表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王になろう(本当の異世界を少女と歩むMMO-RPG)  作者: Tand0
Saga 3 少女と異世界を歩んだらこうなりました。
14/52

偽りの妖精さん

 土曜。


 それは魔王(マスター)がずっとこちらの世界にアクセスできる日。

 私とメイドのリナ、師匠のミキの3人はスラッシュ王国の首都についていた。


 スラッシュ王国内は金曜日の夜間飛行で横断済み。

 リナとミキは≪瞬間転移≫でこちらに送り届けている。


「で、ここがスラッシュ王国首都の冒険者ギルドね」


 ミキはスラッシュ王国に来たことがあるらしい。

 没落したとはいえ、ミキは帝国の中でも八聖者という重要人物のハズなのにフットワークが非常に身軽である。


 スラッシュ王国は西に魔族領を抱え、冒険者ギルドは比較的活性化していることで知られている。スルターナ王国冒険者ギルドが日雇い労働による土木事業が中心であるのとは対照的だ。

 スラッシュ王国首都の冒険者ギルドでは、いつもと同じく朝の時間帯、討伐依頼を受ける人たちで比較的ごった返していた。


「これは少し後にした方が良いかしら?」

「そのエアリちゃん? というのが討伐に行かれても困るからまずは聞いてみましょう。私に任しておいて」


 師匠のミキが依頼を受ける列に並ぶ。


 そういえば、始めて来る女性3人の冒険者パーティーに誰も近寄ってこないのはなぜだろう。

 スルターナの街の冒険者ギルドであれば入ったとたんに囲まれたのに。

 魔族領のある/なしでそんなにも冒険者ギルドの質が違ってくるものだろうか。


「≪殺しの≫ミキ……」


 耳を澄ませば小声でそんな会話をしているのが聞こえる。


 どうやら、師匠のミキはそれなりに知名度があるようだ。

 私はサイドの髪をアップにして変装しているから、まさか隣国の姫とはばれないだろうしね。


「ん? お客様?」


 冒険者ギルドの2階から誰かが下りてて来る。


「あ、エルフだ……」


 それは妖精族(フェアリー)ではなく妖精族(エルフ)であった。

 おしぃ。ちょっと残念だ。


妖精族(フェアリー)じゃない……」

『いや、ジアちゃん。あれは妖精族(フェアリー)妖精族(エルフ)に化けているのであって、ほら、ステータス見てよ』


 私は出てきた人が妖精族(フェアリー)ではなかったことに多少落胆したが、魔王(マスター)のフォローと操作によって妖精族(エルフ)のステータスを見ることができた。


『名前:エアリ

HP:982/982

MP:1240/1240

SP:300/300

種族:妖精族(フェアリー)

性別:♀

職業:精霊の巫女 (Script Healer) Base.Level 110 Job.Level.50

ジョイント:妖精族 Level.2

称号:妖精帝国南部第744歩哨部所属

ハートフルポイント:100 (※0でBAN)』


「あ、ほんとだ」

「ちょっとー。何晒してくれちゃてんのよぉー」


 そんな妖精族(エルフ)が私の腕を掴み、ぐいぐい引っ張った。

 引っ張られるまま、2階へ連れ込まれる。

 ミキとリナは後からついてくる。なぜかあきれた様子で。

 落胆の表情が出すぎていたからだろうか。


『(おはようございます。ジア様。どなたのキャラクター(魔王の徒)です?)』


 小声での会話(wis)

 なぜ名前がバレたのだろうかとしばし考える。


 そうか。


 妖精族(エルフ)のエアリも私のステータスを見ているんだ――


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「きゃッ」


 妖精族(エルフ)が連れ込んだ部屋には裸の男が寝ていた。


「おはよう。ジア様 リナさん。そして……」


 男は上半身だけ起こして挨拶する。下半身は毛布に包まれているので分からない。


「私は八聖者が一柱。炎術家のミキだ」

「≪殺しの≫ミキか。噂は聞いている。俺が剣士のケインだぜ」


「私も噂は聞いているよ。第三王子ケイン。あまり国王には良く思われていないようで……」

「第三王子が冒険者として目立っているからな。しかしまぁ領土も広げたし、いきなり暗殺されるとかはないだろ? 立ち位置は確保しているつもりだ。まだまだ甘いといわざるを得ないがな」

「はいはーぃ。政治的なことは置いておいて――」

「そういえば、ジア姫はどうしてスラッシュ王国に? 大方、ジア姫の魔王(マスター)が何か駄々をこねたとかだろうが――」


 ケインもジアがキャラクター(魔王の徒)であることは確認済みのようだ。

 右手をせわしなく動かしてステータス等を確認するのが見える。


「いいえ。これは私個人の趣向です。単に私がたくさんの妖精族(フェアリー)さんと戯れたかっただけで、妖精族(フェアリー)のハズのエアリ――、さんに仲介をお願いしようと思ったのですが…」


 視線が妖精族(エルフ)の方に向く。

 妖精族(エルフ)のエアリは視線を感じ、ため息を付いた。


「呆れた。もしかして自分が楽しむためだけに国境を越えてきたの?」


 シュワシュワリーン。っという謎の音とともに妖精族(エルフ)の身体が小さくなる。

 その姿は物語でよく言われている妖精族(フェアリー)の姿。

 体長30cm程度だが、虹の羽が特徴的な妖精さん。

 エルフの姿もかわいかったが、小さくなると、よりかわぃい。


「これで良い? 他の冒険者もいる手前、人化の術で姿を変えていたの。ごめんね」

「あー。ほんとに絵本の通りなんだねー」


 私は目を輝かせる。


『はいそこ、さらに妖精帝国の妖精さんたちと接触できるように説得してね』


 魔王(マスター)からの指示(wis)。そうだ。自分で言っておいて忘れるところだった。


「えーっと、エアリさんにお願いがあるのです。私はたくさんの妖精族(フェアリー)さんと戯れてみたいなー、とか思っているのだけど、妖精帝国さんとの仲介をお願いできないかしら?」


「んー。なんでまた? 面白い趣味だねー。って、さっきも言ってたか。でもなー。ちょっと難しいかな? どちらかというと、私は妖精帝国から逃げてきた感じだから――」


『あれ? アー。そういえばそういう設定あったなー』


 魔王(マスター)会話(wis)。そういうことは早く気づいて欲しい。


『ちょっと、どうするのよこれ』

『困ったなぁ。せっかくここまで来たのに……』


 魔王(マスター)はクチほどには困っていないようだった。


「おぃ、ジアちゃん。自分の魔王(マスター)と惚気てんじゃなねーよ。ともかくだな。今日は俺も登城しないといけないし、1日はスラッシュ王都を楽しんでくれないかな? エアリ貸すし。明日であれば話を聞くよ」

「ちょ、ちょっと私に断りもなくナニ私を貸し出しってんのよ!」


 妖精族(フェアリー)になるとエアリの怒った姿も可愛く見える。


「あ、ありがとうございます」

「そこ! 同意すんなー」


 私のお礼に反応してケインがベットから起きようとして――、あわててエアリに止められる。


 やっぱり彼は全裸だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ