)がんばったねー」


 少女の動きは自然な動きで、髪の毛一本一本までさらさらと動いた。

 どんだけグラフィッカーは気合が入れてんだよ。HENTAIキングの称号を与えよう。

 これ、本当に異世界から画像を切り取ってきたと言っても俺は信じるね。

 同時にこんな娘をいじれるのか――、と俺は期待に胸を膨らませた。

 あ、胸だからね違う部分じゃないよ。


「貴方はだれ?」


 寝ぼけているのか、少女は辺りを見回している。


 そりゃぁそっちの世界からは見えないだろう。

 俺はPCのウィンドウ越しにキミを見ているのだから。

 てか、ウィンドウメッセージ以外に音声まで聞こえるんだけど。

 どんだけだよ。初○ミクもまっさおだぜ。

 あー。これが噂のアペ○ドとかいうやつか?


「俺は魔王。火炎剣のタッキー」


 とりあえず格好よく言ってみた。見栄くらいはろう。


「魔王? 人々を闇に落とす邪神とかではなくて?」

「あんなのと一緒にするなよ」

「あ、ごめんなさい……」


 ちょっと怒ったような調子で書いてのがまずかったのか、少女は俯いた。


 んー。話した感じ、なんだか暗い感じがする。


 俺としては明るい娘の方が好みなんだが。

 ふふふ。つまりこの自機キャラちゃんを俺の好み通りの明るい感じの娘にすることが始めのミッションなんだな。


 ところでこのゲーム、始まると普通のMMO-RPGよろしく特に縛りとかなく放り出されるパターンなのだろうか? それともチュートリアルとかあるのだろうか?


 困ったときは自キャラに聞いてみよう。

 というか、自キャラみ尋ねるものなのか普通?


「それで、これから何をすれば良いんだ? システムのマニュアルとかないの?」

「……さぁ?」


 自キャラに質問してもまともな返事があるわけがなかった。


 そりゃそうだろう。こんだけグラフィックとかで期待させておきて、いきなり『次のイベントはxxです』とか『ここはキルフィアの街です』とか超システム的な発言を始めたら俺はドン引きする。


 と、俺は少女以外にウィンドウ上に表示されているシステム系が気になった。


『あ、あるじゃんステータス』

「あ……」


 メニューを操作すると恥じ入るような声をあげる少女。可愛い。


 ところで、定番だと思うがマウスで少女をクリックしてみたが何の反応もなかった。そこは頑張ろうよがっかりだぜ。

 ん? クリックは反応しなかったけど、マウスの動きでちょっと視線が反応したな。あとでいろいろ遊んでみるか。


「なんでしょう、これは?」

「これは君のステータスだね」


 しかし、出てきたステータスは最悪だった。いや、称号は最強系だったが。


『名前:ジア・スルターナ

HP:30/30

MP:10/10

SP:10/10

種族:人間

性別:♀

職業:未設定

ジョイント:貴族/王族 Lev.3

称号:スルターナ公国第一公女

ハートフルポイント:100 (※0でBAN)』


 姫様キター。とりあえず姫様だよ。やったねッ。


 って、どうせ他の魔王のキャラクターもそんな感じなのだろうけど。

 そういえば、本編の『魔王になろう』の主人公、剣士ケインも王子だったな。金持ちは死ねといいたい。あぁ、もちろん自機キャラちゃんは違うよ。

 そしてへー。名前ジアっていうのだねぇ。これからはジアちゃんと呼んであげよう。


「なんでしょう、これは?」

「君の、今の力?」

「私のステータス、低すぎ?」

「えーっと……」


 うんだけどこれ、ステータスが低すぎるだろ。相対的な平均値とかが分からないとなんとも言えないが、HP30はさすがに……。


 そのジアちゃんもあまりのステータスの低さに涙目だ。

 これはやばい。画面越しでもぐっとくるものがある。


 他にもハートフルポイントやらいじらないといけない箇所が満載だと思うが、まずはジアちゃんをなんとか宥めないとマズイ。


「いや、ちょっと、これは初期ステータスでぇ、成長すればきっと……」


 答えがしどろもどろになるのを自分でも感じる。


「成長?」


 でもこれはまだクラス選択していないからだと思うし、クラス選択すればクラス補正でステータスが上がると思うから期待はできるよね。それにほら、クラス選んでも初期状態って、たぶんレベル1だからね。

 速くクラス選択して山に芝――じゃなかった、MOB狩りにいきたいぜ。レベルあげてがんがんジアちゃんいい感じに育てたい。


 だけど何をすればクラス選択とかできるのか、さっぱりわからない。


「えーっと、俺もこの世界(ゲーム)って始めてで……、わーん助けてぇ、ドラ○○ーん!」


 俺は未来の世界にいる謎の猫型ロボットのようなものを想定して助けてと打ち込むと、突然その寝室にヤツが現れた。


 そう、ヤツだ。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「はいはいーい。こんばんわー。僕登場なのです。さっそくログインしてくれてタッキーありがとー」

「ぎゃー。自称中二の美少女(GM)が出てきたー」

「だってちゅーとりあるだもの。そりゃでてきますよー。クローズドベータ限定だけどねー」

「いつのまに……」


 ジアちゃんはとつぜんGMが出てきたことに驚いている。

 いや、俺もびっくりだ。


「あぁ、ジアちゃん安心して。危害を加える気はないから。

 この度は契約していただいてありがとうね。

 僕はGM(ゲームマスター)だよー」


 いや、分かるだろうGMなのは。

 だって、頭上にぐるぐるGMのでけぇ文字が躍ってるじゃん。

 しかも緑、白、赤のトリコロールって、イタリアーんかよ。

 あぁ、魔王となって自キャラと契約するって設定だから、ジアちゃんはGM知らない設定になっているのか??


「しかし、GMの姿格好、完璧すぎて吹いたw」


 狐の耳に七つの尾。白の羽織に、赤の袴。

 そう、見誤ることなき狐巫女さんコスプレだ。


「その辺はシステム担当の木森くんががんばったのです。モーションなんとかいう設定?」

「へー(棒」


 言いたいことはモーションキャプチャーか?


「じゃ、チュートリアルを始めるよ。GMがチュートリアル直接するとか普通はないんだから、畏れ敬ってよねッ」

「はいはい――(棒」


 さすが自作のMMO-RPG。チュートリアル説明が人力なのかよ。

 受け答えがリアルそのまんまの音声なんだが。


 これは当分キャラクターは増えないな。

 というか、OFF会で配ったくらいだから配布者制限しているんだろうね。


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